アフターストーリー 由紀と和志の場合⑫ -それぞれの旅立ち-

「保、もう少し日岡さんの方寄ってくれ。俺の入る場所がなくなる」

「お おぅ」

「え~近いよ~」

「恵ちゃん照れちゃって♪」

「おっ。いい感じだな。じゃぁ撮るぞ!」


カメラをセルフにして保達のもとへ走る。

[カシャ]


「うん。いい感じに撮れたんじゃないか?」

「うん♪」


高校の卒業式を控え、今日は由紀と保と日岡さんの4人でリバーランドに遊びに来ていた。

オープンの時間からアトラクションを楽しみ、最近観光スポットとして有名になりつつある菜の花畑の前で記念写真も撮った(ちなみに最近買った一眼レフで)

沢山の菜の花が黄色い絨毯の様で凄く綺麗だ。


それにしてもこの4人で遊びに出掛けるのは本当久しぶりだ。

高校卒業後、俺と由紀は川野辺大学に進学するんだけど保は横川にある工業系の専門学校へ、日岡さんは地元の不動産会社への就職が決まっていた。

皆自分がやりたいことを目指してそれぞれの道に進んでいく。


ちなみに夏川さんは俺や由紀と同じく川辺大学に進学だけど、横田はバスケの推薦で都内の大学に進学する。

何気にあの二人も今日のリバーランド行きには声を掛けたんだけど2人でデートなんだそうな。まぁ2人きりでお楽しみいただければ♪


「ねぇ和君。次は森のコースターに乗ろうよ!」

「いいけど、コースター苦手なんじゃなかったっけ?」


確か前に一緒に行ったとき気持ち悪くなってたよな。

リバーランドで一番人気のアトラクションだけど結構ハードなんだよなあのコースター。


「うん。あんまり得意じゃないけど前に和君と乗った思い出のコースターだから乗りたいなって♪」


可愛い事言うなぁ由紀♪


「そっか。じゃ行こうか。保達も乗るだろ?」

「お おぅ・・・・」

「ふふ 保ってコースターとか苦手なんだもんねぇ~♪」


え?そうなのか?

保と一緒にこういうとこ来たことなったから知らなかったけど意外だな。


「ば ばか言うなよ。俺がコースターごとき苦手なわけないだろ?余裕だぜ!」

「あ~らそうだったかしら?じゃ全然平気よね~。藤原君。私達ももちろん乗るわよ♪」

「お おぅもちろんだ・・・」


日岡さんの前だからって無理しなくてもいいのに・・・顔色悪いぞ保。


「ぐわぁ~~~」

「きゃ~~~」


予想通りというかコースターを降りた保は青白い顔をしていた。

そして、自分から乗りたいと言ったにもかかわらず由紀も調子悪そうだ。

無理するから・・・

ちなみに日岡さんはこういうのが大好きらしく1人元気だったりする。


「大丈夫か保。それに由紀も。顔色悪いし少し休もうか」

「うん。ごめん和君。やっぱり向いてないのかも私」

「あぁ 悪いな和志・・・あんなの何が楽しいんだ畜生。。。」


さっきは余裕とか言ってただろうに。

まぁ由紀も調子悪そうだし少し休憩だな。


「日岡さん、2人共辛そうだし、あそこのベンチで少し休もうか」

「そうね。保はともかく由紀ちゃんもシンドそうだもんね。

 ほら保!シャキッとしなさい!」


そう言いながら保の背中をたたく日岡さん。

中々スパルタだな・・・

にしても、相変わらず保は日岡さんには頭上がらないみたいだな。



「由紀、保。水買ってきたぞ」


疲れた感じでベンチに座る保と由紀に自販機で買ってきた水を渡す。


「悪いな和志」

「ありがとう和君」


ありふれた自然なやり取りだけど、こういうやり取りもあと少しかと思うと少し寂しいな。


「ん?どうした?暗い顔して」

「あぁこういうのもあと少しだなと思ってな」


「なんだそんなことか。別に会えなくなるわけじゃないだろ?

 リバーランドだってまた一緒に来ればいいじゃん。」


まぁ確かにな。

保の家までなら家から自転車で10分と掛からないし。

日岡さんも地元を離れるわけでもないからな。


「そうだな。お別れってわけじゃないもんな」

「そうよ。それとも藤原君は由紀ちゃんと2人きりで来たいのかな~」


まぁ確かに2人きりでデートしたい気もするけどさ・・・それはそれ。


「・・・・そ そんなことないよ。笹原や日岡さん、それに横田や夏川さん。今度はみんなで来ようぜ」

「ふふ 変な間があったのは許してあげよう。

 まぁそうだね。またみんなで遊びに来ようね」

「うん。みんなでね。あ、今度は田辺君や小早川さんも誘ってみてもいいかもね」


そうだよな。

寂しがる必要も無いんだよな。これでお別れってわけじゃないんだし。


「由紀も保もだいぶ具合よくなって来たみたいだな。次行こうぜ次!」

「うん。次は何処行く?」

「お化け屋敷とかどうだ?最近リニューアルしたみたいだぜ」

「え!本当面白そう」

「ふふふ。恵って確か苦手だったよなそう言うの♪」

「ば 馬鹿言わないでよ。私に怖いものなんて・・・」

「よ~し決まり!次はお化け屋敷だ!」


そう言いながら日岡さんの手を引き走り出す保。


「ちょ ちょっと待ってよ。お化け屋敷でいいなんて言ってないし~」

「俺達も行こうぜ由紀」

「うん!」


また来よう。

みんなで・・・










****************

あとがき


長く続いたアフターストーリーも一応ここで完結です。

(もしかしたら閑話は書くかもしれませんが)


この作品は当初1章の部分だけで完結予定でした。

が、リンクしている"7年目の約束"と連動する形でいつのまにやら1章の倍近くの執筆をしていました。

2章以降はハッピーエンドな終わり方なので好みが別れるところかとは思いますがここまでお読みいただき本当にありがとうございました。


リンクしている"7年後の約束"も本作同様に高校を卒業したところで区切りをつけるつもりです。

一応両作品のキャラが登場する続編(大学生編)も準備中ですのでよろしければそちらもまたよろしくお願いします。(2021/2/19)


★関連作"7年目の約束"と本作のキャラが登場する続編について2021/3/7より連載を開始しています。

 恋人たちの四重奏(https://kakuyomu.jp/works/16816452218687161703

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幼馴染の女の子は俺と付き合いたいらしい。だけどもう無理かも ひろきち @hiro_1974

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