第6話 自分の気持ち
翌朝、森田さんは玄関に居なかった。
俺の言った通り吉野と学校に行くことにしたんだろう。
吉野と楽しそうに通学する森田さんを想像すると、少し寂しいような、苦しいような不思議な感情があった。
"あいつが幸せになるなら"って思ってたはずなのにな・・・
やっぱり簡単には割り切れないか。
学校へ着くと俺は保や日岡さんといつもの様に過ごした。
2人に余計な心配は掛けたくないからな。
そして2限が終わり、移動教室のために廊下を歩いていると同じバスケ部の横田に声を掛けられた。
横田は1年からレギュラーで活躍しているバスケ部のエースだ。本当は俺や笹原よりも部長や副部長に適任な気がするんだけど、本人曰く人をまとめたり、色々考えたりするのは苦手だからと俺達を推薦した。
まぁ確かに勉強は苦手みたいだけど・・・
「今日、森田休んでるぜ」
「え?」
「それに昨日も具合が悪いって早退した。
多分藤原絡みだと思うけど何だか森田も辛そうにしてたぜ」
てっきり吉野と仲良くしてるんだろうと思ってたけど違うのか?
確かに昨日の朝、俺から一緒に学校行くことを断られて泣きそうな顔をしてたけど。彼氏が出来て嬉しかったんじゃなかったのか?
吉野だって悪い奴じゃないぞ?
「お前たちの事はうちのクラスでも話題になってるから何となく知ってるけど、どうも吉野も森田も最近の行動は胡散臭いんだよなぁ。
って言っても根拠もないし俺の勘だけどな。
まぁ今の藤原は森田の彼氏じゃなくなったかもしれないけど幼馴染なんだろ?
余計なお世話かもしれないけど嫌いになったわけじゃないんなら見舞い位してやってもいいんじゃないか?」
「・・・あぁ 気を遣わせて悪いな」
「気にすんな。傍から見るとお前も相当病んでるぞ。
森田の件で無理をしてるのがバレバレだ。
それに部活でも動きにキレがないしな。
あんまり思い悩まずに行動するのもたまには良いもんだぜ」
「そう・・かもしれないな」
「おっ そろそろ授業始まるな。じゃな!」
普段こういうことを話すような奴じゃないんだけどな。
それだけ俺が弱って見えたって事か?
でも・・・あいつの言う通りかもしれないな。
吉野の行動は今考えると何だか不自然だし森田さんも・・・
だとしても、森田さんが俺じゃなく吉野を選んだことに変わりはないんだけどな。本当、何も悩まずに行動出来ていたら、もしかしたら俺ももっと楽になれるのかもしれないな。
昼休み。
いつもの様に保と日岡さんとで昼飯を食べようとしていると、クラスの女子が近づいてきた。確か、桃原さんと木村さんだったかな。
「あの・・・藤原君。私達も一緒にお昼食べてもいいかな」
「え?あぁ俺は構わないけど、保、日岡さん構わないか?」
「あぁ別にいいんじゃないか」
「ありがとう!じゃお弁当持ってくるね!」
ほとんど話したことない子達だと思うけど何だろうな急に。
などと思っていたけど、弁当を食べ始めるとすぐに理由はわかった。
桃原さんも木村さんも俺に積極的に話しかけてきたからだ。
保と日岡さんは苦笑いしてたが、どうもこの二人は俺の事が気になって一緒にお昼を食べたかったみたいだ。
ただ、何というか二人とも凄く可愛いくて魅力的なんだけど・・・
俺は正直なところ今回の件で恋愛というか人を信じることに臆病になってしまっていた。
だから彼女たちとの会話も申し訳ないと思いながらも曖昧な受け答えで濁していた。
ただ、俺は彼女たちのある言葉に反応してしまった。
「でも森田さんって酷いよね。藤原君みたいな素敵な人が居るのに他に彼氏作るなんて。」
「そうだよね。おとなしそうな顔して結構男好きなのかもね。
私だったらもっと藤原君を大切にするのに」
「そうそう!あんな酷い子の事は早く忘れて元気になってよね!」
「おい お前らちょっと言い過ぎだぞ!」
「何よ笹原。本当のこと言ってるだけでしょ」
彼女たちは俺に元気になって欲しいって親切心で言ったのかもしれない。
だけど、その時の俺は"由紀"を侮辱した彼女らが許せなかった。
「由紀は優しい子なんだよ」
「え?」
「俺は小さい頃から一緒に居たからわかる。
由紀は桃原さん達が言うような酷い子じゃない」
「で でも・・・」
「少なくとも由紀は陰で人の悪口を言うような子じゃない!」
「・・・・ご ごめんなさい」
珍しく俺が声を荒げたためか、彼女たちは素直に謝罪し逃げる様に席を離れていった。
俺・・・どうしたんだろうな。
今までこんな風に怒ったことなんてなかったのに。
由紀の悪口を言われたと思ったら自然と言葉が出てきてしまった。
・・・横田の言う通りだな。俺はいつも色々と考え過ぎなのかもしれない。
それに咄嗟に"由紀"って言っちゃったな。
あいつとの距離を取るために理由をつけて"森田さん"って呼んでたのに・・・
やっぱり"由紀"って呼んだ方がしっくりくるな。
人の気持ちを考えるのは大切だけど、まずは自分の気持ち・・・なのかもな。
「ねぇ保君。藤原君はやっぱり由紀ちゃんの事」
「だな。俺はあいつらを許すつもりは無かったんだけど・・・
はぁ ったく本当世話が焼ける奴だぜ」
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文書の言い回しが今一つなので、後で少し修正するかもしれません。
後、19日は仕事で帰りが遅くなるので更新は1日休む予定です(次回は20日に更新予定)
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