第8話  空回り

「はぁ・・・何だか今日は疲れたな」


昼休み、クラスの女子が由紀の悪口を言ったことに無性に腹がたって怒鳴ってしまった。今までの俺では考えられないような行動だ。

そしてその後、俺は保と日岡さんから『由紀の件、後悔しないように』って言われた。

~~~~~~~~~

「和志。お前やっぱり森田の事がまだ好きなんだろ?」

「・・・そうみたいだな」

「"みたいだな"とか他人事じゃなくて、お前は森田の事が好きなんだろ!」

「え、あ あぁ好きだ」(それは・・・間違いないはずだ)


「そういうとこなんだよ。

 前に言ってたよな和志は森田の事が好きだったけど、恋人らしいこと何もしてもらえなかった。森田は和志の事を幼馴染としか見てなかったんじゃないかって」

「あ あぁ」(そうだ。言った)

「お前はその"好きだ”って気持ちを森田に伝えたか?」

「それは・・・・・」(小さい頃はお互い言ってたかもしれないけど・・・)

「いつも一緒に居て仲良くしてたからって相手は察してくれるとは限らないんだぞ。俺なんか恵に何回"好きだ"とか"愛してる"って言ったと思ってるんだ!」

「ってそこで私が出てくるの・・・・」

「愛してるぞ恵」

「わ わかったから・・・人前で恥ずかしいでしょ(そいうことは二人の時に♡)

 だ だから、そういう事よ藤原君」


そういうこと?

二人みたいにイチャイチャしろって・・・事じゃないよな。


「森田さんや吉野君の気持ちを考えて身を引くのが悪いとは言わないけど、藤原君の気持ちはどうなの?ちゃんと気持ち伝えなくていいの?ってこと」

「これはお前と森田の問題だ。だから俺達がとやかく言うつもりは無いが、後で後悔しないようにしろってことだよ」

「・・・・」

~~~~~~~~~

確かにな。

由紀に彼氏が出来たってことは真実かもしれないけど、俺は今でも由紀のことが好きなんだ。

だから、今のまま由紀と疎遠になったら多分俺は一生後悔する。

横田のセリフじゃないけど、もっとシンプルに物事を考えた方がいいのかもしれない。もう一度きちんと由紀と話をしたい。

明日の朝・・・学校へ行く前、由紀の家に迎えに行ってみようかな。



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翌朝。俺は森田家の前に居た。

何だか数日会ってないだけなのに緊張する。


[ピンポーン]

『は~いどちら様ですか?』

俺がインターフォンを押すと由紀の母親のみどりさんから返事があった。


「おはようございます和志です。由紀さん居ますか」

『和志君?ちょ ちょっと待ってね』


と料理をしていたのかエプロンを着けたままのみどりさんが玄関から出てきた。


「おはようございますおばさん。由紀はまだ居ますか?」

「おはよう和志君。

 ・・・居るにはいるんだけど風邪ひいちゃったみたいで昨日から学校休んでるのよ。今日は大丈夫かと思ったんだけどまだ熱が下がらないみたいで」


風邪か。由紀って健康というかあんまり病気で学校を休むようなイメージ無かったけどな。ちょっと心配だな。


「そうですか・・・わかりました。お大事にって伝えておいてください」

「ありがとうね。それから・・・由紀の事だけど・・・」

「由紀の事?」

「い いや何でもないわ。和志君が来てくれたって伝えておくわね。

 きっとあの子喜ぶわ。

 あっ今はまだ寝てるけど夕方なら少し良くなってるだろうし起きてるかも」

「あ、はいありがとうございます」


何だろう。由紀について何かあるのかな?

それに俺が来たってだけで喜ぶのか?

吉野が来た方が良いんじゃないか?

色々と考えを巡らせながら一人学校へ向かった。


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「吉野。ちょっといいか」

「ん?」


学校に着いた俺は、机に荷物を置いた後、隣の教室を訪れ吉野に声を掛けた。

由紀には会えなかったけど、吉野からあの日の事をあらためて聞きたかった。


「今日、由紀休みなんだってな」

「あぁ熱が下がらないって(綾女から)連絡があった。

 でも何で藤原が知ってるんだ?

 それに呼び方・・・由紀に戻したのか?」


そうか。俺には連絡なかったけど彼氏である吉野には連絡したんだな。

行動が不自然な気がしてたけど・・・・やっぱり由紀は吉野の事・・・


「そうか。連絡があったのか・・・まぁ彼氏だもんな。

 呼び方は、由紀と距離を置こうかと思って変えてたけど、どうもしっくりこなくてな。お前には悪いとは思ったけど、元に戻させてもらう事にしたんだ」

「い いや遠慮すること無いぞ。その方が森田も喜ぶ」


確かに"森田さん"って言ったら悲しそうな顔してたもんな。

俺もわざわざあいつを悲しませることもないしな。

でも、吉野はまだ森田って名字で呼んでるんだな。何だか意外だ。


「で、用事ってなんだ?森田の休みの話か?」

「ん。あぁそうだな・・・」

「どうした?」

「・・・悪いまた来るわ」


・・・何がしたいんだよ俺は。

吉野に由紀の事を話すんじゃなかったのかよ。


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あとがき(という名の宣伝)

本作ですが、私が書いている「7年目の約束」と舞台と時間軸を揃えた話となっています。もちろん双方別々の話として読むことは出来ますが、ところどころで双方の登場人物が出てきたりしています。ということでよろしければ「7年目の約束」もよろしくお願いします!

※第67話決勝,第100話 森下学園で本作のキャラ登場 登場人物紹介にも記載あり

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