幼馴染の女の子は俺を振り向かせたいらしい
第12話 距離感
由紀と"友達"の関係になって1か月が過ぎた。
「和君 学校行こ♪」
「おぅ」
玄関を出るといつもの様に家の前で由紀が俺を待っている。
由紀曰く"友達でも一緒に学校行ったりするよね"との事で・・・
例の件があるまで、俺は由紀とは恋人同士だと思い一緒に学校に行くのも当たり前の様に思っていた。でも別に恋人同士でなくても一緒に学校へ行っていいんだよな。買い物にしても昼ご飯を食べるにしても別に問題ないだろう。
だとすると恋人同士ですることって何だ?俺は由紀に何を求めていたんだ?
キスしたり抱き合ったりすればそれで満足だったのか?
俺自身も由紀に恋人らしいことをしてあげてたのか?
「和君?どうかしたの難しい顔して」
「ん?あ、何でもないちょっと考え事」
「ふ~ん」
由紀は、あれから俺に振り向いてもらおうと俺に頼らず色々と努力している。
まぁある意味高校生なんだし俺に依存せず独り立ちするのは当たり前ではあるんだけど、今まで俺に頼りきりだったことを考えると随分な成長だ。
ちなみに当面の目標は俺にお弁当を作れるレベルの料理の腕前になる事だそうだ。由紀の基準では彼氏のお弁当を作れる彼女は”いい女への第1歩”だそうだ。
ちなみに「彼女じゃなくてもお弁当位作ってあげてもいいよね」と言われたので「まぁいいんじゃないか」と言ってしまったからだが、正解だったんだろうか?珍しく由紀が一生懸命だったからな・・・
俺も・・・・由紀の気持ちに応えるためにもちゃんと考えないとな。
「じゃあまた後でね!」
「ああ」
教室の前で由紀と別れた俺はいつもの様に保や日岡さんが雑談しているグループに加わる。この2人は友達が多いから周囲がいつも賑やかなんだよな。
「よぉ和志。相変わらず眠そうな顔してるな」
「おはよう藤原君」
「おはよ保、日岡さん。
いや、顔は生まれつきだけど、今日は本当に眠い。田辺とオンラインゲームやってたら結構寝るの遅くなっちまって」
「田辺って川野辺のバスケ部の田辺か?」
「ああ、バイトも一緒だし最近よく遊ぶんだよ」
そう。最近バイト仲間で川野辺高校バスケ部の田辺とはよく連絡を取り合っている。単純に同じバスケ部ということで話が合うというのもあるけど田辺は彼女持ちなので、色々と相談に乗って貰ったりもしているんだ。
本人は”相談に乗れるほど恋愛経験はない”とか言ってるけど彼女さんと一緒に居るときの甘々な雰囲気や彼女さんの惚れっぷりを見てると"何言ってるんだお前は"と突っ込みをいれたくなる。まぁ少なくとも"付き合うとは何だろう","恋愛って何だろう"とか今更ながらに考えている俺からすれば、頼りになる先生なわけだ。
ちなみに目の前の親友達に相談すると変に心配されてしまうこともあるので、あえて他校の田辺にというのもある。
「バスケではライバル同士だけど気が合うみたいだな」
「確かにな。後、田辺の彼女の小早川さんも見た目と違って結構天然で面白いよ。保や日岡さんも福島とはよくカラオケ行くみたいじゃん」
「ああ好きなミュージシャンが被ってな。結構盛り上がるんだぜ」
「へぇ~何だか楽しそうだな」
何というか川野辺の奴らとは1年の時も顔は合わせてるはずなんだけど、前はこういう雰囲気にはならなかったよな。お互い2年になって余裕が出来たのかもしれないけど不思議な感じがするな。あ、でも田辺は2年から編入って言ってたっけ。
「そうそう。藤原君。カラオケといえばさ、
今度みんなで行こうかって話をしてたんだけど一緒に行かない?」
「うんうん。藤原君も行こうよ!」
「いつ?部活の無い日ならいいよ」
「ほんと!じゃ由紀も誘うから一緒に行こうね!」
「え? あ、うんわかった」
渡辺さんと佐藤さん。
渡辺さんは由紀と同じ手芸部、佐藤さんはバスケ部の子で日岡さんとも仲が良く、保たちともよく一緒に居るグループのメンバーだ。
渡辺さんは俺達のクラスの学級委員をやってるんだけど世話好きというか何というか・・・色々と俺や由紀の事を気に掛けてくれてる。
ただ雰囲気的に俺と由紀をくっつけようとしているんだよな。
以前は嬉しかったど、例の件の後はありがたいのかどうなのか悩ましいところだ。
由紀も変わってきたけど、俺もあの後変わったと思う。
以前はカラオケとか誘われてもいかなかったし、保たちのグループでも会話にはあんまり加わってなかった。
由紀に束縛されていたわけではないけど、俺自身狭い交友関係の中で満足してしまっていたのかもしれない。
由紀以外の女子生徒やクラスメイトとも積極的にかかわるようになったせいか、今更ながらに交友関係が広がった気がする。
保や藤原からも最近の俺は"以前より明るくなった"と言われたし俺自身はわからないけど良い傾向なんだろうなきっと。
ところで今月は俺の中では大きなイベントが1つあった。
由紀の誕生日だ。
元々の計画では、文化祭の最終日に行われる後夜祭で、由紀にプレゼントを渡すつもりだった。
ただ、・・・渡すつもりだった由紀へのプレゼントは今も引き出しの奥にしまったままだ。"恋人"として由紀に送るつもりで買った品だし、”友達”に送るものと
しては少々重いと思うし、もし渡すなら俺も"恋人"としてあらためて渡したい。
そんなこともあり、由紀の誕生日は二人きりでは無く笹原や日岡さん達と一緒にお祝いをした。もちろんプレゼントも渡したけど別のものだ。
由紀は喜んでくれてはいたけど・・・俺が後夜祭でプレゼントを渡すつもりだったことを聞いていただけに時折俺を見ては悲しそうな顔も見せていた。
由紀は俺を振り向かせようと頑張っている。
俺も由紀を受け入れようと意識はしている。
でも、俺は今までの様に由紀を素直に受け入れられていないようにも思える。
もしかしたら一度広がった距離感は直ぐには戻らないのかもしれない。
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少し見切り発車なところもありますが、大枠の話の流れは決まったので、ペース遅いかとは思いますが更新再開します。
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