第24話 真澄さんは教えたい

 玲央と決意を固めた日から数日後の日曜日。

 

 朱里さんが来ない限り基本的に家に引きこもってネット〇リックス鑑賞をしており、今日も又ポテチを食べながら最高の休日を過ごしていた。

 朱里さんは「レポートがあるぅ……」と言って日曜日だが俺の家には来ていなかった。

 そもそも、そんなに俺の家に頻繁に来るわけじゃない。といっても、週四くらいで俺の家に来ているのだけど。


 最近は辛いものにはまったらしく、こないだは二人で激辛ラーメン店を巡った。おかげでその日は動けなくなった。

 

「ピンポーン」


 そんなことを思い出していたら、インターホンが鳴った。

 朱里さんレポートで忙しいって言ってたのに、もうあきらめたのだろうか。それとももう終わったとか。

 「愛の力ならレポートなんて朝飯前だよ‼」って言いながら速攻で終わらせそうだから終わったかもな。


 そんな予想を立ててドアを開けると、そこには予想外の人物が立っていた。


「こんにちは、直哉君。ちょっといいかな?」


 大きな紙袋を持って立っていたのは真澄さんだった。

 相変わらずの美少女っぷりで、朱里さんと違ってオーラが眩しい。


「ど、どうしたんですか?」


「まぁ話すことがあるから、できれば家にあげてほしいな?」


 首をかしげてそう頼んできた真澄さん。

 きっと俺が無害であることが、朱里さんから伝わっているのだろう。でなきゃイケメンの彼氏がいる美少女が俺の家に上がるわけがない。


「まぁいいですよ」


 特別断る理由もないので、真澄さんを家に上げた。


「お邪魔しまーす。今朱里は課題に追われてるんだっけ」


「そうです。遊び惚けて滞納してたらしいです」


「あらら~いかにも朱里らしいなぁ。ってことは今直哉君の家にはいないんだ」


「もちろんです。僕の家にいたら多分集中できないんで」


 俺がそういうと、真澄さんは俺を怪しげにじっと見つめてきた。

 

「……やっぱり、アツアツなんだねぇ」


「違いますって」


「あははは~」


 からかわれた。

 真澄さんは心底面白そうに笑みを浮かべて、床に正座する。


 真澄さんが正座するもんだから俺が胡坐をかいて座っていたら違和感しかないので、俺も正座する。

 真澄さんは今まで持っていた大きな紙袋の中から、アルバムらしきものを取り出した。


「今日はこのアルバムを見せようと思ってきたの」


「あ、アルバム?」


 アルバムと言われてもピンとこない。 

 おそらく朱里さんのアルバムではあると思うんだけど。


「これがまず幼稚園の卒業アルバムねー」


「いやそういうアルバム⁈」


「高校まであるよ~。あと、その他私が撮影した動画等々もございます」


 真澄さんが持ってきた紙袋の中をのぞくと、そこにはアルバムやらDVDやらがたくさん詰まっていて、ぞっとする。

 その意図がわからないでいると、俺の気持ちを察したように理由を語り始めた。


「そろそろ朱里と直哉君が付き合う頃合いだと思って、朱里のことをたくさん知ってもらおうと思ってたくさん持ってきましたー。あと、思い出話とかも聞かせてあげるよ?」


「えっ……マジすか」


「マジです」


 急遽朱里さんについての講演会が始まった。

 どうやら長話になりそうなので、お茶でも出そうかと思い立ち上がる。


「僕はコーヒー飲みますけど、真澄さんは何飲みますか?」


「じゃあ私もコーヒーで」


「わかりました。インスタントなんで、味は勘弁してください」


「全然いいよー」


 インスタントに関しては俺のテリトリーなため、素早く準備をする。

 おそらくインスタントコーヒーを作り上げる最短時間で完成させ、自分のマグカップと朱里さんが置いていったマグカップにコーヒーを注ぐ。

 

 最近朱里さんの私物が俺の部屋に増え始めているのだ。実際、俺の部屋は恐ろしいくらいに物がないので困りはしないのだが……歯ブラシを並べてにやつくのは勘弁してほしい。


 二つのマグカップをちゃぶ台の上に置く。


「ありがとう」


 そういって真澄さんはコーヒーを一口飲み、「おいし」といった後、机にアルバムを広げた。


「で、こちらが幼稚園の時の朱里。このころは育児が大変だった」


「お、お母さん?」


 朱里さんの幼稚園時代の写真を見る。 

 今の面影がもうすでにあって、とびぬけてきれいだった。幼稚園児なのに、可愛いよりもきれいの方が適切な表現だと思う。


 その後、高校までのアルバムをすべて見た。

 やはりだんだんと大人になっていく姿を見ていると、なんだか保護者目線で見ている気になってきて心に来るものがある。


「いやぁだいぶ見ましたねー」


「で、こちらが運動会の動画なんだけど……」


「えっ?」


 真澄さんが朱里さんの母親にしか見えなくなってきた。

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