なんで私がヒロインに告白されてるの!?

音夢

1章:入学編

プロローグ

1章は全体を合わせてプロローグの様なものです。


舞台となる学園の説明であったり、登場人物の心情や過去の描写が多く登場するので最初はテンポも何も無いと思われます。


1章中~後半からどんどんと百合成分が増していきますのでもし良ければ読み進めてもらえると嬉しいです。


では、本編をどうぞ

───────────────────────


私は地味だった。


ぼさっとした髪をおさげにして、厚い瓶底メガネを常に装備。


膝の下まで伸ばされたスカートは私の足のほとんどを覆い隠していた。


通っていた中学校では居てもいなくても変わらない空気のような存在。いや、人が生きていくのに必要なだけ、空気の方がマシかもしれない。


教室の隅っこでいつも1人、小説片手に静かに過ごす目立たない女の子。


そういう感じで、友達と呼べる存在も居なかった。


そんな私の唯一の楽しみは小説。読めば世界が広がり、国を超え、ファンタジーな世界に没入することも出来る。時には異世界で勇者になったり、世界中を旅する放浪者になったり…


小説は、地味で根暗なつまらない私をキラキラとした世界へと連れ出してくれた。


そして──私は憧れた。


いつの日か読んだラブコメ小説が私の心を強く揺さぶったのだ。


たくさんの友達に囲まれて、わいわいと楽しく話し、可愛い制服や洋服に身を包んで過ごす学生生活。


極めつけはかっこいい彼氏。


野暮ったかった中学時代までの私に、彼氏なんてものは天地がひっくり返ってもありえない存在だ。


でも…高校生となる今、羨んでしまうのは仕方の無いことだと思う。


私は高校デビューを決意した。


同じ中学校から進学する人が居ないであろう少し遠くの進学校を受験し、無事に合格。


ぼさぼさの髪の毛は美容院に行って整えてもらい、ケアの仕方をしっかりと教わる。


ファッションに疎かったのもあり、初めの数回はマネキン買いをしつつ服飾業界で働く母の友人にコーディネートについて叩き込んでもらった。


高校入学までの残り期間、その全てを私は自分磨きに当てた。


ヘアアレンジを教わり、ファッションを学び、運動をして自身のスタイルを完璧に仕上げ、派手になりすぎない…それでいて可愛いメイクも身につけた。


入学式前日。


自室の姿見の前にいる女の子は大きな変貌を遂げていた。


サラサラの髪は可愛くアレンジされ、制服の着こなしもなかなかのもの。元々ぽっちゃり気味だったこともあり自慢じゃないが胸はそれなりにある。それでいてお腹まわりや足回り、二の腕はスラッとしていてメイクもナチュラル系で清楚に纏まっている。


こうして自分自身を磨いてみると「あれ?私って意外と可愛いんじゃない?」なんて自信が湧いてきた。自惚れだったとしてもそれがまた私の努力を裏付けてくれ、これからの努力も鼓舞してくれた。


私は変わった。


明日は入学式だ。


友達を沢山作ろう。


いっぱい色々な所へ遊びに行こう。


勉強も頑張ってみせる。


もちろん今までの努力だって継続する。


そして──かっこいい彼氏を作ってみせるっ!


◇◆◇


「その…えっと、私、あなたの事が好きになってしまったの…お付き合いして頂けないかしら…」


「…ふぁ!?」


……私は何故か、入学して早くも学園のアイドルと呼ばれている美少女に告白をされた。


そう、美少女・・・に……だ。


女である私から見ても文句なしの超絶美少女。


ラブコメ小説の中ならS級ヒロイン間違いなし。






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