第3話 喧嘩両成敗


他のパートだと同じ学年同士で固まっているものだが、ベースは二分されているようだ。

棚橋たなはしグループと真田グループ。

小針はその両者を見る。


「部長」


「なんでしょうか」


長身のがっちりした体格の棚橋。

短髪で好青年という感じだ。

それに引き換え、中肉中背の頼りない体格の真田。

見るからに文系です。


インドア派ですというタイプの真田。

二人は小針の目の前に歩み出た。

彼は二人を確認すると、右手で棚橋、左手で真田の腕を捕まえて廊下に引きずり出す。

そんなに体格のいい小針ではないが、こういう時のバカ力は強い。


「先輩?」


「あの」


「こっちにこい!」


廊下に出たところで、やっと大橋と佐野、そして長浦と深津が追いつく。


「小針!」


「お前、それないでしょう。直接? 直接対決しちゃうのか?」


大橋は顔を青くするが、小針はお構いなしだ。


「あの、冬和とわ先輩? これってどういうことなんですか?」


ひらく先輩?」


二人は小針のものすごい形相に取って食われるのではないかという恐怖を覚えたようだ。

佐野と大橋に助けを求める。


しかし、こうなってしまうと小針に任せるしかないだろう。

あきらめて小針の後を追うだけだ。


ずんずんと歩く小針は、二人を隣の会議室に連れ出した。

そして椅子に座らせる。

二人並べてだ。

その目のまえに仁王立ちした小針は、二人を交互に見た。


「ここで仲直りしろ」


「な」


「唐突ですね」


棚橋は言葉を失い、真田は視線を逸らす。


「仲直りだ」


「できませんよ」


「そ、そうですよ」


「なぜだ」


「なぜって……」


聞かれても。

小針は棚橋を見る。


「お前は真田が嫌いなのか?」


「え?」


そう面等向かって言われても。

そういう顔である。

小針は真田を見る。


「お前は棚橋が嫌いなのか?」


「き、嫌いって……」


「どうした? どうしてはっきり言えない? はっきり言えばいいじゃないか。すっきりするぞ。嫌いなのだろう? 生理的に受け付けないか? めざわりか? お互いの嫌なところをぶちまけろ」


小針の後ろ姿を見て、四人は呆れる。


「荒療治すぎる」


佐野は頭痛がする。

今度は本当の頭痛。

病気のほうじゃなくて。

ストレスのほうだ。

反対のこめかみを抑える。

彼に問い詰められた二人は黙り込んでいた。


「どうした、はっきり言ったらどうだ。すっきりするぞ。思う事を吐き出すのだ。さあ、ぶつけてみろ。直接言えないのだったらおれに言え」


真田は顔を真っ赤にして俯く。

棚橋は口をぱくぱくさせていたが、視線を外して真田を見た。


「え? 文句じゃないの?」


小針は肩透かしを食ったようで、目を瞬かせる。

様子を見守っていた四人もきょとんとする番だ。

謝罪された真田は俯く。


「悪いよ。本当に」


「悪いと思っているから謝ってるんだろう? なんとか言えよ。あの時の返事、おれもらってないけど」

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