第40話 竜の守護者
その日の夜。
俺はベッドの上でこれからのことを考えていた。
復讐も終わり4竜たちの危機も去った。やっと普通の冒険者としての生活の始まりだ。
そんなことを思うと気持ちが高ぶってしまいなかなか寝付けないでいた。
しばらくすると部屋のドアが開いた。だれか尋ねてきたのだろうか。
見るとそこにはフィリアがたっていた。
だがいつもの赤いドレスやパジャマ姿ではない。薄いドレスのような肌着だけを着ているようだ。
「フィリア!?こんな時間に何か用か?それよりどうしたんだよその格好」
俺は驚いて尋ねてみるが、返事は無い。
フィリアは無言のままドアを閉めると、そのままベッドに入り込んできた。
「今日君はいろんなことがあって疲れていると思ってね。添い寝してあげようと思ったのさ。僕が近くにいれば君も安心できるだろう?」
フィリアがこんなことを言うなんて今までは想像すらできなかった。一体どうしたというのだろう。
それよりも気になることがある。
「なぁフィリア、君もって事はフィリアも俺といると安心できるのか?」
彼女のほうを見ると、枕を抱いて顔を隠している。表情は見えなかったが小さく頷いているのが見えた。
よく見ると耳が赤い、恥ずかしいのだろうか。彼女が枕を下にずらし上目遣いでこちらを見てきた。
「僕もらしくないとは思っているさ。でも今日は一緒に寝たい気分なんだ」
好きな子にそんなことを言われたら、顔をまともに見ることなどできるわけが無かった。
慌ててフィリアと反対方向を向き、心を落ち着かせる。今日の彼女の破壊力はすごい。
すると、フィリアが後ろから俺の体に手を回してきた。今までの彼女からは想像できないかなり大胆な行動だ。
「こんな主人は嫌かい?」
消え入りそうな小さな声でフィリアが尋ねる、そんなわけが無い。ただ急展開過ぎて心の準備ができていないだけだ。ついつい思ってもいない事をいってしまう
「嫌なわけないだろ。俺はお前の守護者だ。主人のそばにいて嬉しくないわけがない」
フィリアからの返事は無い、その代わりに彼女の手が俺を強く抱きしめてきた。
しばらくの間沈黙が続いた。
「こんな気持ちになるのは、僕が主人で君が守護者だからなのかな・・・」
彼女の声は震えていた。
「そうじゃない!」
思わず叫んで振り返り、彼女を抱きしめてしまう。慌てて離すと彼女が熱っぽい目で俺を見ていた。
彼女が静かに目を閉じた。気のせいか口を尖らせている気がする。
これは・・・いいのだろうか?俺も男だしさすがにそこまで鈍感ではない。
彼女がここまでしてくれることなどもう二度とありえないかもしれない。
待っている彼女の唇に、自分のそれを合わせるべく顔を近づける。
あと少しで触れる、その瞬間
「お姉さま!ここにいましたのね!今夜ぐらいはワタクシと寝てくださいな!」
勢いよく扉が開け放たれウンディが中に入ってくる。
扉が開いた瞬間にフィリアは俺をベッドから突き飛ばし、何事も無かったかのようにベッドから降りていた。
いつの間にか服装もいつものパジャマに戻っている。
「全く君は、今日ぐらい一緒に寝てあげようと思ったらあんなことまでしようするとはね。優しくした私が愚かだったよ」
ベッドから落ち窓際でうずくまっている俺を見下ろすフィリア。その顔はいつもの彼女に戻っていた。
「あら、ショウもいましたのね。残念ですけどお姉さまと寝るのはワタクシですわ。ささ、参りましょうお姉さま」
フィリアがウンディに抱きかかえられて出て行く。
扉が閉まると部屋には静寂が戻った。さっきまでの雰囲気が嘘のようだ。
「なんなんだよ・・・」
一人悲しみにくれながら眠りに着くしかなかった。
翌朝、俺とフィリア、ウンディの三人はギルドで依頼を受けた。
至竜教の残党が変異種を生み出しているようなのでその討伐にむけて出発する。
フィリアは昨日のことなど何も無かったかのようにいつもどおりだ。
ウンディはフィリアと一緒に寝れたのだろう、すごくご機嫌なのが分かった。
「それじゃ出発しようか。今更言うまでも無いけれど、僕達を余り働かせないように気をつけてくれ。しっかり守ってくれよ?」
フィリアがクスクスと笑っている。どうやら完全にいつもどおりの彼女に戻ったようだ。
「そうですわよショウ。お姉さまはもちろんですけど、ワタクシも怪我しないようにしっかりと守ってくださいまし」
荷台でフィリアを抱きかかえ、ウンディは満足そうだ。
馬車を出発させ力強くこたえる。
「任せてくれよ、なんたって俺は・・竜の守護者だからな」
自称竜の少女の血を飲んだ俺は最強の冒険者になって復讐する! sho @dogwhisperer
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