ジャッカルとトラ

 むかしむかし、5頭の子どもをかかえたジャッカルのふうふがいました。


 ジャッカルの親子は、すみかが古くて、てぜまになったので、ひっこすことにしました。






 ジャッカルのお父さんは、山の中にトラのすアナを見つけました。


 中を調べると、食べかけのシカの肉がのこっていました。




(なんだか、いそいでいたようだな)




 そして、ジャッカルのお父さんは、親子でこのアナをすみかにすることに決めました。


 子どもたちは、のこっていたトラのにおいに、びくびくしてこわがりましたが、お父さんジャッカルは言いました。




「ふん、だいじょうぶさ。お父さんはトラのあつかいを知っているからね。だから、安心するがいいよ、子どもたち」




 そして、アナの中にのこっていたシカの肉を親子で食べました。






 よる、お父さんジャッカルは、すアナのてっぺんにすわって、お母さんジャッカルに言いました。




「おまえ、わたしがあいずしたら、すぐに子どもたちをおこして、わんわんなかせなさい。そして、わたしがどうしたのか聞くから、そのとき『子どもたちが、おなかをへらしてねむれない』と言うんだよ」




「うん、わかったわ。あなた」




 そして、トラが用事から帰ってきたとき、お父さんジャッカルがあいずをすると、子どもたちがわんわんなきました。




「どうしたんだ?」




「あなた、子どもたちが、おなかをへらしてねむれないんです」




「なあに、トラがワナにかかれば、みんなでごちそうを食べられる。もうちょっとガマンしろ」




 それを聞いたトラははあっとして、おどろき、たいへんなやつにすアナをのっとられた、と思いました。


 そして、一つ山をこえて逃げていきました。






 逃げたさきの山のなかで、トラはヒヒにであいました。




「フッ、トラさんどうしたの。そんなにあわてふためいて」




「どうもこうもない。へんなやつらに、すアナをとられてしまったんだ」




 わけを話すと、ヒヒは大わらいして言いました。




「フッ、トラさん、それはあれだな。ジャッカルだよ。おまえさんが食べられるんじゃない。おまえさんがジャッカルを食べるのだ」




「え? それってどういうこと?」




「フッ、ワナにはめられたんだよ、おまえさん」




 トラは、ヒヒの言うことに、いちいちうなずき、やくそくをして言いました。




「ぜったいの、ぜったい。ほんとうのほんとうに、こわくないね? だいじょうぶだね?」




「フッ、トラさん。そんなにこわがらなくっていい。そら、わたしのシッポをシッポにからめて、つかまえておきなさい。ぜったいのぜったいだ」




 そうして、トラはヒヒといっしょに、すアナをとりかえしにもどりました。






 トラのすアナのてっぺんにすわっていた、ジャッカルのお父さんは、トラが、かしこいヒヒをつれているのに気がつくと、大声で言いました。




「そうだ! いいぞ、ヒヒのやつ!」




 そして、子どもたちをおこして、たからかに言いました。




「ヒヒのやつが、ごちそうをつれてきたぞ。しかし、わたしたちはハラペコだ。もう二、三頭はつれてくると思ったんだがなあ。子どもたち、こんどこそトラを食べられるよ」




 これを聞いたトラは、てっきりヒヒにだまされたと思いこみ、いちもくさんににげだしました。




「ひゃあ~~。ジャッカルに食べられる~~」




「まてまて、トラさん、にげなくっていいんだってば。いててててー」




 にげてにげて、シッポがヒヒとからまっているのも、わすれて、トラは谷むこうまでにげていき、ヒヒのシッポはそのときちぎれてしまったということです。

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