限界突破2回目(5)
「そういえば、限界突破をした相手を限界突破した場合って2回分になるのかな?」
「んー、わかんない」
本当に適当だな。
「試してみればいいんじゃない?」
「それはそうだけど……フォルトゥナは本当にそんなんでいいのか?」
「えっ、なんのこと?」
素か。素なのか。
「これはゲームの話だけど、限界突破システムがある場合あくまで被りの救済であることがほとんどで、つまり、被ったキャラとしての価値はその対象が限界突破していようがいまいがおかまいなしってパターンがひとつ。逆にそれぞれのキャラに対しての限界突破や強化は生きていて、いずれか元となるキャラにそのままプラス値として純粋に加算されるパターンがもうひとつ。前者はあくまで1足す1は2でしかないが、後者は1足す1が3やそれ以上にもなる。前者のシステムだと弱いキャラに間違って強いキャラを合成してしまって、頭が真っ白になって気が付いたらゲームをアンインストールしていた、なんて逸話もあるくらいだよ。それくらい、この違いってわりと重要な問題だと思うんだけど?」
僕が語り終えると、フォルトゥナはなぜかジト目になっていた。
「……語ったわねぇ」
フォルトゥナは胸の前で腕を組み首を傾けた。頭だけ前に少しずつ伸ばしてやや前傾姿勢になる。
「リョーくんってそんな子だったっけ? そんな熱弁を振るうようなキャラだったっけ?」
「なっ! 僕は確認しているだけだよ! そもそもは、フォルトゥナが僕をこの世界に連れて来てからたいした説明をしてくれないからだろっ!? ゲームと同じような世界観だったら気になることを確認するのはあたりまえじゃないか。……僕、なにかおかしいことを言っているか?」
「おかしいとまでは言ってないけど、ね」
フォルトゥナのジト目が続く。なんなんだ、この顔は!?
「このままだと私よりリョーくんのほうがこの世界に詳しくなっちゃうんじゃないのかなぁーって? 私、必要ないんじゃないのかなぁーって? ……ちょっとそう思っただけ。それだけのことよ」
んん? これは拗ねてるだけなのか……? そんなことで拗ねるのか? こっ、子供なのか、この女神様は!?
「はぁ……」
僕は脱力してしまいそうだ。もっとも戦闘後ですでに脱力はしているんだけどね。
「どう考えたってフォルトゥナのほうが詳しいに決まってるじゃないか。僕はあくまで現実世界のゲームの話を例に出しているだけだよ。ここがなんとなくゲームの世界に似ているんじゃないかって。だったら、同じようなルールになるんじゃないかって」
「似ていると思うわ。だって似せているから」
フォルトゥナは「なにを今更?」みたいな怪訝な顔をする。
僕がおかしいみたいな感じになっているけど、そこまでハッキリと断言されたっけ? 設定をした、とは聞いていたがそれがこのことなのか? 説明があまりないから、フォルトゥナから聞いた話なのか僕が持つゲーム記憶なのかがわからなくなってくるぞ。
「それだったらフォルトゥナだって詳しくないわけないだろう? だからちゃんと説明してって、僕、前からずっと言ってるんだよ」
「言わなくてもリョーくんわかってるじゃん」
じゃん……って、拗ね方が子供すぎる! こんな女性らしい魅力的な格好をしているくせに、僕よりも子供だなんてギャップ萌え狙いなのか!? そう簡単に僕は騙されないぞ。僕が女神様とゴニョゴニョ…………だなんてあるわけがない。そんな奇跡みたいな出来事が。
「いやいやいや、説明がないからノーヒントでやってるんだよ!? この状況の中、自分で推測しながらで、僕、がんばっているほうだと思うよ? 自画自賛みたいで嫌だけど、でも戦うのが僕の役目って言われて……戦い方すら教わっていないし」
「でも、できてたじゃん」
「それは——」
どうしたというんだ、この拗ね女神様は?? それと、どこまで続くんだ、この不毛なやり取り!?
ここはもうバレバレかもしれないが、ええい、ままよ!
僕は息を大きく吸い込んだ。
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