第14話 依頼の内容は
途中での休憩は、許してもらえなかったので、涙を流しながら走った。
そんな様子を見ながら、フィリアは楽しそうにけらけらと笑うのであった。
彼女の言う通り、町から3時間以上走り、目的の村までたどり着いた。
村に着くとフィリアはカゴから降り、近くで馬の世話をしていた村人に話しかけた。
どうやら依頼主の場所を聞いているようだ。
お礼をいうと、こちらに戻ってくる。
「依頼主の家は、どうやらすこし村はずれの森の中にあるようだ。とりあえず話を聞きに行こうか」
そういうと、フィリアはまたかごに乗り込んできた。運べということだろう。
フィリアの指示に従って、森の中を進む。
「なぁそろそろ依頼の内容を教えてくれないか?俺は何をやらされるんだ?」
どうせとんでもないことなんだろうが、それでも心の準備ぐらいはしておきたい。
「そうだね、簡単に言うと、素材集めさ。アイテム屋が素材を欲しがっていて、それを代わりにとって来る、簡単だろう?」
依頼書を見ながらフィリアがこたえた。
「なんだ、それなら簡単そうだな。でも、俺たちにしか頼めない依頼って言ってたけど、何か事情でもあるのか?」
アリアが言っていたことを思い出す。あなたたちにしか頼めない、とはどういうことだろう。
「それはまぁ、冒険者が2度も帰ってきてないからだろうね。しかも2回目はベヒモス級二人ときたもんだ」
そんなに厳しい相手なのだろうか。
嫌な予感がするが引き受けた以上やるしかない。何より、初めての依頼は投げ出したくなかった。
しばらく歩くと、一軒の小さな小屋が立っていた。煙突から煙が出ているところを見ると、中に誰かいるのだろう。
かごから降りたフィリアが、ドアをたたく。
中から返事をして、眼鏡をかけ、白衣を着た若い女が出てきた。
地面につきそうなほど長い黒髪はぼさぼさで、目も半分以上隠れてしまっていた。
「あなたたちが依頼を受けてくれた冒険者さん・・・の使いの人かな?」
彼女は自分たちを使いのものだと思っているようだ。
ドラゴン級の依頼を出したのに、少年と少女が訪ねてきたのだ。
そう思うのも無理はない。
「僕たちがその冒険者さ、内容を詳しく聞かせてもらおうか」
フィリアは、見た目で判断されて少し怒っているようだ。
「そうだったのね、勘違いしてごめんなさい。まさかあなた達みたいな、若い人が来るとは思ってなかったから」
そういうと、彼女は俺たちを中へ招き入れた。
家の中は、両脇に天井の高さまで棚があり、所狭しと瓶が並んでいる。
瓶の中には薬草から何かの魔物のしっぽや目玉、内臓らしきものまで見えた。
家の真ん中に置かれた机には、作りかけだろうか、石臼と薬草が置いてあった。
奥のかまどでは、大きなツボでぐつぐつと、何かが煮られていた。
彼女は、中央の机の下から二人の椅子を用意すると、自分も椅子を出して座った。
「私が依頼を出したアルクよ。御覧の通り、アイテム屋をしているわ」
「僕はフィリア、この少年は僕の守護者のショウだ、二人ともドラゴン級の冒険者さ」
フィリアに紹介され軽く会釈をする。フィリアが等級証を出していたので、自分も一緒に出す。
アルクは二人の等級証を確認すると、最初は驚いていたようだ。
やはり言葉だけでは信じられなかったのだろう。
等級証をしまう。これで依頼内容を話してもらえるだろう。
「早速だけど、依頼内容を詳しく教えてもらえないだろうか?」
フィリアが訪ねる横で、俺はやっと依頼内容を知ることができた。
「依頼内容は書いてある通り、素材の回収よ。変種のクリスタルゴーレム、その核となる宝玉を持ってきてほしいの」
内容はこうだった。
この村の近くに、ゴーレムが大量に住んでいる洞窟があるらしく、別の依頼で向かった冒険者が、その最深部で変異したクリスタルゴーレムを目撃したらしい。
そのゴーレムの調査のために核が欲しくて、依頼を出したようだ。
ゴーレムはゴブリン級の冒険者3人で倒せるほど弱い魔物なので、以前他の冒険者が引き受けたが、誰一人として生きて帰ってこなかった。
救助のために向かった、ベヒモス級2人の冒険者たちも帰ってこなかったため、ギルドの判断によりドラゴン級の依頼になってしまったらしい。
「ゴーレムと言えば、そんなに強くない魔物だろ?」
フィリアに尋ねる。
俺の知識では、上位種のクリスタルゴーレムでもそこまで強くないはずだ。
「通常であればね。その変種の個体の特徴はなにかないかい?」
フィリアの経験の中でも、ゴーレムがそんなに強い事例は聞いたことがないようだ。
「目撃した冒険者によると、通常の個体に比べて2倍以上の大きさで、色も透明じゃなく真っ赤だったそうよ」
特徴もわかったし、さっそく素材の回収に向かうのだろうか。
フィリアが立ち上がる。
「ではその宝玉の回収に向かおうか。内容を聞く間、十分休んだだろう?」
こちらを見てにやりと笑うフィリア。
いくら力があるとはいえ、疲れるものは疲れるんだけどな。
「わかったよ、行くしかないんだろ。さっさと終わらせて、今日はこの村に泊まろうぜ」
もう日没まで1時間はないだろう。さっさと回収してお風呂にでも入りたい。
「君も僕のことがわかってきたようでうれしいよ、ではいくぞ」
ドアを開け外へ出ていくフィリア。俺もそのあとに続いた。
「本当に大丈夫かしら?」
俺達が出ていったあと、アルクが少しだけ不安を口にするのが聞こえた。
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