アフターストーリー 由紀と和志の場合④ -ダブルデート-

[カランカランカラン]

「2等賞おめでとう!!」

「やた!2等賞だってよ和君!」

「1回の福引で2等とはくじ運強いな由紀」


年が明け1月2日。

年末年始をのんびり過ごした俺と由紀は、近くの神社に初詣に行った帰りに商店街で福引を引いていた。出がけに母さんに福引券を1枚貰ったんだ。

ハッキリ言って俺はこういうくじでいい商品を当てたことが無い。

ということで1回限りのチャンスは本人曰く引きが強いという由紀に託してみた。

そして・・・2等。本当に引きが強いぞ由紀。


「くじ運いいな由紀ちゃんは」


と福引の係りをしている馴染みの中華料理屋のおっちゃん。


「ですよね。俺だったら参加賞のポケットティッシュでしたよ・・・

 で、2等って商品なんなんですか?」

「おぅ2等は昨年オープンした川野辺水族園の家族招待券だ」

「家族招待券?」

「そ。まぁ家族じゃなくてもいいんだけど入園券4枚のセットだな。彼女さんと2回行くのもいいだろうし、友達誘って4人で行ってもいいんじゃないか」

「わぁ!!やったね和君。おじさんありがとうございます。楽しんできます!」


川野辺水族園か。あそこ今度由紀と行こうか考えてたんだよな。

とおっちゃんが由紀を優しそうな目で見つめてるのに気が付いた。


「どうかしたんですか?」

「いやな、今度うちの娘が結婚するんだよ。由紀ちゃん位の時もあったんだよなぁとか思い出しちゃってな」

「え、娘さんって美香姉さんですか?」


おっちゃんの娘さんの美香姉さんは川北中の先輩でもあり今は川野辺高校で先生をしてると聞いている。美香姉さんが高校生の頃は店でバイトしてたから俺や保も飯とかおまけしてもらったりしてたんだよな。


「ああ、相手は俺の知り合いで、ちゃんとした奴だから安心なんだが、いざ式が近くなると何だか寂しくってな・・・」


"花嫁の父"ってやつか・・・

俺も子供は女の子が欲しいなとか思うけど嫁に送り出すときとか絶対泣きそうだよな。子供かぁ・・・・由紀と俺の・・・。


「どうしたの?和君?」


急に黙り込んだ俺を由紀が不思議そうな顔でのぞき込んでいる。


「な 何でもない! あ、そうだ水族園だけど田辺と小早川誘ってもいいかな?あの2人には色々と世話になってるし」

「楓さんと田辺君?うん!いいよ。バイト先では話とかするけど一緒に遊んだことないし楽しそうだよね」

「じゃあ今度の土曜日で由紀は大丈夫か?よければ田辺に連絡しておくけど」

「うん。大丈夫だよ」

「了解。じゃ連絡しとくよ。

 あ、行先は当日まであの2人には内緒な。サプライズということで♪」

「うん。わかった。何だか楽しみだね!」


ということで、俺達は田辺達を誘って川野辺水族園へと行くことになった。


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そして土曜日。

俺達は川野辺駅前で待ち合わせをした。

この日は少し寒かったので、由紀はモコモコして暖かそうなコートに手袋とイヤーマフと防寒対策ばっちり。何だかモコモコした感じも由紀らしくて可愛い。

俺もまぁダウンを着て少し厚着な感じで由紀の服装とは合ってはいると思う。 

ただ、田辺と小早川さんは2人共背が高いということもあるけど何というか服装も寒くないのかと思うほどスタイリッシュで、さりげなくお揃いのアクセサリつけたりと何やらカッコいい。ちょっとああいうのも憧れるな。


駅前で以前由紀との事で相談にのってくれたことへあらためてお礼を言った後、俺達は川野辺水族園へと向かった。

田辺はお礼を言われるほどの事は・・・と遠慮してたけど俺としては1人で悩んでた時に後押ししてくれる形になった田辺の言葉には凄く感謝してるんだ。


それにしても田辺と小早川さんは、仲が良いとは思っていたけど、お互いの家を行き来してることも多いらしいし一緒に旅行にも行ってるとか・・・俺と由紀ももう1歩進んでみたいなとは考えているけど進みすぎだろあの2人は・・・

でも、あの2人の話を聞いて由紀が


「ね ねぇ和君。私も今度和君のお部屋とか遊びに行っていいかな?」


とか言ってきたのはちょっと嬉しかったし俺も勢いで由紀の部屋に行こうかとか言ってしまった。

小さい頃はお互いの部屋も行き来してたけど中学生くらいからお互いを意識しだしたからか部屋に上がることは少なかったからな。。。いい傾向だ。

ほんと田辺には世話になるな。


「田辺・・・お前らの話聞けて良かったわ。いい勉強になった。な由紀」

「うん」


そして、水族園到着。ここでも田辺たちは魅せてくれた!!

自然に小早川さんが田辺と腕を組んで歩きだした。

思わず


「なぁ田辺たちのデートっていつもこんな感じなのか?」


とか声掛けてしまったけど普通に"あぁ何か変か?"と答えられてしまった。

そうなんだ。ナチュラルにイチャついてるんだなお前らは・・・とか思っていると、今回は小早川さんがいい仕事をしてくれた。


「ふふ 仲いいでしょ。藤原君も由紀ちゃんと腕組んで歩いてみたら?」

「ふぇ わ 私もですか!」


と由紀にも勧めてくれたんだ。俺は"無理しなくてもいいぞ"とは言ったけど、恥ずかしがりながらも"私も和君の彼女なんだからいいよね?"と俺と腕を組んできた。

由紀の顔が近い位置に来て何となくいい香りもする。ありがとう小早川さん!


そして、更に園内を周り小早川さんお勧めのカピバラの餌あげも終わってのランチタイム。由紀が"期待しててね!"と言っていたのでお弁当を作ってきてくれるのかなとは思っていたけど、まさかの小早川さんとの合作。


見た目も味も大満足だ。

そして、ちょっと恥じらいながらも小早川さんを真似して俺におにぎりを食べさせようとする由紀。なんだろ・・・やっぱり田辺達誘って正解だったかも。


その後もゲームをしたりプリクラを撮ったりと楽しいデートを満喫することが出来た。


そして、川野辺駅前。

田辺とバスケでの再戦を誓い合いあったところで今日のデートも終了となった。

次会うときは敵同士。まずは週末の練習試合だな。


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川野辺駅からバスに乗り川北バスターミナルへ。

俺の家もその隣の由紀の家もバスターミナルからは歩いて数分だ。


「和君!今日楽しかったね」

「ああ、田辺も小早川さんもやっぱりいい奴だよな」

「うん。それに・・・なんだか和君とも自然にイチャイチャできたし♪」


と少し恥ずかしそうに言う由紀。

イチャイチャか・・・確かに俺も嬉しかったけど今日のデートって思い出すと全部由紀が頑張ってくれたんだよな。

俺も・・・頑張ってみるかな。


「ゆ ゆき・・・あのさ、まだ時間早いし良かったら 俺の部屋に来ないか?」

「ふぇ!か かずくんの部屋」

「ああぁ。。。美里は予備校の合宿で居ないし、親父達も今日は帰り遅いんだ」

「そ その・・・それって2人きりってことかな・・・」

「そ そうなるかな・・・今日は由紀も頑張ってくれたし俺もな・・・嫌か?」

「お お伺いさせていただきます!」


何故敬語・・・というか由紀。歩くとき手と足一緒に出てるぞ。。。まずは落ち着こう!


というか家に誘ったはいいけど、ここからだよな。


そしてこの後は・・・・俺も由紀も色々と頑張ったとだけ言っておこう。


「由紀・・・・好きだよ

 今年も、その先も・・・・」

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