2章:友達以上恋人未満編
踏み外さないように踏み出して、揺れる心は踊り出す。
「私は奏とも祈織とも付き合うつもりはないです」
「そう、ですか…」
「そう…」
件のお泊まり会が遂に終わりを迎えた土曜日の夕方。既に何となくだが事情を察したらしい詩音には帰宅を願い、今私の部屋には私と奏、祈織の3人が残っている。
そんな取り合わせになって話すことと言えば結局のところ3人の関係性、ひいては私を中心とした彼女達との恋模様だ。
奏と祈織は私の言葉に目を伏せる。
「私はちゃんと2人の事を知って好きになってから、決めた人と付き合いたいです」
「「え…?」」
「だって
恋について考える事の多かったここ数日。私の知ってる普通の恋はテレビや本の中の世界が全部だった。そこで描かれる恋の流れは基本的に1つ。
男の子が女の子に、女の子が男の子に。どちらかの心情を描写した世界では今の私を取り巻く状況は珍しい部類に入る。
世間にも受け入れられ始めてきた同性愛という関係性も、やっぱりどこか私には縁のないもので、これまでもこれからもそうだと思っていた。
「私はずっと自分の恋愛対象は男の子だと思ってました。それが
残念ながら、私は同性愛どころか異性愛ですらまともにしたことが無い。
「そんな私が2人の女の子に、しかもとびっきりの美少女にですよ?いきなり告白をされてすぐには理解が追いつきませんでした。でも、なんでですかね。好きだって言われて嫌だとも気持ち悪いとも思わなかったんです」
同性同士の恋愛と聞いて良く思わない人がいるのも事実。当事者になったらどうなってしまうのか。それを私は身をもって知った。
人それぞれ感じ方や受け取り方に違いはあれど、私は嫌悪感を抱かなかった。
「むしろ戸惑いこそしましたけど…嬉しかった。初めて胸がドキドキするっていう感覚を知って、奏と祈織の勢いに流されてるんだとしても、私は恋心に近い何かを感じてるんじゃないかって…」
嫌だと思わず嬉しいと感じて、それが影響して感じた胸の高鳴りに私は初めての恋心を予感した。
「それを明確に感じたのは昨日の夜から今日の朝にかけてです。始まりは唐突で、普通じゃない歪さがあって、順序も何もすっ飛ばした触れ合いをしちゃいました」
恋人でも何でもなくて、ましてや女の子同士。一緒にお風呂に入るだけならいざ知らず性を強く感じさせる肌の触れ合いをする。
それは酷く歪だ。
「これは今まで恋をしたことの無い私の気の迷いかもしれません」
最初から最後まで歪な私達の関係。
「だからこそ、奏のことを…祈織のことを…私に教えてください。何が好きで何が嫌いか、何が得意で何が苦手か。そんな些細なことから、始めよう?」
「…はいっ」
「…えぇ!」
歪な関係から始まる私達の恋、私達はきっと普通じゃないのだろう。でも、お互いの事を深く知って分かりあって、もし認められる繋がりじゃなかったとしても、きっと後悔はしないと思う。
今ここに、女の子同士による友達以上恋人未満の関係性が始まった。
───────────────────────
といことで数日お待たせしましたが更新です。
今話から始まる2章は『友達以上恋人未満編』となります。章タイトルの通り、これから暫くの間は春乃を中心とした友達以上の甘い絡みでありつつも、恋人未満である焦れったさやそんな関係が生み出す特別な空気感を楽しんで頂けたら嬉しいです。
では、これからも拙作をよろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます