I gonna be OK…?


激動の初日を終え晴れて白椿学園の生徒としてその歩を進ませる。様々な草花が陽の光を浴びて煌々と輝き、今にも飛び跳ねてしまいそうな気持ちをその胸に抱える新入生達を迎えていた。


私もその内の1人である。


色々と頭を悩ませる事柄が多くて溜め息が漏れるがそれでもやはり気持ちは昂っていた。高校生としての新しい生活、友達や勉強、スポーツに恋。長いようで短い3年間という時間の中で一体どれほどの物語が生まれているのか…ワクワクしないほうが難しい。


若い芽が我こそはと花々を咲き誇らせるこの学園で、自分自身がどんな花を咲かせるのか楽しみだ。


「おはよ!三日月さん」


「お、おはよ、阿澄さん」


「ん〜、今日も髪の毛サラサラでほっぺがぷにぷにだねぇ」


「あぅ…恥ずかしいからやめて…」


私の通う1年7組の教室に辿り着くと、すぐさま阿澄さんが私に抱きつきながら挨拶をしてくる。柔らかい、いい匂いがする…


友人第1号である阿澄さんはやはりパーソナルスペースがかなり狭いらしく、抱きついたまま髪に触れたり頬ずりをしてきた。


不快な感じは一切なく、恥ずかしさの中に自分の磨いたものを認めて貰えた嬉しさというか、そんなものが湧き上がる。毎日の手入れもあって、その嬉しさはひとしおだ。


でも、昨日1日で女の子同士の恋愛について考える事が多かった分こういう接触はどこか動悸を逸らせた。どうか、この胸のドキドキが彼女に伝わらない事を願うばかりである。


「ちょっと、何を、イチャイチャとしているのかしら?ねぇ?」


「ひぇっ…あ、藤野さん…その、これは違くて!」


「ふふ、冗談よ。おはよう。でも、ちょっと妬いちゃうわ」


阿澄さんと抱き合ってに抱きつかれていると、すぐ後ろから凛とした鋭い声が耳に届く。その声の持ち主は昨日の学園からの帰り道で私に告白をしてくれた藤野さんだった。


私達をジトっとした目で見ているが怒っている訳ではなく、その…妬いてくれたらしい。嬉しいのかは分からないが、何だか胸の奥がきゅっとする。この感情が何なのかを表現する言葉を私は持っていない。


「えっと、それでそっちは…?」


「あ、私は阿澄 詩音。藤野さんだよね?」


「えぇ。藤野 祈織よ。…そうね、2人とも良かったら下の名前で呼んでくれないかしら?私も春乃、詩音と呼ばせてほしいの。これから仲良くしてくれると嬉しいわ」


「あ、はい!私はそれで大丈夫です、祈織…さん」


「うん、わかった。よろしくね祈織。ねね、私も春乃ちゃんって呼んでいい?」


「うん!私も詩音ちゃんって呼んでもいいかな?」


「もちろん」


私は心の中で歓喜した。素晴らしい、これが友達!特定の誰かやグループと全く関わりの無かった中学時代と比べてこれは大きな進歩。


基本的に順調に進んでいるらしい高校生活に意識しないと頬がどんどんと緩んでしまう。


……その頬が、口角が。一瞬にして引き締まったのは次の瞬間だった。


「ハルちゃん、おはようございます。あなたの奏が来ましたよ♡それと大好きです、付き合ってください!」


「…」


頬に伝わる瑞々しくて暖かい柔らかな感触。それが何かは敢えて言葉にしなくてもすぐに分かった。昨日の夜に一度体験したことのある、魅惑の一撃だ。


「「…は?」」


近くにいる祈織さんと詩音ちゃんの声が、すごく遠くから聞こえたような気がした。


「春乃、これは、どういうことかしら?」


「ハルちゃん、この人達は?」


「くっ…くく、春乃ちゃん、2日目にして面白いことになってるね?」


私はきっと大丈夫。


だよね?


…何故か先を考えるのが怖くて仕方ない。私、悪いことしてないはずなのに。

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