第10話 俺の数少ない友人はキャラが濃い
日曜日、朱里さんは俺の家に来なかったのでいつも通りネット〇リックスを見て過ごした。
俺は基本的に休日は特筆して何かしているわけではない。
俺は様々なことに興味が薄いのか、趣味も特にない。強いて言うならカフェインをとること。寝るのはそんなに好きじゃないから。
平均すれば怒涛の休日が明けて、月曜日。
眠い目をこすりながら登校していると、後ろから声をかけられた。
「おっはよー直哉。今日も目つきの悪さが輝いてっゾ」
「お前も相変わらずオーラが輝いてんな」
「それはどうもどうも」
この明らかにチャラ男感ぷんぷんの男は、川崎玲央(かわさきれお)。
校則を破らないすれすれで制服を着崩しており、毎朝三十分かけて髪をセットする正真正銘のチャラ男である。
ただ、こういうやつに限ってイケメンで、割と何でもそつなくこなせてしまう。
しかしナルシストなところがあり、平気な顔してクソ恥ずかしいことを言うので女子からは「生理的に無理」と言われている。可哀そう。
しかし俺も同じようなもんで、怖がられているためこうしてはずれ者同士が仲良くなったというわけだ。
そして――
「先輩おはようございます! 玲央先輩の言葉は気にしないでくださいねぇ。この人に一切の質量ないですから。空っぽです」
「な、何を言う渚! それが幼馴染であり、尊敬する先輩である俺に取る態度なのか!」
「あー朝からうるさうるさー」
耳を抑えて玲央の言葉を無視しているのは、玲央の幼馴染で俺たちの一個下の羽衣渚(はごろもなぎさ)。
身長は140cmくらいと小柄で可愛らしい。
茶髪のポニーテールは渚にとても似合っていて、アクティブな印象を受ける。
渚と玲央はこうして毎朝一緒に登校していて、正直付き合ってるんじゃないかといつも思っている。渚は全力で否定するが。
「なんか月曜日って憂鬱だよな」
「憂鬱な月曜でも、この俺がい・る・ゾ?」
「玲央先輩キモ……」
「そんなガチ引きしないでくれない? 俺だって傷つく心はあるんだよ? ガラスの少年だよ!!」
「……キモい……」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
朝から騒がしい二人。いや、にぎやかという表現の方が適切か。
俺はこんな風にノリよく騒ぐことが寝不足によってできないので、仲睦まじい二人の姿を見ているだけ。夫婦漫才見ている気分だ。
「なぁ直哉―。最近渚が俺に冷たいんだよ~。あっ分かった! きっと押してだめなら引いてみろ的な?」
「お前ってほんとにポジティブだよな。その明るさで世界救えるよ」
「ふっふっふっー。世界の救世主、現る的な?」
「……引く……」
「だから俺はグイグイ来てほしいタイプなんだって~」
「そういう意味じゃない!!」
玲央が渚からパンチを食らう。
もはやこれも毎朝の恒例行事的なものになっていて、これを見ないと朝が始まった気分になれない。
「全く……モテる男は辛いぜ……」
それにしてもこの男。とんでもないポジティブさ。
メンタルお化けだなぁと感心。
「渚はツンデレなの? だとしたらそろそろデレないとツンデレキャラは嫌われるゾ? ほら、来いよ?」
両手を大きく開いて、渚を受け入れる体勢を作っている。
玲央はどつかれることをわかってやっていると思う。たぶん、こいつはドMだ。
「だから……ツンデレじゃねぇぇぇぇ!!!」
少年漫画級のパンチがさく裂。
玲央、再起不能。
「じゃあ玲央先輩なんて置いてって、私たちは行きましょうか」
ニコッと微笑む渚。
渚は小中で空手と合気道を習っており、どちらでも全国出場をしている。最強女子高校生と言ってもいいだろう。
そんな奴に喧嘩を売る玲央も、ある意味最強高校生だなと思う。
「……主役を置いていくなよ……」
自称主役を置いて、学校へと向かった。
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