アフターストーリー 由紀と和志の場合⑩ -クリスマスを君と-
「あ、あのさ由紀」
「なに?和君」
俺の部屋での由紀との勉強会。
最近というか夏の大会以降は日課となっている。
飽きっぽかった由紀も積極的に勉強に取り組んでいて、最近の模試では川野辺大学も合格圏内に入るレベルになった。
本当、頑張ったよな・・・
だからというわけではないけど・・・
「その・・・さ、今週末クリスマスだろ?息抜きに何処か遊びに行かないか?」
「・・・・・」
「や やめとくか?」
「何々!!それって・・・もしかしてデートのお誘い!」
一瞬呆けていた由紀だったが、嬉しそうに前のめりになって顔を近づけてきた。
顔が近いぞ由紀・・・照れるだろ。
「あ、あぁ去年はバスケの大会もあったし一緒には過ごせなかっただろ?
まぁ受験も控えてるし近場で考えてるけど息抜きにとでも思ってな」
「うん!もちろん行くよ!久しぶりだよねデート♪」
「そ そうだよなデート・・・」
確かにあらためて言われると久々だよな。
由紀が勉強会で毎日の様に部屋に来てくれてるから・・・寂しい思いはさせないつもりだったのに・・・迂闊だった。
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そしてクリスマス当日。
今日は昼前に川野辺の駅前で由紀と待ち合わせをしている。
久々のデートということもあり待ち合わせにしたんだ。
待ち合わせが昼前ということもありゆっくり目で起きてリビングに向かうと
「いってきま~す」
普段パンツスタイルが多い妹の美里が珍しくスカートを履いて出掛けるところだった。
多分少し化粧もしているよな・・・っていうか絶対にデートだろ。
だとすると相手は・・・
「おっ珍しいな美里。おしゃれして」
「い いいでしょ。私だったたまにはおしゃれ位するんだからね!」
「はは 悪い悪い。似合ってるよ♪」
「そ そうかな?大丈夫かな?昨日、幸と買いに行ったんだ」
「へぇ~というか今からデートだろ?」
そう言うと美里は顔を真っ赤にして慌てて弁解しだした。
「た ただ、直人に遊びに行こうって誘われただけだし!デートとかじゃないし!」
「俺は別に平野(直人)とデートとは言って無いけどなぁ〜」
「・・・・・!!!」
慌ててる慌ててる♪
「まぁ親父達が心配するだろうからちゃんと日付が変わる前には帰ってくるんだぞ。遅くなるようなら迎えに行くし」
「だ だからあいつとはそういうのじゃないし!それにそんな遅くなる前には帰ってくるし!」
「はいはい♪」
そっかそっか。美里と平野もついに・・・っていうか平野もようやく・・・頼むぞ妹を!
「ちょ お兄!聞いてる!」
「照れない照れない」
「そ そういうお兄ちゃんこそ由紀姉とデートなんでしょ!そろそろ支度しないと遅れちゃうよ!」
「おっもうそんな時間か!じゃ楽しんで来いよ!」
危ない危ない。
美里のこういう反応珍しいからつい調子に乗ってしまった。
俺も早く支度をしなくちゃ!
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「和君!お待たせ」
「大丈夫だよ俺も来たばかりだし」
「うん♪」
待ち合わせ場所で少し待っていると由紀が少し駆け足でやってきた。
寒がりの由紀は相変わらず服を沢山着込んでるけどそれも何だか可愛らしい。
"本当可愛いな"
「ん?どうしたんだ由紀。急に照れだして」
「か 和君が急に"可愛いな"とか言うからだよ。
嬉しいけどこんな街中で恥ずかしいよ」
「へ?俺声に出してた?」
「思いっきり声出てたよ・・・」
まずいな。無自覚だ・・・気を付けないと。
由紀と"正式"に付き合い始めてから2年近く経つけどこういうのって、未だにこういうのは慣れないというかやっぱり照れる。
田辺と小早川さんみたいに仲良くとか一時期考えた時期もあったけど俺達には無理だ。それに・・・あいつらには悪いがあそこまでイチャつくのは恥いわ。
「き 気を付けるよ。でも・・・その本心だから」
「・・・あ ありがとう嬉しいよ」
「・・・・」
「・・・・」
「行こうか?」
「うん」
ちなみに今日はショッピングモールの広場で期間限定オープンしているスケートリンクに行くことにしていた。
ショッピングモールなら食事や買い物も出来るしね。
川野辺から電車に乗って1駅の西川野辺。
ショッピングモールはこの西川野辺駅から直結している。
駅とショッピングモールを結ぶ幅広のデッキを歩きモールの敷地に入ると由紀とも何度か行ったことがあるシネコンが入る建物がある。
今日行くスケートリンクはこの建物の先にある多目的広場に仮設されている。
音楽イベントなども行える大き目の広場でそれなりに大きなリンクが設営されている。
「スケートとか久しぶりだよな」
「そうだよね。ほら覚えてる?小学生の頃にうちのお父さん達とみんなで市内のスケートリンク行ったよね?」
「あぁ覚えてるよ。みんな滑るの初めてで転びながらだったよな」
「だよね♪でも最後はみんな滑れるようになったんだよね」
「そうだな~ でも由紀は滑れるようになったの一番最後だったよな♪」
「そ そうだったかな~」
そんな昔話をしながらレンタル場でスケート靴を借りた俺達はリンクへと向かった。
「きゃ!!」
「大丈夫か由紀・・・っととと!」
リンクに入って早々転びそうになった由紀を抱き留めて・・・俺も転んだ。
正直みんなでスケートに行った後は俺も数えるくらいしかやったこと無いんだよし正直余裕はない。
でも、ここは俺が誘ったんだし由紀をリードしないとな。
「ご ごめん和君!!久しぶり過ぎて・・・」
「大丈夫だよ。それよりさ手を繋いで滑ろうぜ。その方が由紀も安心だろ?」
「うん!」
少し照れた感じの由紀の手を引いて立ち上がらせた俺は、由紀と手を繋ぎながらゆっくりとリンクを滑り出した。
由紀も少し腰が引けてるようだったけど何とかバランスをとって滑ってる。
その後、由紀の滑りも安定してきたけど手は離さずに2人で楽しい時間を過ごした。何というか・・・いいムードだよなこれ。
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「楽しかったね♪」
「そうだな」
スケートリンクを出た俺達は少し体が冷えたこともあり、暖房の利いたショッピングモールへと戻った。
クリスマスということでいつも以上に混雑しているフードコートで軽く食事をして、クリスマスということで色々な店を見て回りプレゼントを贈りあった。
プレゼントは2人で色々見たにも関わらず・・・恥ずかしながらお揃いでダウンジャケットとか買ってしまった。
全然悪くは無いんだけど、これ着て学校行ったら絶対笹原達にからかわれるやつだよな。
ただ・・・由紀とお揃いって思うと何だか少し嬉しいかったりもする。
「ねぇそろそろ暗くなってきたし帰ろっか。お父さんがケーキ買ってきてくれるって言ってたし」
「そうだな。そろそろ帰るか・・・・」
何だか"帰る"って考えると一気に現実に引き戻される気分だよな。
本当はこの後もずっと由紀と2人きりでいたいところだけど、そうもいかないし。
「来年のクリスマスは・・・夏みたいに2人で旅行でも行こうな」
「うん。そうだね」(和君不意打ちはズルいよ)
「でも、その前に・・・」
「だよね。私頑張るからね!」
照れ笑いをしながら張り切る由紀の手を握りしめ俺達は帰宅の途についた。
・・・来年は由紀と一緒に大学生としてクリスマスを迎えたいな。
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ちなみに美里は、えらくご機嫌な様子で俺達よりも"後に"帰ってきた。
"良い事あったのかな”
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