アフターストーリー 由紀と和志の場合⑧ -名古屋旅行①-
「和君 あのお店じゃない?」
「あっそうだな、日岡さんに教えてもらった地図と場所もあってるしな」
田辺達の試合を見た後、綾女さん達と別れた俺と由紀は名古屋観光というか少し遅めのランチを楽しむべく市内某所を目指して歩いていた。
名古屋旅行前、笹原たちに名古屋に行くことを話したところ日岡さんからオススメの観光スポットや食事処をいくつか教えてもらったんだよね。
日岡さんは大阪出身で中学2年から川野辺に引っ越してきたわけだけど、お母さんが名古屋出身らしくて小さい頃からよく遊びに行っていたらしく。
ということで今回の旅行は、この日岡さん情報を軸に色々とプランも考えていたりする。
そして今俺と由紀が目指していたのは熱田神宮近くにある"ひつまぶし"のお店。
日岡さんからも是非食べて見てとおいしい店は何軒か教えてもらっていたけど、今回は一番有名そうということでこのお店を選んでみた。
お店は日岡さんの勧めもあり、あらかじめ予約を入れていたのでスムーズに入ることは出来たけど人気店らしく行列も出来ている。本当予約しててよかった。
お店に入り予約を伝え、係りの人に案内された席は日本庭園が見える落ち着いた和室。高校生がデートで使うような店じゃ無いよな。
・・・こういう機会でもないとまず来ないようなお店かもしれないな。
「わ わたし、お店でひつまぶしとか食べるのはじめてだよ」
「俺もだよ。独りでお手軽に食べるような金額でもないなし、お店も何だか・・・ちょっと緊張だな」
「そうだね。・・・でもいいの?今回ご馳走して貰っちゃって?」
「宿泊代とかは折半だし、少しくらいは見栄張らせてくれよ」
「ふふ ありがと和君♪
でも・・・そうだよね今日は2人で泊りなんだよね♡」
「お おぅ そ そうだな」
そう言いながらお互い目を逸らしてしまう。
あらてめて言葉に出すと照れるというか緊張するな。
おじさん達にもちゃんと許可は取っての旅行だし、やましいところはないけど2人きりで泊りの旅行は始めてだし・・・
田辺たちは結構気軽に2人で旅行とか行ってるみたいだけど慣れなのかな。
などと会話を楽しいでいると
「お待たせしました~ "ひつまぶし"です」
「「おぉ!!」」
会話をしている間も香ばしい鰻の香りに期待はしていたけどメチャクチャ美味しそうだ。
「和君 凄くいい匂いだよ」
「そうだな早速食べようか」
そして一口。思わず由紀を目を合わせる。
「んん~!!」
「うま!」
濃過ぎず甘過ぎずなたれに柔らかい鰻。
薬味を入れるとまた味変して更に美味しく・・・
比べちゃ駄目なんだろうけど家で食べるスーパーの鰻とは次元が違う。
それに追加で頼んでいたう巻きの玉子もふわっふわで。
「和君!全部食べちゃ駄目だよ。お茶漬けもしなきゃ!」
「あ、そ そうだな」
つい夢中になって一気に食べてしまいそうになったけど折角だから茶漬けも楽しまないとな。
だいぶ減ってしまっていたけどお茶碗にお茶を注ぎ薬味も追加。
たれの旨味がお茶にしみこみ何とも・・・付け合わせの漬物ともよく合う。
そして、あっという間に完食。
「ふぅ~ 何だか一気に食べちゃったな」
「うん。私も何だか普段より食べるペース早かった気がする」
「でも美味しかったよなぁ」
「まだ口の中に美味しい味が残ってるよ♪」
日岡さんからは他にもリーズナブルな価格のお店や人気店も教えてもらってたけどかなり満足出来たな。後でお礼言わなきゃ。
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綺麗な中庭を眺めながら少し食休みをした後、俺達は熱田神宮へと向かった。
ここに行くのは由紀の希望だったんだよな。
歴女とまでは言わないかもだけど由紀は元々史跡や神社とかが好きで最近は友達と御朱印も集めてるらしいんだよね。
「何だか空気が澄んでるというか気持ちいいな」
「うん。緑も多いし、私こういう雰囲気好きだなぁ」
わかる気もするな。
市街地から近いのに神聖な雰囲気というか、大げさかもしれないけど心が洗われるような気がする。
手水舎で手を清め二拝二拍手一拝。
2人で参拝を済ませた後は、授与所にて合格守りを購入。
来年も2人揃って合格の報告に来れるといいんだけど。
「ね ねぇ和君。この御守りも買わない?」
「ん?なんだ?愛守り?」
「そ その・・恋人同士で持つといいらしいから・・・2人お揃いで」
「すみません。このお守り2つ!」
即買いしてしまった・・・由紀可愛すぎるだろ。
その後、熱田の杜を散策し御朱印を貰い、由紀が楽しみにしていた宝物館へ。
歴史はそれ程得意な方ではないので、事前に展示物について調べてきたという由紀に解説してもらいながら多くの貴重な文化財を見て回った。
「でね、この刀はね~」
「ほぉ~」
いつもと立場が逆だけど、由紀も俺に解説出来るのが嬉しいのか随分機嫌が良さそうで饒舌だ(ちょっとだけドヤ顔)
でも、工芸品にしても彫刻にしても何百年も前のものとは思えないほど緻密かつ繊細な作りだ。今と違って全部手作業で作ってるんだもんな。本当凄い。
由紀が熱心に展示物を見ていたこともあり予定より長めの滞在時間となってしまったけど、俺達は宝物殿を後にして次の目的地へと向かった。
「ごめんね。予定より遅くなっちゃったよね」
「大丈夫だよ。そこまで時間に縛られてるわけじゃないし夏休み期間は営業時間も長いみたいだから」
次の目的地は名古屋港近くの水族館。
ネットで調べた限りイルカショーや巨大水槽は中々見ごたえありそうだったし、やっぱり・・・水族館といえばデートの定番ということで。
「うわぁ~ いきなりシャチやイルカがいるよ!」
「だな。川野辺の水族館は小さい魚ばかりだしやっぱり違うなぁ~」
巨大水槽の中を悠々と泳ぐ巨大なシャチやイルカ。
青白い光が差し込む館内から見るその姿は見ていて飽きない。
隣に居る由紀も水槽を静かに見つめている。
と、館内アナウンスが流れ今日最後のイルカショーが間もなく始まることが告げられた。
「あ、和君。今日最後のイルカショーだって行ってみよ!」
「そうだな。間に合わないかと思ってたけど大丈夫だったみたいだ」
イルカショーは見るのを諦めてたんだけど夏休み期間だからかな。
ショーを行う建物の最上階に上がると大きなプールを囲む観客席には既に沢山の人が着席しショーの開始を待っている。
「建物の屋上なのに結構大きな会場なんだな」
俺も由紀の手を引いて空いてる席を探し着席した。
少し後ろの方だけど丁度プールの正面でイルカ達が良く見えそうだ。
「あ!はじまるみたいだよ」
軽快な音楽が流れはじめ、進行のお姉さんの合図に合わせ宙を舞うイルカ達。
イルカショーは別の水族館でも見たことあったけど中々の迫力だ。
「かわいい~ ほら和君あのイルカ、プールサイドに上がってお姉さんから餌貰ってる♪」
「そうだな♪」
「わぁ今度は輪っかくぐって♪」
「そうだな♪」
「わぁあんなに高く飛んでる!!」
「そうだな♪」
「・・・和君ちゃんと見てる?」
「ん?イルカを見て嬉しそうにしてる由紀なら見てるよ。可愛いなって」
途端に顔を赤くする由紀。
俺変な事言ったか?
「も もう!恥ずかしいでしょ!今はイルカショー見て!」
「お おぅ」
そう言いながらも少し嬉しそうに俺の腕に抱き付いてくる由紀が何とも可愛い。
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名古屋旅行編は1話予定でしたが少し長くなってきたので2話に分けます。
なるべく早く続きはアップいたします。
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