第22話 初めての武器

至竜教。

俺の村を襲い、家族や友人を殺した奴ら。


「今回の依頼はさらに特別でね。本来なら僕たちのギルドの管轄じゃないんだ。だけど、依頼を受けたドラゴン級の冒険者が帰ってこなかったんだ。もうすでに4人も行方不明になっている。そこで、アリアが僕たちを推薦してくれて、回ってきたという事さ」


フィリアが、説明を続ける。


「詳しい場所はどこなんだ?」


怒りを抑え、静かに尋ねる。

正直今すぐにでも飛び出したい気持ちだった。


「場所は、明日教えるよ。君の武器の受け取りもあるんだろう。わかっていると思うけど、僕に黙って、勝手に行動するんじゃないぞ」


フィリアは依頼書をしまうと、紅茶を飲み始める。

もうこれ以上教えてくれる気はないようだ。

食堂を出て宿へ向かう。

明日に向けて体調を整えるべく、その日はさっさと寝てしまった。


次の日の朝、俺とフィリアはボルグの店に来ていた。


「おう、早かったな。頼まれてたもん、できてるぜ」


二人を出迎えると、奥から一本の剣を持ってきた。

細身の片刃で峰の方が少しだけ反っている、あまり見ない妙な形をしていた。


「こいつは当方の島国に伝わる刀ってよばれてる武器だ。もってみな」


刀と呼ばれた剣を受け取る。

大きさに対して、全く重さを感じない。


「すごいな、まるで羽でも持ってるみたいだ」


光を受けて、輝く波紋が美しい。

その様子を見たボルグが満足げに腕を組んでいた。


「普通の剣は、刃の鋭さと剣自体の重さをあわせて斬るんだが、こいつは軽すぎてそうはいかねぇ。こいつの堅さと軽さを活かすには、刀が一番あってたのさ。小さい方は、投げナイフにしてみたぞ。10本しかねぇから無くすなよ、ベルトはおまけだ」


そういうと、奥からカゴを持ってくるボルグ。

早速着けてみる、取り出しもスムーズで、これならば戦闘中でも問題ないだろう。


「ありがとう、ボルグ。最高以上の仕上がりだよ」


刀をさやに収め、背負う。試しに刀を抜いてみたが、問題なく抜くことができた。


盛り上がる俺たちを、冷めた目で見るフィリア。


「男というのは、馬鹿な生き物だな。それで、お代はいくらだい?どうせ君は、お金を持ってないだろう」


そういえばそうだった。報酬をもらったとはいえ、借金に全て消えてしまっているのだ。


「オマケして金貨10枚だな。その角、加工すんの大変だったんだぜ」


フィリアが代金を払う。また借金が増えてしまった。


店を後にした俺達は、目的の遺跡を目指す。

いつものように馬車を引きながら、後ろを見ると、やけに荷物が多い。


「目的の遺跡は遠いのか?」


フィリアが、荷台で寝たまま答える。


「そうだね、君の足で2日はかかるかな」


本来は管轄外だからそれだけかかってしまうのは仕方ないのだろう。

急がなければ逃げられてしまうかもしれない。

はやる気持ちを抑えつつ、全力で急ぐのだった。


********************************


ショウたちが依頼を受ける数日前のことだ。

ハジの町から遠く、深い森の中にその遺跡はあった。

遺跡の前で、二つの人影が戦っている。

一方は全身に銀色の綺麗な鎧を身にまとい、レイピアを持っていた。

もう一方の影は、傷だらけの鎧を着けており、振るう大剣もおなじように傷だらけであった。顔も同じように傷跡だらけで、獣のような髪と髭をしている初老の大男だ。


レイピアを持った剣士が、とてつもない速さで突きを繰り出し、男を追いつめる。

男の方は、防ぐので精一杯なのか反撃してこない。


「同業がやられたからどんな奴かと思えば、ただの見かけだおしだったか。この程度の奴にやられるとはな!」


レイピアの剣士が叫ぶ。どうやら依頼を受けた冒険者のようだ。


「この程度、ね。それはこっちの台詞だ。冒険者ってのは雑魚しかいねぇのかい?」


大男は攻撃を防ぎながら、余裕たっぷりに笑って見せた。


「ドラゴン級冒険者の、この私を雑魚と呼ぶか!ならばこれを防いで見せろ!」


突きの激しさがさらに増す。あまりの速さに、残像が見えた。

男はそのすべてを完璧に防いでいる。


「もういいよ、お前さんの相手は飽きた。」


突如、剣戟が止む。

レイピアの剣士の腕が、肩から切り落とされていた。

悲痛な叫び声が、森へ響く。

だがそれも長くは続かなかった。


「これでドラゴン級ね。まぁ、お前さんは、他の奴らよりはましだったよ」


今度は首を切り落とされ、力なく血溜まりに倒れ込む。


「これで4人目だったか?全員ドラゴン級だとか言ってたが、冒険者の質も落ちたもんだな。俺の時代のドラゴン級は、こんなもんじゃなかったぜ」


死体を見下ろし、剣をしまう。


「お見事です、ガルム様」


竜のような仮面を付け、赤いローブをまとった男たちが、遺跡の中から出てくる。


「おう、これの処理、頼んだぞ。俺はもう寝るわ」


ガルムと呼ばれた大男は、男たちに処理を命じると、遺跡の中へ戻っていった。

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