百合の日SS〈三日月 祈織〉

もう2週間程が経ってしまいましたがこれにて最後の百合の日SS祈織編となります。お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。


いやぁ…まさかの冷蔵庫とデスクトップPCが同時に壊れるという悲劇により私のお財布のHPはゼロどころかマイナスです。


ですが、一応どちらも買い換えが終わり冷蔵庫は設置済み、デスクトップPCも昨日設置&セットアップが終わりました。


これからは授業等との兼ね合いもありますが比較的安定して投稿できると思われますのでご安心ください。前述した通り、今話にて百合の日SSが終わりますのでメインストーリーの更新が再開になります。彼女達の出会いが一段落したので学校生活がメインのお話になりますが、まぁ今までとあまり雰囲気は変わらないのかなと思います。


というか、前書きがいつも長くなりがちで本当にすみません。これは言い訳ですが、一部の方への配慮として性的描写がある回などは本編が目に入る前にこの前書きでブラウザバックして頂けるように…との考えなんですよね。意味があるかは分かりませんし、性描写が無くても長ったらしい前書きがあったりしますが。


まぁ、だらだら喋るのが好きなだけですね。


………。


では、本編をどうぞ。


───────────────────────


私達が白椿学園を卒業してから多くの月日が経ち、何度も同じように四季が巡る中、日本で戸籍上の同性結婚が法的に認められた。


日本での同性結婚が認められるようになるまで時間がかかったような、思ったよりも唐突で早かったような…あまりこの感覚を上手く伝えることは出来そうにない。


でも、1つだけはっきりとしていることがある。


それは───


◆◇◆


「おはよぅ…春乃…」


「おはよ、祈織。昨日も徹夜?」


「えぇ、やめ時が見つからなくて…」


「それは別にいいんだけど…体調は崩さないでよ?」


猛烈な眠気と低血圧から来る虚脱感に苛まれながら私は寝室を出てリビングに辿り着く。そこには既に春乃が居た。


私は仕事柄生活リズムが酷く不規則でほとんどの場合が徹夜である。今日も早朝まで起きていたせいでもう時計はお昼の時間を指しており、明らかに健康的な生活とは言えない。


そんな私に春乃が「眠気覚ましにどうぞ」と、お昼前にスープを作ってくれていたらしく、飲むと体の内側からぽかぽか熱が広がって心地良い。


このように、私達が同じ家で過ごしていることからある程度想像出来る通り私と春乃は結婚した。


今思えばもう出会いは10年近くも前になる。


初めて白椿学園に登校した日、私は春乃に一目惚れをしたのだ。緊張と不安と、少しの高揚。そんなものを心に抱えていた私の前に天使が舞い降りた。


目が少しあっただけなのに胸が激しく高鳴り、きゅっと締め付けるような感覚が私を襲う。初めての恋が一目惚れで、しかも女の子だったことなんて全て吹き飛ぶほどの恋。


それからの私は彼女に愛を囁き続けた。


最初は戸惑ってばかりだった春乃もだんだんと私に心を許し、そして、同じように愛を語ってくれるようになった。


好きで好きで堪らない。


何にも代えることのできない大切な人。


結婚するまでには様々な障害があったが、法的に認められてしまえば恋人関係だった頃よりも案外すんなりと世間に受け入れられた。


それと、私達は家に居て出来る仕事をしている。


春乃はイラストレーターとして小説のイラストを描いたり、近年その市場を大きく広げ認知度の高まってきたVtuberのデザインをしていたりする。


そして、私はなんと春乃の担当したVtuberとして活動しているのだ。


おかげで意外と出不精だった私も春乃も、お互い家で楽しく仕事が出来ている。


今日はもう配信をする予定は無いし、春乃も仕事が一段落しているらしく2人とも1日オフ。今日はめいっぱいイチャイチャしようと思う。


「そうだ」と、春乃がせっかく仕事も何も全部休みなのだからこの際家事も休んでしまおうとピザの宅配を依頼し、たくさんのお菓子や飲み物を机に広げて映画鑑賞をすることになった。


1日かけて見た映画はどれも違うジャンルで、恋愛ものを見れば2人でその甘酸っぱさにキュンキュンし、ホラー系を見れば抱き合って震えながら見る。


アクションは心躍るものがありファンタジーやSFも夢の世界が広がっていて素晴らしい。


そんなことで数作品の映画を見終わった頃にはすっかり夜遅くになっていた。日も暮れ、仕事も無く、家事も無い。そんな静かで落ち着いた夜。


「少し肌寒くなってきたから、暖房入れようか」


部屋の温度が下がり始めたその時、私がそう提案すると──


「………つけなくていいよ」


それは…つまり……


♡♥♡


寝室に行くのも億劫になってしまった私達は、そのままソファーの上で啄むようなキスをする。お互いの唇の柔らかさや熱を確かめるように、そこにある温もりが嘘でないのだと確かめるように。


嫋やかな華の蜜は、劇薬だ。


優しいキスでは我慢出来なくなりどちらとも言わずに舌を絡め合う。口の中に広がる春乃の熱と潤いが、私にとってこの世で最も甘露な蜜である事を改めて教えられる。


次第にお互いの求め合いが激しくなり我も忘れてキスをすると、口の端から混ざりあった唾液が零れた。くちゅくちゅとリビングに鳴り響く水音に興奮がさらに掻き立てられ、相手を抱きしめていた腕を解き体に這わせる。


あぁ…もう、邪魔だ。


春乃を押し倒して私は彼女の服を脱がせる。すると、いつもは陶磁器の様な真っ白の肌が上気してほんのり赤みを帯び、しっとりとした汗が滲んでいた。


私は私の欲が求めるままに彼女を愛撫する。


肌を重ね、擦り合わせ、舐め合う。


お互いの体で知らない所など無いくらいに、隅々まで。もう何度お互いが果てたのか数え切れない程に愛し合い、それでもまだ足りないと、もっと愛してと抱きしめる。


私の指が春乃に埋もれると、それだけで溢れ出る蜜が止まらない。


春乃の舌が私に這うと、それだけで恥じらい隠す嬌声が漏れ出てしまう。


2人分の体液で塗れた私達はそのままお風呂へ向かい、そこでも愛し合った。「せっかく洗ったのに…」なんていう春乃の言葉を聞いてあげるつもりは無い。


お湯に濡れた髪が、髪の張り付いた肌が…余計に私の情欲を擽る。求めて求めて、求め尽くしてもとどまることを知らない愛が私を突き動かす。


結局春乃も私に流されたのか今度は彼女からぐいぐいと密着し、迫ってきた。


少し痛いと感じてしまうくらいの強さで、私の首筋を吸う。痕の残ったそこを慈しむように舐め甘噛みしている。…数日の間、外へ出る時は首元を隠せる服装にしないといけなそうだ。


その後もしきりに耳を舐めたり鎖骨を撫でたり、おへそやおしりにずっとキスをしていく。


もしかしたら、春乃は独占欲というものが思ったより強いのかもしれないと今更ながら気がついた。この行動も、私の体は春乃のものであるという独欲占の一種の表れなのかもしれない。


そう思えば、この痛みも愛おしい。


だから私は春乃の耳元で囁く。


彼女の首に腕を回し、上目遣いでこう言うのだ。


「私も、貴方を独り占めにしたい…」


まだまだ…2人だけの夜は明けない。

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