第14話 振り向かせたい

-Side 森田 由紀-


あの日。私は和君に友達からやり直そうって言われた。

確かに今まで私と和君の距離は近すぎたのかもしれない。

お互い付き合ってると思いながらもどこかに不安があったのかもしれない。


『いつも一緒だったもんね・・・・』


なのに私は和君につらい思いをさせた。

正直もう一緒に居てくれなくなるかもと思いながらも"ごめんなさい"って謝った。

でも、一緒に居ることは許してくれた。

それにまた"由紀"って呼んでくれた。

"森田さん"って呼ばれたときは何だか寂しくて悲しくて辛かった。


もう一度、友達としてやり直し、それでもお互い好きでいられるなら、和君は告白してくれるとも言ってくれた。


『私は和君が好き』


でも、和君は私にずっと一緒に居たから"好きだと思ってるだけかもしれない"って言ってた。視野を広げれば俺よりももっと好きな人が出来るかもって。

そんなことない。

私は、優しくて、カッコよくて、ちょっと頑固でドジところもある和君が好きなんだ。幼馴染でずっと一緒にいたからってだけが好きな理由じゃない。

でも、和君は違うかもしれない。

和君は、客観的にみてもカッコいい。今までは私の事を彼女としてみてくれていたから多分他の女子とか見てなかったんだ。他の女の子も私に遠慮してた。

だけど、私がただの友達だとしたら、女の子の方からのお誘いも増えるだろうし、和君にも好きな子が出来るかもしれない・・・


だから、私は和君に振り向いてもらうんだ。


今迄みたいに何でも和君に頼るんじゃなくて、自立した大人の女になれば、和君も私の事を見直してくれるはず。

今度こそ和君を惚れさせて告白してもらって本当の恋人同士になるんだ。

それで、あんなことやこんな事を・・・・・うふふぅ


『う~ん。と言っても自立した大人の女って・・・・どうすれば?』


とりあえず身近なカッコイイ女性を目標に頑張ればいいかな。

私の中でカッコいい女性っていうと中学の時に生徒会長してた恩田先輩。

あの人は、成績もトップクラスで、バスケ部部長でスポーツ万能、美人で人当たりも良くて、超モテモテだったよなぁ・・・・

同級生だと渋川さんや吉見さんも綺麗だし何となく凛とした感じで良かったなぁ。後は、近いところで(日岡)恵ちゃん。それから夏川さんか。


恵ちゃんはよく一緒にいるけど、私が目指すのとはちょっと違う感じがするんだよね。姉御タイプだし、私には多分無理だ。


そうすると・・・夏川さん?

確か成績は学年トップクラスだし、バスケ部も副部長で運動神経バツグン、可愛い上にサバサバした感じで男女ともに人気あり・・・

私には難易度高いかな・・・・

いや。夏川さんを目標にしよ。目標は高い方がいいはず。

私も和君につり合いが取れるカッコいい女になるんだから!


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翌日から私は頑張った。


まずは料理。お母さんにお願いして教えてもらうことにした。

正直、私は料理がほとんど出来ない。

昔、包丁を持つ手が危なっかしいって言われて、家でもほとんどやったことなかったし、家庭科の授業でも何とか・・・ってレベル。

そういえば小学校の家庭科の調理実習は同じ班だった和君の料理が一番美味しく出来たんだよね。。。何だか悔しかった。


でも、お母さんに"和君にお弁当作ってあげられる位に料理教えて!”って言ったら何だか喜んで教えてくれた。


そう。まず今の目標は和君にお弁当を作ること。

理由は・・・何となく彼女っぽくない?と思ったから。

まぁ今の私と和君は"友達"という関係だけど、お弁当作って悪いことはないはずだし、和君にも一応聞いたけど「まぁいいんじゃないか」って言われた。

それに作ってあげればきっと和君も喜んでくれるはず(多分)

ということで、夕飯はお母さんについて料理の修行をしています。


勉強も頑張らなくちゃ。

私の成績は多分学年でも中の下。下手したら下から数えた方が早いレベル。

特に不真面目というわけでないのにこの成績だから余計にたちが悪い・・・

試験前とかは、また和君に少しお世話になってしまうかもしれないけど、宿題や課題くらいは和君に頼らず一人で何とか出来る様にしたい。

いきなり、和君や夏川さんみたいにはなれないだろうけど、私だってやれば出来るはず!


そして最後が一番つらいけど、和君とあまりベタベタしないことにした。

"友達"なわけだし、今までの距離が近すぎたわけだから、辛いけど少し距離を置かなくちゃ。距離をおいても私は和君の事を好きでいられるはず。

でも、朝は今まで通り一緒に学校に行きたいな・・・







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