第2章 覗き見の代償

第1話 高校生の悪巧み



そう。

あれが小針の本気の恋の始まりだった。

今までが本気ではなかっということではないのだが。

なぜだろう?

今回ばかりは、自分でもなんだかいつもとは違うような気がしていた。


「は〜……」


大きくため息を吐き、窓の外を眺めている小針を見て、白木しらきは大橋を見る。


「おい。どういうことだ。なんだあれは」


「見ればわかるでしょう? いつもの恋煩いじゃない」


「そんなことは理解しているが。今度はどこで恋したんだよ。いつ? どこで? 相手は誰だ」


いつ、どこで恋したかなんて知っている。

相手も知っている。

だけど、大橋は誰にも言う気はしなかった。

例え恋人の白木でも。


「さあね」


「おいおい。今、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど」


そこに佐野と秋月もやってきた。


「かんとくが新しい恋煩いって」


「この時期に始まるってことは、コンクールの頃にあのどん底モードになる可能性高くないか?」


「それって、一番困る……。ソロ、どうすんだよ」


「今年に限って県大会敗退なんて、そんな恥ずかしいことできるわけ無いじゃないか」


佐野は頭を抱える。


「分からないじゃない。ウハウハモードかもよ?」


大橋はフォローするが、白木、秋月、佐野はそろって首を横に振る。


冬和とわ、お前本気で言っていないよな?」


「そうだぞ。連敗記録更新中のかんとくが、一発逆転をするなんて想像できるか?」


白木のコメントに、なんだか自信がなくなってきた大橋は渋々と頷く。


「確かに。それはそうだけど……」


「なんとかその恋の終結を早めるか、遅めるか……だな」


秋月の提案は最もだと佐野は同意する。


「お相手を探して、作戦を練った方がいいな」


「だろう?」


「どうする?白木」


三人は何やら相談を始めた。

それを見て、大橋は軽くため息を吐いてから苦笑する。

言葉や態度は悪態ばかり。

小針をコンクールの時期から外して、失恋させようと言っているわりには、小針の恋を応援するような相談内容だ。


「素直じゃないんだから。おれも混ぜてよね」


大橋は三人の悪巧みの中に割り込んでいった。



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