どんな夢でも貴方となら:2
「「「失礼します…!」」」
「し、失礼、しますっ…」
ガチャ…と音を立てて扉を開き、広いスペースの部屋に私達は足を踏み入れる。
そこに居たのは
「あ、いらっしゃいっす〜」
〈
「貴方達が見学に来てくれたって子達ね」
リーダーの
「どうぞ、ゆっくりしていってください」
そして
私達は〈Foria〉のライブ終演後にアイドル部のレッスン部屋にお邪魔させてもらえる事になったのだ。
女子アイドル部の顧問の先生に見学出来るか駄目元で打診したところ、女子生徒ならと意外にも快く受け入れてもらえて驚いたのが十数分前。
今までテレビ越しにしか見た事のなかった人がこうして目の前に居ると思うと存外嬉しさよりも緊張が勝ってしまう。
「ねぇねぇ!貴方達はアイドル部入部希望なのかしら?みんな可愛いし4人グループとしてレッスン次第で即デビュー出来そうね!」
「あ、いや…私達は白椿学園には色んな部活があるのでせっかくならたくさん見学してみようってなって、まだどこに入部するとかは…」
「そっかぁ〜、ま、もし良かったら考えてみて。てか、入部するのにもいくつか審査が必要なんだけどねぇ〜」
私達が即デビュー……奏や祈織、詩音なら有り得るだろうけど私じゃ結局はちょっと努力して容姿を整えただけの一般人。
アイドルとして活動する人達の足元にも及ばない。嬉しい事を言って貰えたけど真に受け過ぎるのも毒だなと私は思った。
奏や祈織も他の〈Foria〉メンバーの人に話を聞いているようだ。2人とも興味深そうに質問をしたり談笑をしている。
ふと「あれ、詩音は…」と思って彼女が居た方を見てみると
「……………」
完全に、硬直していた。
目を見開いて、口を真一文字に引き結んで。どこか緊張しつつも隠せない高揚が滲み出た表情。
「あ、あれ?詩音…?おーい、どうしたの?」
「はっ…ご、ごめん。私〈Foria〉のファンで、こうして会えると、思わなくて…」
「あれ、君いつもライブに来てくれてるっすよね?確かウチのこと推してくれてた気がするんすけど…」
「え!?分かるんですか!?」
「そりゃ、会場に来てくれた何千人何万人を全員完璧に把握する事は無理っすけど、それでも覚えてる人は当然いるっすよ」
「あ、ありがとうございます!」
「あははははっ、別に感謝されるような事じゃ無いっすよ〜。こっちこそいつもありがとうっす!これからも見に来てくれたら嬉しいっす」
「はい!全部行きます!光莉ちゃん大好きです!!」
「お、おうふ…割と言われ慣れてる筈なのに同性ファンからはちょっと恥ずいっすね…!」
「あー!光莉ずるい〜!」
「確かに、女性ファンは羨ましいですね」
「えへへ、生の光莉ちゃんだ…」
おぉ…どこかいつもふわっとした、気分屋の猫みたいな詩音が顔を赤くして必死に喋っている姿というのは珍しい。
そんな隠れた一面を見れたのは何だか嬉しいけど、それを引き出したのが憧れのアイドル…。
…ふーん。
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