第13話 付き合うって事
俺と由紀の距離感・・・・
恋人・・・・
付き合う・・・・
部活終わりの帰り道。
俺は今更ながらに由紀との事を考えながら歩いていた。
数週間前。俺は由紀が吉野と付き合うって聞いてショックを受けた。
そして、俺はあいつのために色々と尽くしてきたけど、由紀からは恋人らしいことをしてもらったこともなく、ただの幼馴染としてみられていたと思い泣いた。
そう。確かにあの時は大切に思っていた由紀に裏切られた感じがして凄く悲しかった。
そして、由紀と決別して過ごした結果、俺自身が由紀に好意を持っていることを再確認しつつも"好き"っていう気持ちがよくわからなくなった。
結局、由紀とは友達からやり直そうということになったわけだけど、由紀は真剣に俺に振り向いてもらおうと努力してくれている。
だからこそ俺もその気持ちを受け止めたいしきちんと結論を出したいんだ。
友達と恋人として付き合うのとで何が違うんだ?親愛?愛情?
今も由紀とは一緒に学校に行くし、昼も一緒に食べることもある。
以前より頻度は減ったと思うけど買い物も一緒に行ったり勉強をする事もある。
前とほとんど変わらないじゃないか。
それとも告白すれば付き合うことになるのか?何か関係性が変わるのか?
そもそも以前も周りからは恋人認定されていたみたいだけど、現状を考えると今までの俺と由紀は仲の良い友達付き合いをしていただけなのか?
だとすると俺自身も由紀に対して恋人らしいことはしていなかったわけだ・・・
それに。そもそも俺がもっと早く由紀に告白してはっきり気持ちを伝えていればあんなことも起こらなかったんだろうし。
『う~ん。わからん』
などと悩みながら川北のバスターミナルを歩いていると
「藤原」
「ん?って優じゃん。久しぶりだな」
中学の時のバスケ部のチームメイト吉見優に声を掛けられた。
こいつとは妙に気が合ってよく一緒に居たんだよな。
ちなみにこいつには双子の妹の恵が居るから俺はそれぞれを名前で呼んでいる。
そういえば日岡さんも恵と同じ漢字だけど読み方が違う。
吉見の妹は"ケイ"で日岡さんは"メグミ"まぁどうでもいい話しだけど、初めて二人に会ったときは漢字って難しいと思った。
「この間の試合の時は話しできなかったけど元気そうだな。
それにバスケも更に上手くなったな」
「はは。お前こそ随分活躍してたじゃないか」
「って勝ったチームのMVPに言われてもな・・・
ところで・・・色々と大変だったみたいだな・・・森田の件」
「ん?あぁ。まぁ色々あったな。笹原から聞いたのか?」
「いや。この間、夏川から聞いたんだ。相談にのってやってくれって」
「そうか。夏川が・・・
そういえば、優は大崎さんと付き合う事になったんだよな」
「ああ お陰様でな。色々とありがとうな」
「いや、俺は何もしてないよ。日岡さんやお前の妹だろ色々動いてたのは」
「そうかもしれないけど、気にしてはくれてただろ」
「・・・まぁそれはな。大崎さんも優も友達だろ」
それにしてもなんというか、優も雰囲気変ったな。
なんか丸くなったというか前よりしゃべるようになったというか。
以前は、こんなにしゃべらなかったし、他人と少し距離を置くタイプだった。
大崎さんと付き合いだしたからか?
「優・・・付き合うってどんな感じだ?
俺自身、今まで由紀とは付き合ってるつもりでいたんだけど、何だか最近付き合うとか恋愛ってこと自体がなんなのかよくわからなくなってるんだ」
「そうだな。俺も偉そうな事言えないけど
"一緒に居て気を遣わず安らげる人。そんな人の特別な存在になりたい"
とか思うのが恋愛なんじゃないかな。
まぁ田辺に言われた話だけどな」
「田辺ってバスケ部の田辺健吾?」
「ああ。そうか藤原とはバイト仲間だっけな。俺も前に田辺に相談したんだよ。
あいつも幼馴染の小早川と付き合ってるだろ。凄く上手くいってるみたいだし、俺と美津子も同じような関係だったから恋愛って何なのかなって。
そうだな。藤原も田辺に話し聞けば何か新しい発見とかあるかもしれないぞ」
田辺か・・・・確かに小早川さんとも順調そうだし参考になるかもしれないな。
俺は帰宅した後、田辺にメッセージを送った。
[ちょっと相談したいことがあるんだが]
田辺からは少し時間をおいて返事が来た。
そして、明日の夕方会うことになった。
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翌日の夕方。
俺は川北のバスターミナル前の喫茶店で田辺と待ち合わせをした。
喫茶店ならバイト先のラウムの方がとも思ったけど、何気にバイトは知り合いばかりだし聞かれると結構恥ずかしい・・・ということで川野辺に住む田辺には悪かったが川北まで来てもらった(代わりにコーヒーを奢った)
田辺には以前由紀との事は話しをしていた。
あいつは素直に俺の話を聞いて色々とコメントをくれた。
それも踏まえて、今日は、付き合うとか恋愛って何だろうって素直に問いかけてみた。
恋愛や付き合うってことについては、昨日優から言われた事とほぼ同じ答えだった。というか優の奴、田辺に言われた事、本当そのまんま言ってたんだな。
そして、
「藤原も森田さんの事が好きな気持ちは今もあるんだろ?
だったらそんなに難しく考えずに友達から仲良くしてけば、自然と相手に対する本当の気持ちに気が付くんじゃないか?
あっ、ただ一緒に居るだけで相手に気持ちが伝わるとか上手い話は無いからな。気持ちに気付けたら思いはきちんと伝えないとな」
恋愛とか付き合うとかって説明にしても田辺の話してくれたことは、ある意味一般的な話かもしれない。
ただ、今の俺には重く、何だか気持ちを後押ししてくれる言葉に聞こえた。
・・・田辺。やっぱりお前に相談して良かったよ。
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