第19話 好きという本当の気持ち

リバーランドのデートから数日。

12月に入り寒さも増し一気に冬が到来した感じだ。


そんな寒い朝、今日は由紀とは別で登校した。

冬の大会も近いという事でいつもより少し早い時間から朝練開始だったからだ。

別に喧嘩をしたとか変な理由ではない。

夏の大会では川野辺高校に後れを取ったけど、俺たちもあれから成長したんだ。

冬の大会は必ず俺達が全国に行く。

そんな朝練も終え、シャワーを浴びて着替えをしていると保が話しかけてきた。


「和志。週末森田とリバーランド行ったんだろ?どうだった」

「どうだったって。楽しかったよ」

「それだけか?」

「それだけだ。まぁ由紀は可愛かったし頑張って色々気を使ってくれたんだけどな。俺が駄目だった。帰ってからずっと自己嫌悪だよ」

「そうか・・・前にも言ったけどお前色々考え過ぎなんだと思うぞ。例の件を引きずってるのはわかるけど、あんまり考え過ぎてもな」

「確かに俺もそう思う。ただな今告白して付き合っても前と同じ感じにしかならない気がするんだよ。そうなると・・・」

「そうか。まぁこればっかりはお前ら2人の問題だから変に口だしたりしないけど、困ったら相談位はしてくれよな」

「あぁ ありがとう」

「おっもうこんな時間か。恵を待たせてるんだ。悪いけど先に教室行ってるな」

「ああ。また後でな・・・」(やっぱり考え過ぎなのかな俺は)


保と別れ考え事をしていたら、本当に始業ギリギリの時間になってしまい俺は大慌てで部室を出て教室に向かった。

ただ、先に出たはずの保達がまだ教室に来ていない。

何処か寄ってるのか?と思い授業の準備をしていると、


「おい和志!大変だ森田が交通事故にあった」


と保が教室に駆け込んできた。


「交通事故?由紀が?え?どういうこと?」

「部室から戻るとき校門付近が騒がしかったから見に行ったんだ。

 そうしたら車がガードレールにぶつかってて近くに森田が倒れてた。

 さっき救急車が来て川野辺総合病院に行くって っておい和志!」


「行っちゃったよ・・・・」

「たもつぅ~ 言い方」

「嘘はついてないだろ恵。森田が交通事故にあったのは間違いじゃない」

「でも、車はガードレールにあたって事故ったけど、由紀ちゃんは驚いて転んだだけでしょ?」

「まぁな。本人も元気だったし。病院も念のための検査だって言ってたもんな。でも最後まで話を聞かなかった和志も悪い。

それに・・・まぁこれであいつも何が大切なのか本当の気持ちに気が付くんじゃないか」

「ふふ そうかもね お節介さん」

「上手くいったらまた龍園のラーメンライス大盛かな」


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由紀は無事なのか?

俺は無我夢中で総合病院まで走った。

総合病院は川野辺駅の近く。それ程遠くはない。


病院に入ると受付のところに由紀のクラスの副担任の葛西先生が居た。


「先生!由紀は何処に!」

「ん?藤原?どうしたんだ。もう授業始まる時間だろ」

「だから由紀は!」

「あ あぁ森田はそこの部屋で検査と治療をしてるけど・・・っておい藤原!」


先生も落ち着いてるし由紀はそれ程重症ではないのか?

俺は教えてもらった処置室に急いで向かった。


「由紀!」

「え?って和君。どうしたの?」


扉を開けると診察用のベッドに座った由紀が居た。

俺の事を見て驚いた顔をしている。

由紀の腕と足には包帯を巻いてる。何処か怪我をしたのか?


「どうしたのって、由紀が交通事故にあったって保が。

 それより怪我は大丈夫なのか?」

「笹原君が?確かに交通事故は交通事故かもだけど私は驚いて転んだ時に擦り傷が出来た位だよ。ガードレールが無かったら危なかったかもだけど・・・

 車を運転してた人も軽症ですんだみたいけど、病院で検査するって言うから私も念のため検査だけしようかって・・・笹原君や恵にも話したんだけど」

「そ そうか 由紀はなんともないんだな・・・良かった。ほんとによかった」

「え?和君」


俺は自然と由紀を抱きしめ泣いていた。

何だろう由紀が無事だと思ったら自然と涙が・・・

由紀が居なくなるのが怖かった。

由紀に触れ合えなくなるのが嫌だった。

やっぱり難しく考えることなんてないんだ。

由紀と一緒に居たい。これが全てか俺は由紀の事・・・・


「由紀」

「なに?和君」

「由紀が居なくなるかもしれないと思ってあらためて思ったよ。

 俺は由紀が好きだ。由紀とこの先もずっと一緒に居たい。

 だから・・・俺と付き合ってくれないか?」

「ふぇ?あの・・・わわたしと?わたしでいいの?

 わ 私って多分まだまだ和君に迷惑かけるところ多いと思うんだけど・・」

「あぁ由紀じゃなくちゃダメなんだ」


今まで言おうと思いながらも言えずにいた言葉。

抱きしめられながら俺を見上げる由紀の瞳には涙が溜まっていた。


「・・・・・はい。私も和君が好きです。

 私からもお願いします。私と付き合ってください」

「待たせちゃってごめんな」

「本当だよ。でも・・・ありがとう。大好きだよ和君」


俺を見て笑顔で大好きと言ってくれた幼馴染の女の子。

無理なんかじゃないこれからは俺の最高の彼女だ。




fin

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あとがき


今回のお話で本編は完結となります。

元々は11話で完結として付き合うか付き合わないかは読者側の想像に任せる形として完結させる予定でしたが、思った以上に反響があったこともあり、私の中で考えていた"付き合う"方向でのハッピーエンドな結末を書く形で2章を作ってみました。あんまり話を引っ張ってもという思いもあり10話前後で3月中の完結を予定していたので大体予定通りといった形です。

ちなみに最終話となるこの話は2章を書き始めたろに大体の部分を書いていて、ここにつなげる形で途中の話の文書を書いてました。

ざまぁ的な結末を希望される方もいたと思いますし、そんな簡単に由紀を許すなとか後半の和志の振る舞いにイライラした人も居たかとは思いますが、私なりのエンディングはこの形となりますのでご容赦ください。


本編は完結となりますが、今後は不定期に閑話や付き合い始めてからの甘いだけのアフターストーリー的な話は書く予定です。

また、7年目の約束にもライバル校として森下学園は登場していますので、時々キャラクターも登場予定です。よろしければそちらもお楽しみいただければと思います。


それでは、ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。

2020/3/29

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