どんな夢でも貴方となら:5
「み、三日月 春乃です!好きな物は恋愛物の作品で、今年度の抱負は勉強とか運動とか、れ…恋愛とか色々頑張ることです。よろしくお願いしまひゅ!」
あんなに傷ついてたくさん泣いたのに、どうして神様はまた私にこんな出会いをさせるのか。そう思ってしまいながらも、私の荒んだ心に一輪の花が咲く。
踏み荒らされて、無遠慮に侵されて、言われも無い中傷で枯らされた私の心に、柔らかで、暖かくて、大きな花が咲く。
咲いて咲いて、咲き誇って。それは大輪となる。
薫る花の蜜に引き寄せられる様にして、私は2度目の恋を知った。
三日月 春乃。………春乃ちゃん。
「ねぇねぇ、三日月さん…だよね?」
それからの私は道化を演じた。
スキンシップの激しい女の子なんていくらでもいる。なら、好意を隠してでも彼女のそばに居たい。
報われなくていいから隣に居たい。彼女の1番近くにほんの少しでも私の居場所が欲しい。明確な好意は表に出さず、彼女の戸惑いを煙に巻いて小悪魔になろう。
そんな私の決意とは裏腹に、春乃ちゃんの周りには一瞬で可愛い女の子が集まった。その2人とも、女の子である春乃ちゃんが好きみたいだ。
もしかしたら───
そんな願いに心も体も流されて、あの夜に圧倒的な蜜の甘さを知ってしまう。春乃ちゃんの艶やかな頬も、潤んだ瞳も。微かに震える唇に真っ白でしなやかな肢体も。
百合の花のようだ。
そして私はきっと、この心を巣食う想いにもう抗えない。
春乃ちゃんなら私を、受け止めてくれるかもしれない───
◇◆◇
「あははははっ、別に感謝されるような事じゃ無いっすよ〜。こっちこそいつもありがとうっす!これからも見に来てくれたら嬉しいっす」
「はい!全部行きます!光莉ちゃん大好きです!!」
「お、おうふ…割と言われ慣れてる筈なのに同性ファンからはちょっと恥ずいっすね…!」
「えへへ、生の光莉ちゃんだ…」
私の傷ついた心を唯一守ってくれていたアイドルという存在。その中でも特に好きな〈
憧れの人と話せた私はきっと傍目から見てもすごく浮かれているのだろう。
でも、それはあくまでも応援しているアイドルに会えた嬉しさだ。
「………ふーん」
ふふ。だからね、春乃ちゃん。
そんなに可愛い顔をしちゃダメだよ?
気づかれてないと思ってるんだよね。その不満げな表情や小さな声も、全部全部私は気づいているよ。
それとね、私の夢は『いつか私の愛している人に愛されること』なんだけど……
もう叶っちゃったかもね?
きっと、どんな夢でも貴方となら。
…大好きだよ。
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