第4話 渡せなかったプレゼント
夕飯を食べ部屋に戻った俺は、ふと机の端に置いてある箱を見た。
綺麗なリボンを巻いた箱。森田さんへの誕生日プレゼントだ。
森田さんの誕生日は来月11月3日。
丁度文化祭の最終日でもあるので、俺は後夜祭でプレゼントを渡そうと思って気合い入れてたんだよな。
少しいいものをって喫茶店でバイトをしてお金も稼いだし・・・
それに偶然バイトが一緒になったバスケ部の夏川さんにもプレゼントを選ぶの手伝ってもらったり色々とサプライズも考えてもらったりもした・・・全部無駄になっちまったけどな。
夏川さんには『サプライズの結果は教えてね』とか言われてたけど、俺の方が森田さんに最悪のサプライズを仕掛けられちまったよな。
プレゼント。
森田さんに似合うだろうなと夏川さんお勧めの雑貨屋でかわいらしネックレスを買ったけど、捨てるのは勿体ないし美里にでもあげようかな。
・・・いや、森田さんにプレゼントするつもりだったんだし他の人にはな。
俺は机の引き出しの奥に箱をしまい鍵を閉めた。もうこの箱を開けることは無いかもしれないな。
ベッドに寝転がりあらためて考えた。
俺は森田さんとどうしたいんだろう。
確かに俺はあいつの事が好きだった。でもあいつはどうだったんだ?
小さい頃からいつも一緒に居た。本当にこれは恋愛感情だったのか?
それにもし俺が昨日吉野に"由紀は渡さない"とか言ってたら告白を受けて喜んでいた森田さんを受け入れられたのか?それに森田さんや吉野の気持ちは?
あいつは俺の事を幼馴染としか見てないんじゃないのか?
もし俺があいつの傍に居なければ、もっとあいつにも出会いがあったんじゃないのか?
森田さん。いや由紀・・・・・俺は・・・・
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-Side 笹原 保-
「で、俺達に話って何だ?」
和志と校門で別れた俺と恵は学校に戻り学食のテーブルに座り吉野と話をしていた。が、座ってから数分経つものの吉野は何も話さない。
何というか吉野の顔は少し青白いし思いつめた感じもする。
学年1のイケメンで、サッカー部のエースって顔じゃない。
そして、思いつめた吉野の目を見つめているとついに吉野が語りだした。
「すまん。嘘だったんだよ」
「ん?」
「だから、俺が森田の事が好きで告白したってのもOK貰ったってのも嘘だったんだよ」
「・・・意味わかんないだけどさ!なんでそんな嘘ついたんだよ!」
正直かなりムカついていたせいか語気が荒くなってしまった。
嘘だった?こいつのせいで和志がどれだけ傷ついたと思ってるんだ?
俺の言葉を受け、少し怯えた声で吉野は話をつづけた。
「俺、森田の姉の綾女さんと付き合ってるんだ。中学同じだったからお前らも名前くらい知ってるだろ?今は川野辺高校に通ってる」
「あぁ森田綾女先輩なら知ってる」
俺達の1つ上の先輩。美人で成績は確か学年トップクラスだったと思う。
そして、この地区では一番の進学校である川野辺高校に進学した。
今は生徒会で副会長をやってるとか、川野辺高校に居る知り合いから聞いた気がする。っていうか先輩と吉野って付き合ってたんだ。全然知らなかったな。
「で、それがどうしたんだ?」
「先週森田が、藤原に浮気されたって綾女に泣きついてきたんだよ」
「和志が?嘘だろ。あいつ浮気とかするような奴じゃないぜ」
「・・・俺もそう思う。藤原は真面目な奴だし、俺としては眉唾な気がしたんだけど、森田が言うにはバスケ部の夏川とデートしてたって言うんだ。
駅前の雑貨屋を二人で見て、その後カフェに入っていったって」
「それで?」
「綾女も藤原の事を小さい頃から知ってるし、何かの間違いじゃないかって言ったらしいんだけど森田が"和君と別れたくないよ"って泣きやまなくてな。
最終的に森田が"彼氏欲しいな"とか”告白された”とか言って藤原の気をひくっていうか危機感煽ったらいいんじゃないって話になったんだ。
もし藤原が森田の事を好きなら何らかの行動を起こすんじゃないかって。
それでまずは俺が藤原に"森田に告白するけど、お前は森田の事どう思ってるんだって"聞く役を綾女から頼まれたんだ。」
「ん? でもそれだと、今の状況と話が違わないか?」
「あぁ 森田の奴が暴走して藤原に"彼氏が出来た"って先に言っちまったんだ。
あいつ・・・藤原の気を引く事で頭がいっぱいだったみたいだったからな。
そのせいで俺の役回りも変わった。
"告白する"じゃなくて"告白してOK貰った" ってな。
本当は夏川の事を確認して、森田の事もさりげなく伝えるつもりだっんだけどな・・・
仕方なく何とか藤原が"森田は俺の女だ"とか"俺の彼女に手を出すな"とか言ってくれないかと思って、仕向けてみたんだけど結局上手くいかなかった・・・」
「まぁあいつの性格からしたら自分の気持ちより森田の幸せを考えて身を引くだろうな」
「確かにな。だから今の状態は森田の自業自得でもあるんだけど、藤原から距離を取られたのがそうとうショックだったみたいで今日は学校も早退して部屋に引きこもっちまったらしいんだ。
さっき綾女から電話があったんだけど、正直俺も綾女もどうしたらいいのかわからなくなって」
話はわかったけど。。。
何言ってんだこいつ。全部自分たちの都合で自滅しただけじゃないか。
俺達に森田との関係改善を協力して欲しいとでも言うつもりか?
だいたい、和志がどう思うかとか考えてなかったのか?
そもそもあいつが浮気何てするわけないだろ?
それに森田も和志の事が本当に好きなら信じることとか出来なかったのか?
俺達なんかよりずっと付き合いが長いんだろ?
何か言ってやろうかと思ってると、隣で黙って話を聞いていた恵が話しだした。
「あのさ、森田さんが夏川と藤原君を見たのって川野辺の駅前のカフェじゃない?」
「あぁ確かそんなこと言ってたな」
「やっぱり・・・だとしたら二人ともそのカフェでバイトしてるだけだよ。
一緒にとかじゃなくて、夏川はずいぶん前から働いてたんだけど、藤原君はこの夏からバイト始めたんだったかな。
来月、森田さんの誕生日にプレゼント買うからお金を貯めるって・・・」
「・・・・!?」
「多分雑貨屋は夏川にプレゼント選ぶのを手伝ってもらってたとかだと思うよ。
夏川って面倒見良いし、人の恋バナと大好きだから」
「はは 何だよそれ・・・森田のために藤原は・・・それを」
「多分、恵の言った通りなんだろうな。
今更だけど森田も夏川たちを見た時に綾女さんに泣きつくんじゃなくて、恋人だと思ってたなら和志に問いただせば良かったんじゃないか?」
結局は全部森田の勘違いと暴走か・・・だとしても何で。
「・・・自信が無かったんじゃないかな」
「自信?」
「ああ。夏川は学年でも屈指の美女だ。成績もトップクラスでバスケ部でも活躍してる。藤原ともつり合い取れるからな。自分を顧みて引け目を感じたんじゃないか?」
森田も和志との関係を気にしてたって事か・・・
でも和志だって努力した結果だぜ。成績も部活も。
人一倍勉強や練習をして得たものだし、楽して得られたポジションじゃない。
「ただ、色々と手遅れかもな。今となっては本当の事を和志に話しても前と同じ関係には戻れないかもしれないぜ」
「どういうことだ?」
「あいつ言ってたんだよ。自分は森田を恋人だと思って尽くしてきたけど、森田からは恋人として何かしてもらった事はなかったって。だから森田は自分の事を幼馴染の友達としか接してくれてなかったんじゃないかってな」
「そんな・・・森田は森田で藤原に惚れてたと思うぜ」
「そうかもしれないけど上手く思いは伝わってなかったんじゃないか?
甘えてたり何かをして貰ってるだけじゃ付き合ってるとは言えないと思うぜ。
皮肉な話だけど、今回の件で和志は気がついちまったんだよ」
この辺りは和志と森田の問題だから俺も良くはわからない。
でも和志がそう感じてしまったってのがな。
「後な、悪いけど俺自身お前らに協力する気にはなれない。
あいつな、あの日俺と恵の前で泣いたんだぜ。あの普段クールな男がだ。
理由はどうあれ、お前らのやったことを俺は許せない。
少しでも和志の気持ちを考えてたなら冗談でもあんなことできないはずだ。
正直に話して許してもらうか、このまま諦めるか自分たちで考えろ」
俺としては諦めてくれた方が、藤原は幸せになれそうな気がするけどな。
それにあいつならもっと素敵な彼女作れるだろ。
「これで話は終わりだろ。恵帰るぞ」
「う うん」
「・・・・・」
俺たちは俯く吉野を置いて校舎を出た。
「あれでよかったの? 藤原君は多分まだ森田さんの事・・・」
「かもしれないな。ただ、俺はあいつらを許せない。
素直に謝って、和志が許すっていうなら俺は何も言わないけど、
俺自身があいつらを助けたいとは思えない」
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