アフターストーリー 由紀と和志の場合③ -クリスマスの夜-
<森田 由紀視点>
和君や恵ちゃん達が勝ち取った全国大会への切符。
今年の大会は静岡で終業式の週に開催された。
残念ながら学校があったので、1、2回戦は応援に行けなかったけど、和君も恵ちゃん達も勝ち進み3回戦へと駒を進めていた。
そして3回戦は今日12月24日クリスマスイブの午後から行われる。
時間的にギリギリ間に合いそうだったので、私も終業式のあと友達と和君達の応援に行くこととなった。
「ねぇねぇ藤原君達勝てるといいね」
「うん。みんな練習頑張ってたし絶対勝てるよ!」
「でも・・・今日の男子の相手って優勝候補なんでしょ?」
「う・・・うんそれは確かに・・・」
今日一緒に応援に行ってくれるのは手芸部仲間の長谷川 秀美ちゃんと渡辺 琴香ちゃん。私が"和君の応援に行く!"って言ったら2人揃って"由紀独りじゃ危ない!"って言われてついてきてくれたんだよね。
私ってそんな危なっかしい?一応私も高校2年生なんだけど・・・
まぁ確かにさっきは静岡と反対方向の電車に乗りそうになっちゃってあわてて琴香ちゃんに止められたけどさ・・・
「ところでさ、今日って藤原君と正式に付き合い始めて初のクリスマスイブでしょ?何か予定とかあるの?」
と琴香ちゃん。私も期待はしたんだけど・・・・
「今回は無理だよ。今日試合だし勝っても負けても忙しいだろうから・・・」
「やっぱりそうだよね。折角由紀ちゃんの恋バナ聞けると思ってたのになぁ~」
「って秀美ちゃん・・・話せることと話せないことはあるからね!」
「おっ 由紀ちゃんは私達に話せないようなこと藤原君としちゃうんだぁ~♪」
「え? あっ あの・・・・」
この2人と一緒に居ると楽しいけど、大体私がからかられる・・・
そんな女子トークで盛り上がりつつ、電車は静岡駅に到着した。
試合は市民体育館で行われているということだったので、駅前からバスに乗り私達は体育館へと急いだ。
会場に入ると熱気と歓声の中で試合は既に始まっていた。
今は第2クォーター。森下学園は既に6点差をつけられて負けていた。
「和君!頑張って!!」
コートを走る和君を見た私は無我夢中で叫んでいた。
自分でも驚くくらいに大きい声だったと思う。
和君に届け!その想いだけで叫んでいた。
秀美ちゃんと琴香ちゃんも一瞬驚いた顔をしていたけど、私に習って大きな声で声援をしてくれた。
すると、相手のボールを笹原君がカット。
そしてゴール下に走りこむ和君にパスを出した。
「和志!」
パスを受けた和君は相手選手をフェイントでかわしシュートを決めた。
会場に歓声があふれる。
「由紀ちゃん!やったよ藤原君がシュート決めたよ!それにほら!」
「うん!和君はやっぱり凄いよ!」
和君は私の方を見て手を振ってくれていた。
聞こえてたんだ私の声!
優勝候補のディフェンダー相手に和君は負けてなかった。
笹原君も横田君も優勝候補相手に負けていなかった。
でも・・・善戦はしたものの点差は中々詰めることが出来ず、結局4点差で敗退となってしまった。
「藤原君達・・・負けちゃったね」
「うん。残念だけどやっぱり相手の高校強かったね」
「でも・・・和君達頑張ったし」
さっき電光掲示板に出てたから恵ちゃんたち女子は3回戦も勝ったみたいだけど・・・笹原君俯いてたし辛そうだったな・・・和君も落ち込んでるんだろな。
「どうする?藤原君達に会ってくる?」
「・・・今は・・・辞めとこうかな」
「そうだね。じゃ帰ろうか」
私達も少し肩を落としながら言葉少なげにバスに乗ろうとしていると
「由紀!」
「え?和君?」
和君が追いかけてきてくれた。
と、琴香ちゃんが一言。
「駅でコーヒー飲んでるから、ゆっくりしてきていいからね♪」
「え?あの・・・」
戸惑う私を気にせず2人はバスに乗って駅に行ってしまった。
私は、和君と体育館脇のベンチに座って話をした。
「あの・・・残念だったね試合」
「折角遠くから応援に来てくれたのに・・・カッコ悪いところ見せちゃったな」
「そ そんなことないよ!和君カッコよかったよ!私バスケの事ってそんな詳しくないけど、相手の高校って優勝候補なんでしょ?そんな人達を抜いてシュート決めたんだもん和君凄いよ!」
「・・・・ありがとうな」
「うん。また次頑張ればいいじゃん!」
「そうだな。次こそはあいつらに勝たなくちゃな」
「そうだよ!」
と、和君は持っていた紙袋から小さな箱を取り出して私に渡してくれた。
「え?これは?」
「今日・・・クリスマスだろ?本当は2人で一緒にって思ってたんだけど大会の途中だし、それに今日もまだ帰れそうにないから・・・応援に来てくれるって聞いてたからプレゼントだけでもと思って」
「開けていい?」
「ああ」
箱を開けると11月の誕生石でもあるトパーズをあしらった綺麗なネックレスが入っていた。
「和君・・・・これって」
「本当は誕生日に渡すつもりだったんだけどね・・・・貰ってくれるかな」
「うん!・・・・和君ありがとう・・私・・・大切にするからね!」
そう言って私は思わず和君に抱き着いてしまった。
だって・・・嬉しすぎて・・・
和君もちょっと照れてたけど、私をそのまま抱きしめそっとキスをしてくれた。
いいよね。私達恋人同士になったんだし。
今年のクリスマスは私にとって忘れられない日となりました。
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