第17話 リバーランド②
開園の時間が近くなったので、俺は由紀を連れてリバーランドのゲートに向かった。郊外の遊園地ではあるが、入園待ちの家族連れやカップルが既に数組いた。
「入ったらまずどこに行く?さっき話してたジェットコースターから行くか?」
「そ そうだね。後からだと混みそうだし最初に行こうか」
という事で、入園と同時に俺たちは園内最奥にある森のコースターに向かった。
リバーランドには2つのコースターがあるらしいんだけど、この森のコースターが一番人気らしい。
いわゆる大手の遊園地にある様な高所からの急降下や何回転もループするような作りでは無いけど、木々の間をすり抜ける様なコースを走るためスリルがあるという評判のコースターだ。
コースター乗り場には早くも数組のカップルが居たけど、流石に開園間もない時間という事で人数は少なく俺たちは本日始発のコースターに乗ることが出来た。
「・・・・・」
「ん?どうした由紀。ちょっと震えてるけどもしかしてジェットコースターとか苦手だったのか?」
「う うん。友達は楽しそうだったし人気アトラクションだから面白いんだとは思うんだけど・・・」
「そんなら無理しなくてもよかったのに」
「だって和君は初めて来たんだしお勧めは乗った方がいいかなって
・・・あ あのさ。手 手を握ってていいかな。落ち着くと思うから」
「あ あぁそれくらいなら構わないぞ」
そういうと由紀は俺の右手をそっと握ってきた。
手の震え、由紀の緊張が伝わってくる。俺のために無理させちゃったな。
と、発車の合図となるベルが鳴りコースターが少しずつ動き出した。
ホームから少しずつ傾斜を登るコースター。
頂上に着いたところでフッと体が軽くなったような浮遊感とともに急降下し木々の中への滑り混んでいく。俺の手を握る由紀の力がギュっと強くなった。
右に左に旋回し高速で走るコースター。
そして、最後の山場となる1回転ループを終えスタート地点へと戻った。
「ふぅ 由紀ガンバったな。着いたよ」
「う うん。こ怖かったよぉ・・・・・か和君は楽しかった?」
「あぁ楽しかったよ。由紀も一緒だったしね」
「よ よかった」
少し震えながら涙目で俺に微笑み返す由紀。
健気すぎるだろ・・・・・
コースター乗り場を出た俺達は、由紀の気を落ち着かせるため近くのベンチに座った。
「はい水。時間はたっぷりあるんだし少し落ち着こうか」
「うん。何だかごめんね」
「気にすんなよ。でも由紀って昔からコースター苦手だったっけ?
昔家族で遊園地行ったときは平気だった気がしたんだけど」
「うん。小さいころは平気だったんだけど、前回久しぶりに友達と乗った時は気持ち悪くなっちゃって」
「体調とか何かあるのかな。でも変に俺に気を使って無理しなくてもいいんだからな。今日は2人で楽しむんだから」
「うん・・・・・ありがとう和君」
休憩して元気を取り戻した由紀を連れて、次はゴーカート的なアトラクションに向かった。
子供でも乗れるように速度制限はあるみたいだけど、コースもしっかりしてるし中々楽しめそうだ。
受付で登録を行い、それぞれ割り当てられてたカートに乗り説明を受ける。
「由紀 大丈夫そう?」
「う うん。アクセルとブレーキだけだし多分大丈夫!」
声が上ずってるところが少々気になるけど、確かマ○オカートとかは得意だったと思うし大丈夫かな。
そして、係員の人の合図を受けアクセルを踏み込みスタート!
「きゃあああ」
勢いよく俺の横を走り抜けて行く由紀のカート・・・
「って由紀アクセル踏み込み過ぎ!アクセル離してブレーキ!」
「え うん 」
そして、急ブレーキとハンドル操作の甘さでスピンし、何故か今度は俺の方に何故か向かってくる由紀のカート
「きゃあああああ」
「わ、わ、由紀コース逆走してる!ぶつかる!ハンドル切って!」
「え、え、どうすればいいの!」
その後、操作のコツを覚えたのか途中からは普通に運転できるようになり、楽しそうにしていたけど、由紀はこの手のアトラクションは危なそうだ・・・
というか運転免許とか危ないから絶対取らせないようにした方がよさそうな気がした。
「カートって面白いね!」
「あ あぁ楽しんでくれてよかったよ」(かなり危なっかしかったけどね)
「次どうする?そろそろお昼にする?」
「ん?あぁもうそんな時間か。そうだなじゃあ向こうの芝生で食べようか」
「うん!」
という事で由紀が頑張って作ってきてくれたお弁当を食べるため俺たちは芝生に移動した。
レジャーマットは持ってきていたので、芝生に広げ並んで腰を下ろした。
「天気もいいし気持ちいいね」
「そうだな。今日は日差しもあるし結構暖かいよな」
もう11月も終わりだから、もっと寒いかと思ってたけど今日は日差しも暖かで過ごしやすい陽気だ。
「おっ豪華だな」
「へへぇ 早起きして頑張ったんだ」
由紀が持っていたカバンから出された大きなお弁当箱には、食べやすいサイズに作られた小さいおにぎりと唐揚げやソーセージと言ったおかずが見た目も綺麗に並べられていた。
別のタッパーにはフルーツもたくさん入っている。
「じゃ早速頂こうかな」
「うん食べて食べて!」
お手拭きで手を拭いた後、俺はおにぎりと唐揚げを手に取り口に運んだ。
「ど どう?」
「うん。美味しいよ。味付けも俺好みだ」
「本当!良かった! 頑張ったかいがあったかな。和君のお母さんにも味付けは教えてもらったんだよ」
「そうなんだ。本当美味しいよ随分料理の腕前上がったな」
「ふふん 私の事 惚れなおしちゃったんじゃない」
「はは そうかもな」
「え? ほほんとに!私に惚れちゃった?」
そうだよな。そう思うよな。
「ごめん。前にも話した通り由紀の事は好きだよ。この気持ちは変わらない。
それに最近の頑張ってる由紀を見ていると一緒に居たいと思うし愛おしくも感じる。ただ、それが恋人として付き合うってなると・・・正直よくわからないんだ。多分、今告白して付き合い始めても、前とあんまり変わらない感じになっちゃうと思うし、由紀との事をもっとよく考えてから告白したいんだ」
「・・・そ そうだよね。慌てちゃだめだよね。
うん。好きって言ってもらえるだけでも私は嬉しいよ。だから慌てないで。
私も和君に"付き合いたい"って思わせる様な女の子になるからさ」
「ごめんな ハッキリしないで」
「もう 謝らないでよ。今日は2人で楽しむんでしょ!
さ 沢山作ってきたから食べて!」
笑顔で語りかけてくれる由紀。
今の由紀なら俺じゃなくても素敵な彼氏とか出来そうなのにな。
それなのに俺のことを好きでいてくれている。俺も早く気持ちをはっきりさせないとな・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます