入学式:3
入寮の手続きをパッと終わらせた後、どこかあの綺麗な女の子に後ろ髪をひかれつつ私は入学式を執り行う大きな体育館へ移動した。
開式の辞に始まり私達新入生の入場、入学許可宣言、式辞、祝辞、祝電等々…と、滞りなく行程が進んでいく。
「続きまして、新入生代表挨拶。新入生代表、1年7組、
「はい」
そして、突如天使と見紛う程の美の塊が壇上に舞い降りた。
高すぎず低すぎず、よく響いて通る声。
悠然と前に進むその歩はまるで彫刻が歩いているかのような、そんな完成された美しさ。一歩一歩進む度、ふわふわと天使の羽が如き黄金の髪が舞う。
「暖かな春の風が桜の花を運び、新たな若い芽が背を伸ばす今日この頃。私達は白椿学園の入学式を迎える事となりました。本日はこの様な良き日に立派な入学式を行って頂き、大変感謝しています」
見るもの全てを虜にする微笑みを
それ程までに彼女は美しかった。
「私はこの学園での3年間、勉学に、部活動に、友人に…生涯の財産となる私の宝物を見つけるため入学しました───
あ…そうですね、皆さんの中でも気になっている方々が居ると思います。私のこの髪は地毛です。それとハーフではありますが、帰国子女なんて大層なものではないので英語がペラペラだ〜なんて、期待をしないで頂けるとありがたいです。恥をかいたら、顔から火が出る程真っ赤になってしまいますので」
彼女のかしこまった挨拶は毅然とした態度を周りに見せつける。その一言一言が頭に染み渡っていき、咲き誇る桜を、その
そんな雰囲気は途中で霧散し、ふっと軽やかな笑みで彼女は自らの特徴に触れる。
どうやら彼女は日本人と外国人のハーフであるらしく、星々が輝いていると思う程に煌めく黄金の髪は地毛であるらしい。
織り交ぜられたユーモアのある言葉選びは、彼女の柔らかな笑みと共に会場に和やかな空気を満たした。
「改めまして…先生方、それから来賓の方々。これから厳しく、時に優しく…私達若葉の芽を指導して頂けると嬉しいです。そして同級生となる皆さん、どうか、この3年間で私達にとって財産となる宝を一緒に見つけていけたなら幸いです。新入生代表、周防 奏」
新入生代表挨拶の終わりと同時に、万雷の拍手が会場を震わせる。一段ずつ壇上から降り、元いた自らの席に戻っていく天使様。
初めの教頭の呼び出しにあった通り、彼女は私と同じ7組らしい。私の隣を通り過ぎようとする彼女。
「……ふふ」
「…?」
なんだか、そんな天使様と目が合った様な気がした。
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