アフターストーリー 由紀と和志の場合⑨ -名古屋旅行②-
イルカショーを見た俺達は、閉館間近の館内をギリギリまで見て回った。
時間が遅いこともあり人も疎らで何だか水族館を貸し切っている様な気分になれた。
「やっぱり水族館っていいよね」
「そうだな。受験終わって落ち着いたら何処かまた行って見たいな」
「うん♪」
そう言いながら俺の腕に抱きついてくる由紀。
水族館を出ると外はもう暗く、船や港の灯りが宝石の様に瞬いて凄く綺麗に見える。
潮風が心地よい港近くの公園は、さながら恋人たちのデートスポットになっていた。
俺と由紀も周りからは仲の良い恋人同士に見えるんだろうな。
そう思うと何だか少し嬉しくなり俺は少し遠回りをして駅まで向かった。
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地下鉄に乗り名古屋駅前に戻った俺達は、駅前の台湾料理店に入った。
今日の夕飯を食べる店として選んでいた有名店で名物は台湾ラーメンだ。
もちろん俺も由紀も台湾ラーメンを注文。
辛いんだけど深みのある癖になる味。
まだ川野辺には台湾ラーメンを食べれる店は無いから来てみたかったんだよね。
由紀と2人汗かきながら美味しくいただきました。
そして、お腹も満足したところで予約していたシティーホテルへ。
今回は行きの旅費が浮いたこともあり、ちょっと奮発して良さげなホテルを選んでいた。
「すみません。少し遅くなっちゃいましたが予約していた藤原です」
「はい。1泊2名様ダブルで予約の藤原様ですね。お待ちしてました」
自分で予約はしたものの、あらためて"ダブル"って言われると何だか照れるな。
横を見ると由紀も視線を合わせるのが恥ずかしいのかあらぬ方向を見ている。
ホテルの人には俺達はどう見えるんだろ。
ルームキーを受け取った俺達はエレベーターで客室へ。
部屋は11F。部屋に入りカーテンを開けると名古屋の夜景が一望出来た。
「綺麗・・・」
「そうだな」
俺は緊張しながらも由紀の肩を抱き抱きしめるとそっとキスをした・・・・・
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翌朝。
少し遅めにホテルをチェックアウトした俺達はネットで事前に調べておいた老舗の喫茶店に来ていた。
名古屋と言えば"モーニング"ということで俺達はホテルを素泊まりで予約して有名店で名物のモーニングを食べることにしていたんだ。
「う~ん どうしようかなぁ~」
「確かに悩むよな。普通のモーニングのハムエッグトーストだけでも良さそうだけど」
「エビフライサンドも有名だし捨てがたいよね」
予定ではお得感満載のコーヒーとハムエッグトーストを頼もうと決めていたんだけど、隣の席の人が食べていたエビフライサンドを見てしまったんだよね。
メチャ美味しそうで♪
「じゃあさ モーニング2つとエビフライサンド1つ頼もうよ!」
「いいけど 結構ボリュームありそうだぜ。食べきれるのか?」
「昨日結構歩いたし・・・昨晩も・・・・だから」
「あ、 あぁそうだな。俺もお腹空いてるからいけるかな。ははは」
「「・・・・・」」
思わず2人して赤面してしまった。
そして、今日の予定など雑談をしていると注文したモーニングと少し遅れてエビフライサンドが到着。
当然の如く美味しいハムエッグトーストとエビフライサンド。
結構なボリュームだったはずなんだけど俺も由紀も難なく完食してしまった。
もちろん喫茶店ということでコーヒーも美味♪
朝からこんな贅沢をして良いのだろうか。
そんな少し遅めの朝食を食べ終えた俺達は、観光定番の名古屋城へ。
ここも歴史好きの由紀の希望だ。
「ほら!和君早く行こうよ」
「元気だな由紀は。はしゃぎすぎて転ぶなよ♪」
「もぉまた 子供扱いして!」
「はは ごめんごめん」
1615年に徳川家康によって建造された名古屋城。
今の本丸は復元されたものだけど、二之丸の庭園含め広大な敷地に歴史的建造物が多数展開されている。
「凄いよねぇ 建造物ももちろんだけど、襖絵や欄間とか何百年も前にこんな素晴らしいものがあったんだもんね」
「だな。職人の仕事って感じだな」
再建された本丸御殿や天守閣。それに重要文化財指定もされている隅櫓などなど俺と由紀は貴重な史跡を見て楽しんだ。
そして、お腹も空いてきたところで栄に移動。
お昼に入る店もちゃんと決めていた。
昨日のひつまぶしに続きこちらも名古屋で有名な味噌カツのお店。
栄の路地裏にある老舗店だ。
途中道に迷いながらも何とか到着すると店内からは香ばしい味噌たれの香りが・・・
「和君。美味しいにおいがするよ」
「だよな。これ絶対に美味しい奴だよな」
ランチタイム終了間際だったこともあり特に並ばずに店内に入れた俺達は、迷うことなく"元祖味噌カツ丼"を注文。
そしてしばらく待つと味噌を絡めたカツに半熟卵のトッピングが食欲をそそる元祖味噌カツ丼が運ばれてきた。
「「いただきま~す」」
「・・・・うま!」
見た目はしょっぱそうなくらいに味噌が絡められているけど意外としつこくなくそれでいて味噌の味を楽しめる。更に卵を絡めると味もマイルドに。
ちょっと癖になりそうな味だな。
「どうしよ~和君。今回の旅行って絶対食べ過ぎてるよ私」
「まぁ美味しいんだし仕方ないさ。それに元々由紀は細い位なんだから少し食べ過ぎくらいで丁度いいと思うぜ」
「も~ そうやって私の事を甘やかすんだから。でもそうだよね美味し過ぎるのが悪いんだよね。うん。帰ったらダイエットするから大丈夫だよね!」
由紀・・・そう言うのって絶対(ダイエット)やらないやつ。
そんな会話を楽しみながらのランチを終えた俺達は、そのまま栄の町を散策。
天気も良かったので公園は家族連れやカップルであふれている。
そんな周りに影響されてか俺と由紀も自然と手を繋いでいた。
「何だか天気も良いし気持ちいいね」
「あぁ。昨日程は暑くないし散歩にはちょうどいいもな」
「すみませ~ん 写真お願いしてもいいですか?」
公園を歩いていると1組のカップルに声を掛けられた。
優しそうな男性と凄く綺麗な女性のカップル。
何だかどこかで見たことあるような?気のせいか?
「いいですよ。後ろのテレビ塔とか入るように撮った方がいいですかね」
「あ、はい。そうですねお願いします」
僕は男性からスマホを受け取ると少し後ろに下がり2人を中心にテレビ塔と公園のシンボルらしい水の宇宙船が入る様にスマホを構えた。
「じゃぁ撮りますよ~」
「「お願いしま~す」」
[カシャ]
我ながらいい感じに写真が撮れた。
撮影した写真を2人に見せると嬉しそうにお礼を言われた。
そして、
「お2人も旅行ですよね?よろしければ撮りましょうか?」
「あ、じゃあお願いしてもいいですか?」
「もちろん!」
今回の旅行で、由紀とは沢山写真も撮ったけど人に撮ってもらう写真はやっぱり違うな。写真の中で幸せそうに微笑む由紀を見て思った。
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駅の土産物コーナーで両親や保達へのお土産を買った俺と由紀は、新幹線ホームへと向かった。
まもなく到着する新幹線に乗れば今回の旅行も終了だ。
「和君。何だかあっという間だったね」
「そうだな。でも凄く楽しかった」
「うん♪」
何だか少し名残惜しい気もしたけどいつまでも遊んではいられないからな。
「あ、和君。帰ったらまた勉強会お願いね」
「おっ 由紀やる気だな」
「うん。絶対和君と同じ大学入るんだから!」
「その意気その意気♪」
無事に2人揃って大学に合格できるといいな。
そして、来年の今頃もまたこうやって由紀と楽しい旅行したいな。
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