閑話④ 由紀と楓と夏川さんの場合 SS

短めのショートストーリーです。

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-Side 森田 由紀-


「由紀ちゃんご機嫌だねぇ~ そんなに旅行楽しかったの?」

「え?」

「だって今日のバイト中ずっとニヤニヤしちゃってるし♪」

「ほ ほんと?」


全然意識してなかった。

でも楽しかったなぁ~和君との旅行。

確かに思い出しただけで幸せな気分になれる。


旅行から帰った翌日。

私はバイト先のラウムに来ていた。

受験もあるのでバイトの回数は3年生になってから減らしてたんだけど、この夏でバイトは一旦辞めて勉強に専念する予定なんだよね。

和君はもう少しバイトを続けるみたいだけど私は和君ほど成績良くないし同じレベルで頑張ってたんじゃ一緒に大学に合格は出来ないから・・・


今日はそんなバイトの最終日ということで、楓さんと夏川さんも同じシフトに入ってくれて軽く送別会という名の女子会を開いてくれている。

と言っても閉店時間を過ぎたラウムでケーキと珈琲を一緒に食べてるだけなんだけどね。

まぁ実際お別れと言っても夏川さんは高校同じだし楓さんとも勉強会とか一緒にやってるから本当の"お別れ"ではない。


「はぁ~ 私もケンちゃんと旅行に行きたいなぁ~」

「楓さんは旅行とか行かなくてもいつもイチャイチャしてるじゃないですか」

「そんなこと無いよ。それに最近はお互い勉強も忙しくて会う時間も前よりは少ないんだよ」


そうなの?確かに勉強は忙しそうにしてるけど?

それに楓さんと田辺君って確かアパートで部屋も隣だよね?


「またまた~ この間のお祭り見たよ!田辺君とお揃いの浴衣着て凄く仲良さそうにしてたじゃん」

「え!そうなんですか夏川さん!」

「そうそう。2人で腕組んで超仲良さそうだったよ」


全然イチャイチャしてるじゃないですか・・・


「ま まぁあれは息抜きということで・・・ちゃんと勉強もしてるよ。

 そ、それより夏川さんは誰とお祭り行ったのかなぁ~」


「え、そ それは・・・その」

「あ、それは私も気になるなぁ~」


「うっ由紀ちゃんまで・・・」

「もしかしなくても横田君でしょ?あ~赤くなったやっぱり~」

「もう~ からかわないから許して!」


まぁそうだよね。

そこは彼氏の横田君とだよね。

横田君ってバスケは上手いけど恋愛絡みは中々に鈍感キャラらしく、和君と笹原君が協力して夏川さんに告白させたらしいんだよね。

でも、確か横田君って・・・


「横田君って・・・スポーツ推薦で都内の大学に行くんだよね?」

「え?川野辺大学受験するんじゃないの?」


そう。夏川さんは私達と同じく地元の川野辺大学を受けるんだもんね。


「うん。相変わらずバスケ一筋なのよね。元々大学でもバスケはするつもりだったみたいだけど、この間の大会で強豪校のスカウトに気に入られて推薦が決まったって」

「・・・そっか。夏川さんはその大学は受けないの?」

「体育系の大学なの。私が専攻したい学部もなかったし・・・

 でもそういうストイックなところも好きになったところだから♪

 それにね寮には入るみたいだけど会えなくなるわけじゃないし、会おうと思えば会いに行ける距離だしね」

「そうだよね。都内なら近いもんね♪」


強いな夏川さん。

でも私は和君と離れるのはもう嫌だ。

あんな思いはもうしたくない。

だから絶対に大学にも合格するんだ。


「楓ちゃん、夏川さん!もうすぐ2学期始まるけどまた勉強会よろしくね!」

「ど どうしたの由紀ちゃん。急にやる気になって」

「う うん。勉強会は全然大丈夫だけど」


「だって、みんなの中では私が一番成績悪いし・・・

 楓さんも夏川さんもこの間の模試で川野辺大学は合格圏内だったんでしょ?私はまだギリギリのラインだからみんなより頑張らないと・・・」

「・・・私達だって絶対合格するって保証は無いよ。だけど・・・一緒に頑張って合格しようね♪」

「・・・ありがとう楓さん。一緒に大学行こうね」

「うん。それに合格出来たら心置きなくケンちゃんとイチャイチャできるし♪」

「はは・・・・」


この人は・・・

でも、私も合格したら気持ちは同じかも♪

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