限界突破2回目(6)
息を胸いっぱいに空気を溜め込み、言葉とともに一気に吐き出した。
「僕は、ゲームが好きなんだよ! 大の大の大大好き!! 格ゲーだってやるしアクションだってやる。レースゲーだってパズルだって、無双ゲームとかさ、いろいろあるじゃん! あと、そのぉー、れ、恋…………アドベンチャーとかさ! RPGなんて超が4つくらい付くお得意様だよ? どれだけゲームを買ったかなんてその金額を算出するのが怖いくらいかなりのヘビーゲーマーなんだよ!!」
…………まったく、どんなカミングアウトだ。
僕は自分で言っておいて急に恥ずかしくなってきた。それと同時におかしくもなってきた。
超美貌の持ち主なのに子供みたいに拗ねている女神様と、それを前にしてヘビーゲーマーであることを熱く主張する僕。かなりシュールな光景だ。最悪なことに、近くには真っ二つになった僕の姿をしたドッペルゲンガーの死体が転がっているというおまけ付きだ。
まったく、なんなんだろうな、今僕が置かれている状況って。
僕にしては思い切ったカミングアウトをしたからなのか、急激に冷静になってくる。
そうなると、急に今のこだわりがそんなに大事じゃないって思えてきた。別に説明してくれなくても、フォルトゥナだってなにもしてくれないわけじゃない。ちゃんと支援してくれるし、壁にもなってくれた。これからもいろいろあるだろうし、今以上にフォルトゥナに頼る場面だって出てくるはずだ。
説明書を読まないで、チュートリアルもプレイしないでゲームを始めたものと思えばいい。僕はそんなことはしないが、一定数そうする人たちもいる。それと同じだと思えばたいしたことじゃない。ソフトだけ買った中古品の昔のゲームだったらそんな状況もある。それだ、それ。
セーブの仕方と体力の回復方法だけを忘れずに教えてもらえればいい。さすがにセーブというシステムは用意されていなさそうだけど。体力回復もなかったら絶望的だが、限界突破時の力の盛り上がり方はそれっぽかった。ゲームだったら体力も魔力も全快になった感じ。そんな風に思えた。
「……ごめんフォルトゥナ。僕が悪かったよ。僕はゲームが好きすぎてフォルトゥナよりもこの世界に詳しいかもしれない。それはもう認めてもいい事実さ」
「ほらぁ、リョーくんやっぱり詳しいんじゃない」
「うん、そうだね。僕はきっと詳しいよ」
僕はあっさりと首肯する。ここはこの姿勢で押す。
「でもね、僕はちゃんとフォルトゥナに説明をしてもらいたいと思っているんだ。僕にとって、フォルトゥナはとても頼りになる女神様だから。だけど、僕はただ守られているだけじゃ嫌なんだ。僕は僕だけじゃなくて、フォルトゥナのこともちゃんと守りたいと思ってるんだよ」
真顔でフォルトゥナを真っ直ぐに見つめる。
届け、僕のこの真剣な思いよ!
気が付くと僕はフォルトゥナの肩をガッシと掴んでいた。無意識の行為だったが、女の子の体を無許可で触ったらマズイんじゃないか……。僕のこめかみや背中に冷や汗が浮かぶ。
「…………リョーくん、それ反則」
思ったものと違う反応が返ってきた。
なっ! ……なんだ、今のセリフと表情と仕草は!?
勝手に体に触ったことで怒られて殴られてもおかしくないと思っていたのに、フォルトゥナは僕の予想に反した態度を示していた。
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