どんな私でも貴方となら:6
私、周防 奏をその人たらしめる要素とは何か。
それは誰かに望まれ、羨まれ、憧憬され、畏怖された事によって積み上げ象った、周囲の人から見た私という理想像。
周防 奏は私を取り巻く環境がそうあるべき、そうあって欲しいと思った結果の産物です。
故に、私は私自身が何なのか分からない。私という個の価値が、私の中に無い。
でもそれで良かったんです。誰かにとって価値ある人間でいられるというのは、何よりも輝かしいから。
男子生徒に清楚なお嬢様然とした態度を望まれたなら、そうあろうと努力しました。
女子生徒に男女分け隔てなく誰にでも華の様であって欲しいと願われたなら、そうなろうと模索しました。
教師陣に品行方正で成績優秀である事を期待されたなら、そうしようと苦心しました。
それが子供の頃から何も持っていなかった私のちっぽけなプライドで、最後の砦。
そんな私にとって唯一価値のある、何にも代えがたい存在が幼少期に心を救ってくれたハルちゃんです。
彼女との思い出が空っぽな私の心の奥底で色褪せる事無く輝き続けています。あの時の優しさが、あの時の笑顔が、あの時の私にだけに見せてくれた寝顔が。
全部が全部愛おしい。
引越しによって離れ離れになってしまった数年の間、私は1日たりともハルちゃんを忘れた日はありません。
家柄が少し特殊なのもあって色々と調べ事がしやすく、直接会うことが出来なくとも私は常にハルちゃんの情報を得ていました。ハルちゃんの成長記録は彼女の家族以上にアルバムに纏まっているでしょう。
友人関係だって精査してあります。ハルちゃんに悪い虫がついてはいけませんからね。幸いな事に要注意人物は見受けられなかったので一安心です。
彼女が休日に漫画や小説を買いに行った書店も調べあげ、同じ作品を買い漁りいつか話せるようになった日に話題に事欠かないよう全て暗記しました。
そして白椿学園に進学し、無事に再開します。
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