第3話 これでいいんだろうか?

翌朝。またもや玄関の外には森田さんが居た。


「昨日言ったろ。吉野と学校行けよ。

 吉野にも森田さんと学校行ってやれって言っといたからさ」

「・ず・んといっ・・に・・ほ・がいい」

「ん?なに?」(声が小さくて聞こえない)

「だから、和君と一緒に行く方がいいの!」

「・・駄目だ」


何だか大声で俺と一緒に学校に行きたいとか言われたが、一人が寂しいなら吉野に声掛けてくれ。

俺はもう恋人同士と勘違いしてしまいそうなことをするのは止めたんだ。

それに・・・まだ森田さんと二人になるのは辛い。

昨日と同様、森田さんを置いて少し早足で学校へ向かった。

が、昨日と違って今日は森田さんが後をついてきている。まぁ同じ学校に向かってるんだしこればかりは仕方ないと諦めつつも少し涙目で泣きそうな顔をした幼馴染が気になりはした。


--------------------

学校へ到着後は特にトラブルもなく普通に授業を終え、放課後部活の時間となった。


俺と保はバスケ部に所属している。

保が部長で俺が副部長だ。

うちの学校はスポーツに力を入れていて、その中でもバスケ部は県内でも上位ランクの強豪とされ近隣の川野辺高校といつも全国枠を争っている。

今年の夏の大会では川野辺高校に負けたけど、冬は雪辱をと皆張り切っているところだ。


「ほら!一年。動きが遅いぞ!」

「「はい!」」


俺や保の指示でコートを走る1年達。

何処の高校もだけど夏の大会が終わると3年生が抜けて世代交代が始まる。

うちの高校は俺の代の2年生が少なかったので、チーム編成も1年を大量に投入しないと成り立たない。

正直経験値で考えると心もとないが、何とか1年に育ってもらうしかない。


にしても。。。何だか今日は女子生徒の見学者が多い。

特に変わった練習があるわけではないんだけどなんでだ。


「和志、俺と交代でコートに入れ」

「オッケー」


審判役をしていた俺にコート内の保が声を掛けてきたので、俺は審判の笛を椅子において保と入れ替わりでコートに入った。

すると


「藤原く~ん頑張って~!!」

「応援してるよ~」


と見学の女子からの声援。

って、あの女子達ってもしかして俺目当て?なんでまた急に?

保や日岡さんが俺はモテるとか言ってたけど本当だったのか?

日岡さんの言う通りなら、俺が森田さんと距離を取ったことが原因なんだろうけど、自分としては普段の生活をしているだけだし正直違和感がある。

保は早く彼女作れとか言ってたけど俺も直ぐに彼女が作れるほどは割り切れてないし、むしろ今はまだ恋愛感情を持つことが難しそうだ。


そして部活を終えた帰り道。俺はいつもの様に保と日岡さんと雑談しながら歩いていた。

と、校門のところにまた吉野が居た。

あいつも懲りないな・・・それとも単に校門で待つの好きなのか?


「まだ何か用なのか?言っただろ森田さんと付き合ってもいいって」

「あ あぁそうだったよな。でも 今日は違うんだ」

「違う?」

「用事があるのは笹原と日岡さんなんだ」

「ん?俺達」

「あぁ 少し時間を貰えないかな?」

「まぁ良いけど。それに俺も吉野に聞きたい事あるしな」


と俺を見る保。

何となく先に帰るよう促す視線だ。


「じゃ俺は先に帰ってるぜ。腹減ったしな」

「おぅじゃまた明日な」


とりあえず俺は先に帰ることにした。

吉野が何の用事で保達に声を掛けたのかは気になったが、考えても仕方が無いし、俺は学校を後にした。


帰宅すると母さんから話があると声を掛けられた。

親子関係が悪いわけではないが、母さんに話があるとか言われてたのは初めてかもしれない。

何だか知らないけど、俺としてはお腹空いてるし早く飯が食べたいんだが・・・


「何?」

「この間由紀ちゃんと別れたって言ってたけどあれってどういうこと?

 それに朝も最近は別々に学校行ってるわよね」


そのことか・・・

やっぱりちゃんと話さなきゃ駄目だよな。

親同士も仲が良いし、これからも付き合いはあるだろうからな。


「言葉の通りだよ。由紀に彼氏が出来た。

 だから俺は迷惑が掛からないように少し距離を置くことにしたんだ。

 通学も普通に考えたら彼氏以外の男が一緒にとか無いでしょ?」


「由紀ちゃんに彼氏が?それ本当なの?」

「本当って言うか本人が俺に宣言してたからな。

 それに相手は俺も知ってるやつで学校でも人気のイケメン君だよ。それに悪い奴じゃない」

「そう・・・。由紀ちゃんって和志にベタ惚れなのかと思ってたんだけど」


ベタ惚れって何だよベタ惚れって・・・

まぁ俺もそう思ってはいたけど勘違いだったみたいだ。


「まぁ そうじゃなかったみたいだね。

 ってことで、今の俺は"ただの仲が良い幼馴染"ってポジションなんだ」

「・・・無理はしてないかい?和志はそれでいいのかい?」


あらためてそう言われると・・・よくはない。

でも・・・


「・・・俺は”幼馴染"として由紀が幸せになれるならそれでいいんだ。

 それよりお腹空いたから早く飯にしてくれよ」

「えっあ はいはい。今日はカレーだからすぐ温めるわね」


昨日は吹っ切れたとか気持ちの整理が出来たとか自分を納得させていたけど、本当にこれでいいのかは俺も正直よくわからないんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る