第27話 初めての敗北
ギルドに戻ると、ダレスが出迎えてくれた。
昨日の応接間に案内される。
「依頼は完了だ。報酬をもらおうか」
寝てだだけのフィリアが報告する。
頑張ったのは俺なんだけどな。
「ありがとうございます。早速用意させましょう。そういえば、お二人が討伐に向かっている間に、捕らえた奴らから有力な情報を手に入れております」
ダレスが1枚の紙を取り出す。どうやらこの周辺の地図のようだ。
地図の上には3個の丸が書いてあり、その中の一つは上から×で消されていた。
「これは、奴らのから聞き出した拠点の位置です。一つはお二人が先日制圧された場所です。残りの2つに斥候を送って確認した所、奴らの姿が確認できました。まだ拠点が潰されたことには気づいていないようです」
二人で地図を確認する。
残りの2つは町からそう遠くない位置にあった。
「それで、見せたということは僕たちにここを調査してほしいのかい?」
フィリアが尋ねる。彼女が言わなければ俺から聞いていただろう。
「そのとおりです。お二人に是非お願いしたい。報酬は1箇所に付き金貨50枚でいかがでしょう?」
断る理由がないのでもちろん引き受けた。やつらは一人も逃がすわけにはいかない。
「なぁフィリア。今回は二手に別れないか?俺とフィリアで2箇所同時に襲えば、片方に感づかれて取り逃がすこともないだろう」
一つ潰しているのだから、これ以上感づかれる危険は増やせない。
それに俺とフィリアならば、誰が相手でも負けることはないだろう。
「君は僕の守護者ってことを忘れてるんじゃないだろうね?まぁ今回は仕方がない、君の言うとおり奴らを逃がすわけには行かないからね。二手に別れよう」
文句を言いつつも彼女は意見を聞いてくれた。
やっと実力を認めてもらえたようで嬉しかった。
やつらにこれ以上時間を与えないようにするため、すぐに出発することにした。
「では、報酬を用意してお待ちしております。今回はお二人が制圧後にすぐ調査が始められるように、私達のギルドからも何人か冒険者を同行させましょう」
ダレスがギルド員に指示を出す、準備が終わり次第出発だ。
二人にはそれぞれ三人の冒険者がついた。
途中の分かれ道までは一緒に行動し、そこから二手に分かれる予定だ。
俺とフィリアは終わり次第この分かれ道で合流することにした。
「大丈夫だとは思うが、あまり無茶はしないでくれよ?僕はいないんだから危ないと思ったら逃げてくれていいからね」
いつになく優しいフィリア、何かあったのだろうか?
彼女と別れ、ギルドの冒険者たちと一緒に進む。
彼らも熟練の冒険者なので、奴ら相手に遅れを取ることはないだろう。
「しかしあれっすね、ショウさんはまだしもフィリアさんはつよいんすか?」
斥候を任されていた少女の冒険者が歩きながらそんな疑問をぶつけてきた。
「失礼ですよ。彼らは二人共ドラゴン級なのですから、強いに決まっているでしょう」
僧侶の男性冒険者が代わりに答える。
俺よりも彼女のほうがとんでもなく強いんだけどな。
「冗談をいっている場合か、依頼に集中しろ」
そんなやり取りを見ていたリーダー格らしいベテラン冒険者が二人を注意する。
仲間がいると賑やかだなぁ。そんなことを考えながら目的の場所を目指す。
俺たちの方の拠点は洞窟を利用しているようだ。
近くまで来ると、奴らの姿がみえた。
一人で立っているところを見ると見張りだろうか、まだ気づかれてはいないようだ。
「じゃあ俺が先に行きますから、三人は合図したら出てきてください」
彼らを待機させ、一人で飛び出す。
飛び出した時の勢いで見張りの男を壁に叩きつけ気絶させると、三人に合図を出す。
「じゃあ入り口はお願いします。俺は中を見てきますから」
入り口を任せ、中へと進んだ。
中を捜索すると、一本道になっているようだ。これなら迷うこともないだろう。
奥に向かうと、大広間があった。天井は所々崩れ太陽の光が差し込んでいる。
広間には10人程度奴らがいたが、まるで相手にならなかった。
「これで終わりかな?ここには強いやつはいないみたいだな」
三人を呼びにいこうとしたとき、誰かが上から洞窟に降りてきた。
竜のような形の兜に鎧を身に着けてるのが分かった。
その姿をみて、俺は無意識に刀を抜いていた。間違いない、俺の村を襲ったやつと同じ格好だ。
相手の首めがけて斬りかかる。手加減なしの全力の一刀。
だが、かわされた。顔を殴られ地面を転がる。
「速いな。だが私には敵わない」
声からすると男のようだ。立ち上がり刀を向ける。
「お前が、俺の村を襲ったやつか?」
男はこちらのことなど気にせずに、倒れている教徒に何か飲ませている。
助けに来たのだろうか?
「覚えていない。襲った村のことなどすぐに忘れる」
返答から察するに恐らくこいつが村を襲っている部隊なのだろう。
今度は首ではなく男の心臓を狙って突きをくりだした。
だが手ごたえはない。なんと男は刀を掴んで止めていた。
「この速さ・・・人間ではありえない。なるほど、お前が彼女の今の守護者か」
刀ごと体を引き寄せられ、腹に蹴りを食らい壁まで吹き飛ばされる。
すぐさま立ち上がるが、男に頭を掴まれ地面にたたきつけられる。
振り払うことができない、なんて強さだ。
「弱いな。この程度では彼女を守ることなどできまい」
何度も地面にたたきつけられ、蹴り飛ばされる。
全身が痛い、胃から血がこみあげてきて吐き出す。
何とか立ち上がろうとするが、男に腹を踏みつけられる。
「こんなのをそばに置くとは、彼女は何を考えているのか」
彼女?いったい何のことだ。もしかするとこいつはフィリアを知っているのか?
「お前は・・・誰だ」
抵抗するが、男の足を退かすことができない。情けなく地面に張り付けられたままだ。
「私はダルクス、お前の先輩だ」
踏みつける足にさらに力を込められる。
地面にヒビが入るほどの力で踏みつけられて、骨がミシミシと音を立てているのがわかった。
「お前のようなやつが後輩とは。やはり人間はだめだな、100年程度でここまで弱くなってしまうとは」
俺が後輩?何を言っているんだこいつは。
その時、ダルクスに何かを飲まされていた教徒が起き上がるのが視界に入った。
何やら様子がおかしい、急に叫びだし顔を抑え暴れまわっている。
「私が直接手を下すまでもない」
そういうと、ダルクスは飛び上がり天井の割れ目から外へ出ていく。
なんとか立ち上がると、先ほど暴れていた教徒がこちらを見ているのがわかった。
だが、それはもう人間ではなかった。
人の大きさの竜だった。本物との違いと言えば翼がないぐらいか。
「お前たち冒険者には感謝しているよ。各地の失敗作を私たちの代わりに処分してくれたのだから」
ダルクスが上から叫んでいるのが聞こえたが。それどころではない。
痛む体を抑え、必死に爪をよける。
だがダルクスに散々痛めつけられたせいで、思うように体が動かない。
肩を噛まれてしまい激痛が走る。
意識が遠くなってきた。血を失いすぎたのだろうか。
死を覚悟したその瞬間、目の前から竜が消え去った。
「全くいつまでも来ないから見に来てみればこれだ。君は僕がいないと駄目なようだね」
そこにはフィリアの姿があった、どうやら助けに来てくれたようだ。
安心したからか、急に体の力が抜けてしまい体を支えることすらできなかった。
「大丈夫か君は?この程度の相手にやられる君じゃないだろ。何があったんだい?」
フィリアはダルクスに気づいていないようだ。
彼がいる方を指で示そうとしたが、すでに彼は消えていた。
「まぁいいさ、話は帰ってからにしようじゃないか。とりあえず、死なないことだけ頑張ってくれたまえ」
彼女に抱えられると、そのまま意識を失ってしまった。
ショウが洞窟に入ってすぐの小話
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「なぁ、今の動き見えたか?」
「全く見えなかったす」
「消えたと思ったら入り口に立っていました」
三人の意見は一致したようだ。
「ドラゴン級は化物だな」
「化物っすね」
「化物ですね」
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