どんな私でも貴方となら:2


私達が演劇部の先輩に連れて行かれた場所は沢山の衣装がラックに掛けられていて、それを合わせる事が出来るスペースだった。


ヒラヒラとした煌びやかなドレスにかっちりとした軍服、執事服、メイド服etc…。


様々な衣装が女性用と男性用で分けられていてそれを見るだけでも自分の心が踊るのが分かる。


「これはロミオとジュリエットの衣装ですね…こっちはオリジナル台本で使用した執事服とメイド服です。軍服は私が以前コスプレした時に使ったものを置かせてもらっています。場合によってはそのまま寄贈という形で」


「コスプレ?」


「はい。私の趣味はコスプレでして、色々な衣装を着るのが好きなのです。それが転じて演劇にも興味を持ち、お芝居を仕事にしたいと思うようになったのです」


なるほど、と私は納得した。趣味が変遷して将来の夢になったという事らしい。


「残念ながら今日は稽古等が無いので演劇部らしい所はお見せできませんが、雰囲気だけでも楽しんでいってください」


「あの…」


「なんでしょう?…あぁ、貴方が噂の周防さんですよね。先程から思っていましたが聞きしに勝る美しい髪です」


「あ、ありがとうございます。その…不躾な話だとは分かっているのですが、試着と言うか、体験として衣装を着させて頂く事は出来たりしませんか…?」


「そうですね…使用する予定が近い衣装等は難しいですが、私の個人的な衣装と新入生の練習用でよければ」


「っ!ありがとうございます!」


おずおずと手を挙げて先輩に質問した奏はなんと衣装の試着許可を取り出した。無事に試着OKとなって目を輝かせている。なんというか少し意外だ。


…それにしても、男装した先輩と天使然とした金色の髪を持つ奏のツーショットはかなり映えていて、隣に並んでいてとても良く……釣り合っているように見える。


先輩は男装だからそもそも男女的釣り合いなんて無いけど、これがまさに『絵になる』と言うやつなんだろう。


……私も男装の衣装を貸してもらおうかな。


「では、このラックに掛かっている衣装は着て頂いて大丈夫なので、自由にお選びください。着るのが難しかったら私に一声かけてもらえると」


「「「「ありがとうございます!」」」」


そうして、私達のコスプレ大会───もとい、演劇部の体験(仮)が始まった。

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