閑話➄ 藤原美里と平野の場合 -クリスマスを君と-

<藤原美里視点>


12月某日。

部活終わりの帰り道。

私は(平野)直人と一緒に歩いていた。

いつもは(葉山)芳江も一緒に帰ってるんだけど今日は風邪をひいて学校も休んだんだよね。早く良くなるといいけど。


「・・・」

「・・・」


気まずいなぁ~

直人が私に好意を持ってくれてるのは知っているし、正直私も嫌じゃないし・・・むしろ最近は意識しまくってる。

そんな状態だからみんなと居るときであればふざけ合ったり気軽に話をしたり出来るんだけど・・・2人きりとなると何だか緊張しちゃっていつも話題が続かなくなるんだよね。

いつもは芳江が間に入って色々話しを振ってくれるんだけど・・・本当は話したい事とか色々あるはずなのに。


「・・・クリスマス」

「え?クリスマス?」

「あ あぁ・・・そその美里は予定あるか?」

「え・・・べ 別に予定とか無いけど・・・」

「じゃ じゃあさ俺と一緒に遊びに行かないか?」

「え!?直人と?」


ク クリスマスの日って・・・もしかしなくてもデート?

直人と2人きりで?

えっ ちょ それって・・・


「・・・俺とじゃ駄目か?」


駄目じゃない 駄目じゃない!


「し 仕方ないわね!どうせ暇だし付き合ってあげるわよ!」


ちょ!私!何でそんな言い方!

もっと素直になりなさい私!


「そ そうか!じゃぁ10:00に川野辺の駅前な!約束だからな!」

「えっと・・・うん」


嬉しそうに家へと帰っていく直人。

もう・・・でもそんなに私とデートするのが嬉しいの?





---------------------

翌日。

芳江は今日も風邪で休みだった。

どうもインフルエンザでしばらく休みになるらしい。


お大事にと言いたいところだけど・・・当日着て行く服とか相談したかったんだけどなぁ~。

流石にインフルじゃ相談しに行くのは無理だよね。


・・・自分で言うのも何だけど私の私服って男の子が喜びそうな可愛らしい服とかほとんどないんだよね。直人の好みはわからないけど芳江なら色々アドバイスくれそうだったんだけど。

どうしようかなぁ~


と1人机に突っ伏して悩んでいると


「どうしたの美里ちゃん。難しい顔して」

「あ、幸それに紅葉ちゃん」


そっか幸や彼氏持ちの紅葉ちゃんなら相談にのってくれるかも。

そう思った私は2人に直人の事を相談した。

・・・・


「平野君もクリスマスに美里ちゃんをデートに誘うなんて中々やるねぇ~」

「違うよ。遊びに行こうって言われただけだし」

「そう言いつつも藤原さんも意識してるから悩んでるんでしょ?」

「そ そうだけど・・・・」


紅葉ちゃんって大人しそうだけど結構恋愛事は詳しそうだ。

流石楓先輩(推しカップル)の妹さん。


「藤原さんの気持ちはどうなの?」

「私は・・・・」


私の気持ちは・・・確かに最近直人の事が気になるしバスケしてるところを見てもカッコイイなとか思ったりしちゃうことあるけど・・・


「まぁとりあえず日も無いし放課後美里ちゃんの服見に行こ!」

「え!服?今日行くの!?」


「だって美里ちゃんの私服って男っぽい服ばっかりでしょ?悪くは無いけど多分可愛いカッコしてった方がいい気がするんだよね」

「うっ。。。」

「藤原さん。平野君って女子に結構人気あるんだよ?

「え?直人が?」


そ そうなの?


「うん。バスケ部で1年唯一のレギュラーだし背も高くてカッコいいもん」

「そ そう・・・(言われてみれば確かに・・・まぁ頭は悪いけどね)」

「平野君が藤原さんの事が好きでも他の人に告白とかされたら取られちゃうかもしれないんだよ!」


それは・・・嫌だな・・・


「私もお洋服選ぶの手伝うから行こうよ♪」

「う うん。よろしくお願いします・・・」


結局、幸と紅葉ちゃんの勢いに押され放課後ショッピングモールまで私のデート服を買いに出かけた。

正直、私がこういう服着ていいのかな?と悩んでしまうような可愛らしい感じの服を買ってしまったけど大丈夫なんだろうか?

幸や紅葉ちゃんは"可愛い"とか"似合ってる"とか言ってくれたけど・・・不安だ。





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そして、クリスマス当日。

幸と紅葉ちゃんと買いに行った洋服を着て玄関に出るとお兄ちゃんと会った。


「おっ珍しいな美里。おしゃれして」


出来ればお兄ちゃんには会わずに出掛けたかった・・・絶対からかわれるもん。


「い いいでしょ。私だったたまにはおしゃれ位するんだからね!」

「はは 悪い悪い。似合ってるよ♪」


え?本当似合ってる?

大丈夫?この格好。


「そ そうかな?大丈夫かな?昨日、幸と買いに行ったんだ」

「へぇ~というか今からデートだろ?」


デ デート・・・違う。そんなじゃないよ。

直人は"遊びに行こう"って誘ってきただけだし


「た ただ、直人に遊びに行こうって誘われただけだし!デートとかじゃないし!」

「俺は別に平野(直人)とデートとは言って無いけどなぁ〜」

「・・・・・!!!」


お兄ちゃん嵌めたわね・・・


「まぁ親父達が心配するだろうからちゃんと日付が変わる前には帰ってくるんだぞ。遅くなるようなら迎えに行くし」

「だ だからあいつとはそういうのじゃないし!それにそんな遅くなる前には帰ってくるし!」

「はいはい♪」


そうよ。普通に夕方には帰ってくるわよ。

お兄ちゃんこそ由紀姉とデートでしょうけどちゃんと帰ってきなさいよ!




---------------------

バスに乗り直人と待ち合わせをしていた川野辺駅へ。

何だか普段着ない様な服装をしているせいか周りの目が気になる。


川野辺駅でバスを降りて改札口の方へ向かうと直人が待ち合わせ場所としていた時計台の下に見えた。

遅れちゃったかな?


「直人!ゴメン遅れちゃった?」

「・・・・」

「直人?」


どうしたんだろ。人違いじゃないよね?

私と目が合ってるはずだけど何だか返事が無い。


「どうかしたの?」

「み 美里なのか?」

「何言ってるのよ。あんたの幼馴染の藤原美里よ。

 誘われたから来たけど気が変わったって言うなら帰るわよ!」

「い いつもの美里だ」

「何よ いつものって」


なんだって言うのよ。まったく。


 「いや違う。そのゴメン。あんまり可愛くて、いやそのいつもと雰囲気が違うというか」

「ふぇ?」


か 可愛い?私が?

ち 違うわ。幸と紅葉ちゃんに選んでもらった"服が"可愛いのよきっと。

私が可愛いわけないじゃない。


「へ 変なこと言わないでよ!ほ ほら遊び行くわよ!」

「お おぅ」



その後私達は西川野辺まで電車で移動しショッピングモールに行った。

一緒にランチしたり、隣接する公園や水族園を歩いたり、ゲームセンターで遊んだり・・・ってこれ完全にデートだよね。

プリクラとかも撮っちゃったし・・・それに今日クリスマスだよね。


・・・紅葉ちゃんは直人が"結構モテるよ"って言ってたけど私が隣でいいの?




---------------------

楽しい時間は過ぎるのも早いもので、ショッピングモールの広場にクリスマスイルミネーションが灯り始めた。

ふと周りを見るとカップルばっかりだ。

何だか私達がここに居ていいのか不安になってきた。


と、直人が私に話しかけてきた。


「美里。今日はありがとう。凄く楽しかった」

「うん♪私も楽しかったよ」

「・・・・」

「どうしたの直人?急に真面目な顔して」


さっきまで笑顔で話していたのに広場の中央に差し掛かったところで急に立ち止まり私の方も見てきた。


「美里」

「何?」

「俺。お前の事が好きだ。俺と付き合ってくれないか?」

「え?私?」


心のどこかで期待していたところはあるのかもしれないけど・・・本当に私でいいの?


「俺じゃ駄目か?」

「・・・お兄ちゃんと由紀姉。それに田辺先輩と楓先輩。美玖先輩や恵先輩とか見てるとね。何だか大好きなラブコメを特等席で見てるみたいで凄く楽しかったんだ。でもね自分自身の恋愛事とか何だか苦手で・・・ヒロインにはなることはないんじゃないかなってどこかで思ってた。

 私ってさ。男っぽいし変な子だと思うけど良いの?直人ならもっと可愛い子を彼女に出来ると思うよ?」


「変な奴だってのは知ってるよ。付き合い長いしそんなの今更だろ?

 それでも俺は美里が良いんだ」

「知ってるって・・・そ そこは否定しなさいよ♪」


何だか思わず笑ってしまった。 

直人も変わり者だよ。私が良いなんてさ。

 

「でも・・・それなら・・・いいよ」

「へ?」

「だ・か・ら 付き合ってあげてもいいよって言ってるの!」

「マジか!美里!」

「いいって言ってるでしょ!」

「やった~!!!」


そう言いながら直人は私を抱きしめてきた。


「え?ちょ ちょっと直人?」

「好きだ美里!!」

「う うん。私も・・・好き」


多分私の顔は真っ赤だったと思う。

でも・・・自分がヒロインになるのも悪くないのかな。


高校一年のクリスマス。

私にとっては忘れられない1日になった。




**************

もっと短めの話のはずだったんですが、いつの間にか3000文字越えてしまってました。

次回は年明け1月中頃に更新予定です。

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