閑話② 笹原と日岡の場合
<日岡 恵視点>
とある日曜日。
今日はこれといった予定もない。
という事で、何となく思い立って部屋の掃除も兼ねた模様替えをはじめて見た。
『まずは本棚からかな。あ、川北中の卒業アルバム。ついこの間卒業したばっかりな気もするけど懐かしいなぁ』
最初のページにある入学式の写真に私は写っていない。
私は中学2年の時にお父さんの仕事の都合で大阪からこの川北町に引っ越ししてきたんだ。
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「日岡 恵(めぐみ)です。大阪から来ました。スポーツが好きで前の学校ではバスケ部に入ってました。
まだ引っ越してきたばかりでこの辺りのことよくわかりませんがよろしくお願いします」
「「おお!」」
主に男子から歓声が上がった。
容姿についての自己評価はそれ程高くないんだけど、これって好意的にとってもいいのかな?
そして休憩時間。クラスの女子2人が私に話しかけてくれた。
「ねぇねぇ日岡さん。前の学校でバスケやってたんだよね。
私たちバスケ部なんだけど良かったら放課後に練習見に来ない?」
「え〜と」
「あ、ごめん名前言ってなかったね。私は浜野 美玖。で、こっちが・・・」
「吉見 恵(けい)よ。名前の文字は同じだけど私は"けい"って言うんだよろしくね!」
「うん。声掛けてくれてありがとう。
私こそよろしく!バスケ部気になってたんだ」
「うん!じゃ決まりだね。放課後声掛けるからよろしくね!」
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あの時、美玖と恵(けい)が声掛けてくれたのはうれしかったな。
転校初日で心細かったし部活にも誘ってくれたんだもん。
おかげですんなりバスケ部にも入れたし、部活を通じて他のクラスの夏川ちゃん
やその友達の渋川さんや大崎ちゃんとも友達になれたんだよね。
それにあの2人とは部活以外でも遊びに行ったりする仲にもなれた。
川北町も2人に色々と案内してもらったんだよなぁ~。何んだか懐かしい。
だから・・・・美玖が3年生の時に交通事故でバスケが出来なくなった時は凄く悲しかったし何もしてあげられない自分が歯がゆかった。
恵(けい)と2人してなんて声掛けて上げれないいのかわからなくて。
でも美玖は前向きだった。プレイヤーで駄目ならって戦術を学んで練習プランを考えたり試合での動きを指示したりしてくれた。
本当は辛いんだろうに凄い子だと思ったよ。
部活の集合写真。バスケ部の箇所を見ると美玖は真ん中で皆に囲まれている。
プレイは出来かったけど皆に慕われていたから部長も続けたんだよね。
今でも尊敬してるし高校のバスケ部で復活したのを聞いた時は嬉しくて泣いちゃったよ。
でも中学の時にあこがれていた川野中の清水君と付き合う事になったって聞いた時は驚いたな。恋愛事は奥手な子だったから。
色々と昔を懐かしく思いながらページをめくると各クラスごとの写真のページとなった。2年生からは私も写っている。
そしてあいつも・・・
私は世話好きな性格もあってか前の学校では姉御とかオカンとか言われてた。
川北中でも最初のうちこそおとなしくしていたけど、段々慣れてくると元の性格が出てきたのか女子だけではなく男子とも気軽に話をしたりして友達も多くなっていた。そんな中で妙に私に絡んでくる男子が1人いた。
あいつ笹原 保だ。
男子バスケ部のキャプテンだけど、何かというと私の言うことに口だしてくるしで言い争いは日常茶飯事だった。
私の方は面倒だから話をしないようにしたりしてるのにやたらと話し掛けてくるし・・・
美玖とか恵(けい)も間に入ってくれたりしたけど喧嘩もしょっちゅうだった。
で、そんな中学生活も終わりとなる卒業式の日。
私は何故かあいつに告白された。
「好きだ!俺と付き合ってくれ」って
何それって感じで正直混乱したっけなあの時。
笹原はバスケ部の部長するくらいでバスケは上手かったし、背も高くて結構見た目もカッコよかった。ちょっと粗野なところはあったけど女子にも優しくて結構モテたと思う。
私も初めて会った時は"カッコいいかな"とか思ったけどウザ絡みしてくるので嫌いな男子No1になってたんだよね。まぁ喧嘩友達位には思ってたけど付き合うとかそいう感情は無かった。
話を聞くと転校してきた当初から好きだったけど接し方がわからなくて突っかかってたとか。不器用すぎでしょ!とも思ったけど、正直今までの事もあったしその場は「無理!って」お断りした。
まぁその時はあいつも「そうか・・・」って落ち込みつつも納得してたんで別れたんだけど・・・・あいつも進学先森下学園にだったんだよね。
私の家は正直それ程裕福な家庭ってわけでは無かったからスポーツ推薦で補助金も受けられる制度があった森下学園は魅力的だった。親には迷惑を掛けたくなかったし元々高校でもバスケをするつもりだったからバスケの推薦枠で入学を目指したんだ。そして見事合格した。
仲が良かった美玖と恵(けい)は進学校の川野辺高校を受験するって聞いてたからちょっと寂しかったけど家計の為と思えばね。うち兄弟多いし。
昔を懐かしみながら見ていた卒業アルバムを閉じ、スマホの写真フォルダを見るとフォルダの中には私と保の写真が沢山詰まっていた。
『もうじき付き合い始めてから2年か・・・』
桜咲く中行われた森下学園の入学式。
何というか私は笹原と同じクラスだった。
2年進級時はまたクラス替えはあるみたいだけど、振った相手と一緒かと思うと気まずい思いもあった・・・・・・んだけどもそれは私だけだったみたいで、次の日からあいつの猛攻が始まった。
あいつ諦めが悪くて、毎日のように私にアタックしてきたんだよね。
"お昼一緒に食べようぜ"とか"今週末映画行こうぜ"とか・・・・
周りからも何となく付き合ってるんじゃないか的な雰囲気に見られるようになってきたし、いつの間にやら私の横にあいつが居る時間も多くなってきた。そして、それが自然に思えてきている自分もいた。
そして入学から2か月。根負けして「とりあえずお友達から・・・・」という事で付き合う事を了承した。
そうしたらあいつメチャクチャ大喜びして・・・何だかちょっと可愛かった。
それからは、お友達からと言ったはずだけど帰りに一緒に下校したり休みの日デートしたりと何だか笹原のペースにのせられすっかり恋人な感じになってしまった。
このままじゃいかん!とか思ったりもしたけど、私の中でも笹原の占める割合は大きくなってきていて、居ないと寂しく思うくらいになってしまっていた。
術中に嵌ってるとか思いつつも何処かそれも悪くないかなと思う自分も居た。
と昔の写真を眺めているとスマホにメールが届いた。
[なぁ!美味しそうなランチ出してる店見つけたんだけど一緒に行かないか?]
あいつからだ。
部屋散らかったままだけど美味しいランチのお誘いは魅力的ね♪
折角のお誘いだしね♪
[うん。いいよ今から支度するから12:00に川野辺駅前でいい?それとも川北のバスターミナルの方がいい?]
[じゃ川野辺の駅前で待ちあわせしよ]
[了解♪]
何だか高校に入ってからずっとあいつのペースにのせられてる気もするけど、今となってはあいつが居ない日々は考えられない。いつの間にか私の方があいつに夢中になっちゃってるみたい・・・・ちょっと悔しいかも。
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