第34話 無敵の鎧
「なるほどね。それで二人が一緒だったのか。守護者を連れてるのもそれが理由かい?」
今までの経緯をグランツに話す。グランツは二人の話を聞いても驚いていない様だった。
あまり危機感も抱いていないようだ。
「彼は死にかけだったところを助けたのさ、守護者にするしか方法がなかったから仕方なくね」
「ワタクシのほうは、何となくですわ!」
フィリアはともかくウンディの答えはもう少しましな言い方はできなかったのだろうか。
二人の答えを聞き俺に興味を持ったのか、グランツがこちらを見ている。
「少年も色々あったんだな、この二人の相手は大変だろう?」
激しく同意したかったが二人の視線が俺に集中していたため、話題を変えて逃げることにした。
もし同意してしまっていたら後がどうなるか怖いかった。
「グランツさんはどうします?」
急にこんなことを言われても困るだろう。
彼はしばらく考えていたがどうやら結論が出たようだ。
「いや、私はどこかで身を潜めようと思う。私を捜さなければいけない分、奴らの人手を少しは君たちから遠ざけることが出来るだろうからね」
それはありがたいが大丈夫なのだろうか。
今回だって俺たちがこなければどこかへ連れ去られていただろう。
「オジサマなら起きていれば大丈夫でしょうけど・・・不安ですわね」
「今日みたいに寝たまま連れ去られる可能性が高いから、それは却下だ」
二人からダメ出しを食らってしまったようだ。
確かにあの体の堅さであれば何かあっても平気だろうが、連れ去られてしまってはどうなるか分からない。
「今度こそアリアに任せるしかないだろう。グランツならウンディみたいにわがままを言うこともないだろうからね」
わがままと言われたウンディがむくれていたがフィリアは気にしていないようだ。
「誰だか知らないがフィリアちゃんが任せると言うことは信用できるんだろう。じゃあ私はおとなしくその人の世話になろうかね」
あっさりと決めてしまった。
フィリアのことを相当信頼しているようだ。
次の日の朝、賢者の石が無くなり、死体が発見されたことでちょっとした騒ぎになっている町を4人で後にする。
ギルドに連絡を入れたのであとは何とかしてくれるだろう。
「しかしまぁ二人が守護者にするとはね、なかなか興味深い少年だな」
帰りの馬車の中で、グランツは荷台に乗らず俺の隣に座っていた。
二人の守護者になった俺に興味がわいたらしい。
「まぁ事情があったからね。ウンディの方は彼女の急な思いつきだったけど」
特段変化はないが、守護者の力は強化されているとウンディは言っていた。
明日の朝彼女に聞いてみよう。
「ウンディらしい理由だな。だが私たちが守護者を作るのはよっぽど必要に迫られたときか、気に入ったときだけだ。その点に関して言うと、君はウンディにかなり気に入られたようだね」
そうなんだろうか・・・。彼女の態度からは全然分からない。
強いて言えば名前で読んでくれるようになったくらいだろうか。
その日の夜俺が一人で見張りをしていると、グランツが起きてきた。
「隣いいか?君と二人で話をしたくてな」
二人で月明かりの下、色々な話をした。
俺の村が襲われてフィリアに命を救われたこと。
仇を討つために至竜教を追っていたらこんな事態になったこと。
ダルクスと言う男に負けて死にかけたこと。
奴らの狙いがわかり、4竜に警告しにまわっていること。
「そういえば、ウンディがオジサマって呼んでいるのには理由があるんですか?」
俺には4竜の年齢など見た目からは分からない。
年上のように見えるウンディが年下なのだ。竜の姿のときなどなおさら見分けがつかなかった。
「私が彼女たちより50年ほど年上で、4竜の中では最年長だからだろうね。」
なるほど。しかし50年ほどか、彼らは本当に長生きのようだ。
「ところで君の話を聞いて思ったんだが、どうやら君は私たちのせいで巻き込まれてしまったようなものだな。すまない」
なぜ彼が謝る必要があるのだろう。悪いのは至竜教の奴らだ。
「あなたのせいじゃない。それに正直俺は今のこの状況が結構好きなんだ。そりゃ色々大変なこともあるけど、楽しいこともある。ドラゴン級の冒険者にもなれたしね」
それが俺の本心だ。
俺の返答を聞いたグランツは驚いたようだ。
「君は強いんだな」
笑顔で肩を組まれた。今までの竜の中では彼が1番まともに思えた。
「よし、話の途中で悪いがどうやら至竜教とやらのおでましだ。男二人で片づけようか」
グランツが立ち上がり竜の姿になる。
「何で分かったんですか?」
俺にはまったく何も感じない。
彼だけに判る何かがあるんだろうか?
「私は土の竜だからね。地面の揺れで色々と分かるんだ」
なるほどそういうことか。
彼の後についていくと至竜教のやつらが10人ほど近づいてきていた。
奴らも俺たちに気づいたのか武器を手にこちらに近づいてくる。
「まずは私が飛び出そう。やつらの攻撃はすべて引き受けるから攻撃は君に任せたよ」
そういうと、正面から奴らに向かっていくグランツ。
無防備な彼に向かって奴らが斬りかかるのが見えたが、彼の鱗はそれらの攻撃をすべてはじいていく。
彼を斬りつけた剣は、欠けたり折れたりしていた。矢や魔法も同様に彼の鱗には傷一つ付けれないようだ。
フィリアたちが大丈夫と言ってたのは、こういうことだったのか。
グランツが攻撃を受けてくれる隙に、俺が奴らを倒していきすぐに片付け終わった。
「さすが守護者だね、並の人間では相手にならないだろう」
人の姿に戻ったグランツが俺の背中をバシバシ叩いている。
あまりほめられたことは無かったのでうれしかった。
「グランツさんの鱗もすごいですね。俺もあなたみたいな体だったらよかったんですけど」
彼の鱗は確かにすごかった。
俺の体も頑丈ではあるが、魔法や剣の直撃を食らえば少しぐらい傷はつく。
彼の頑丈さはほかの二人よりも飛びぬけてすごいようだ。
「私のような堅さは手に入らないだろうけど、力をあげることはできるがどうする?」
突然の申し出に俺は驚いて固まってしまった。
それは願っても無いことだが良いのだろうか?
「でも良いんですか?それってつまり守護者にするって事ですよね?」
彼は言っていた、よっぽと必要なときか気に入ったときしか守護者にしないと。
「私はかまわないよ。その代わり、私の代わりに二人を守ってほしい。それに私は君を気に入っているからね。ウンディが守護者にしたいというのも納得だ」
なんだか過大な評価をされているような気がするが良いのだろうか・・・。
しかし、力が必要なのは事実だ。ダルクスの時のような失敗はもう二度とごめんだ。
「お願いします」
悩んだが、守護者にしてもらうことにした。
彼は指を噛むと、こちらに差し出す。
「気持ち悪いかもしれないが、飲んでくれ。それで君は私の守護者だ」
ウンディのときのような失敗はしないように、自分の手で血を受け止めてから飲む。
すぐに体を激痛が襲った。この痛みはどうにもならないようだ。
「あいつらもさすがに連続で襲ってくる余裕は無いだろう。私が変わりに見張っておくから君はがんばって耐えてくれ」
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