そばに居てもいいですか?それだけで、いいんです。


「いやぁ〜、誘われて顔を出してみたりぱっと思いついて見学してみたり、意外と面白かったねぇ〜」


よっぽど憧れのアイドルと話せた事が嬉しかったのか頬を桃色に染め、緩みきった口角をそのままに詩音がそう言う。


アイドル部の見学をついさっき終わらせた私達は、学園の広い敷地内を特にあてもなく歩いているところだった。


太陽が真上に登り時間も丁度お昼になっていて、燦々と輝く太陽が眩しくて見上げた目をすぐに伏せる。


すると、隣を歩いていた奏が軽く手を叩き言う。


「そうです。皆さんどうでしょう、そろそろお昼ご飯にしませんか?」


「「「賛成!」」」


奏の提案に私と祈織、詩音は声を揃えて賛成し、寮の食堂へと向かうことになった。


◇◆◇


「では、私と祈織さんはもう決まったので注文してきますね」


「春乃達はゆっくり決めながらそのまま席を取っていて。私達が帰ってきたら注文に行ってもらって大丈夫だから」


「うん、わかった」


「いってらぁ〜」


寮の食堂についてぱぱっと注文を決めた奏と祈織がカウンターへ向かう。その背中を私と詩音は見送った後、自分達が食べるお昼ご飯を決めるためにメニューとにらめっこをしていた。


ううむ、お蕎麦……いや、パスタも捨て難い。軽めにパンケーキでもいいかも。


私がそんなふうにメニュー表に書かれた料理に悩んで唸っていると、ふっと私の右肩に軽いのだけれど確かに重みのある感触が感じられた。


ん?と思って一瞬の間に考えてみるが記憶通りであれば詩音が座っているはずだ。席は私の右隣に詩音、対面に奏、対角に祈織。


顔をメニュー表から右に向けてみれば予想通り詩音が私の肩にもたれ掛かるようにしていた。


「詩音、どうかした?」


「ん〜?いやぁ〜…」


なんだか歯切れが悪い。そこまで長時間ではないとはいえ、広い学園内を歩き回ったのだから疲れたのかもしれない。


「沢山歩いたから疲れた?」


「そうじゃないよ〜。そうじゃないんだけど〜、ん〜…」


歩き疲れたのかと思って聞いてみるが、どうやらそうでは無いらしい。


「…?」


なんだろう…と思って私が首を傾げているとぼそっと詩音が喋りだた。


「せっかく2人っきりだからさ、その、そばにいたいなぁ〜って」


「えっ…」


「嫌…かな?」


「ぜ、全然嫌じゃないよ!」


「うん、知ってた♡」


「へ?」


「春乃ちゃんさ、さっき私が光莉ちゃんに大好きって言ってた時に少し不満そうだったから〜…ね?」


「は!?別に不満そうじゃなかったし!」


「んふふ、冗談だよ。真っ赤になっちゃって可愛いねぇ〜」


「う〜〜!!!」


「ただいま戻りまし……どうしたんですか、ハルちゃん?」


「何かあったの?そんなに真っ赤になって唸って…」


「なんでもないよ〜。さ、私達も注文しに行こっか春乃ちゃん!」


「……うん…行く」


「「…?」」


……詩音のばか。うぅ…顔が熱い。

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