トリの王さま
あるところに、小鳥がおりました。
ある日、あたためていたタマゴがかえりました。
すると、フクロウがやってきて言いました。
「ホッホウ! おう、おめえさんのヒナをいただくぜ」
それを聞いたかしこい小鳥は、フクロウに言いました。
「あなたはこのあたりで一番の、トリの王さま。あなたさまがあたくしの子どもを食べたがるなら、そうなさってね。けれど、そのまえに、そのキタナイ口をあらってきてください」
「ホッホウ! そういや、そうだな!」
と、フクロウは言いました。
そして、さっそく井戸へ水をもらいに行きました。
「井戸の王さま、井戸の王さま。こちとらトリの王さまでい。ちょっくら、水をくんねえか。このキタナイ口をあらいきよめて、小鳥のヒナをちょろまかすのよ」
それを聞いた井戸は、フクロウに言いました。
「あなたはここいらじゃ、カオのきく王さま。水が欲しいのでしたら、いっこうにかまいませんが、ツボがなくてはなりません」
「おう、そうかい」
とフクロウはとんでいきました。
そして、ツボつくりの名人に、言いました。
「ツボつくりの王さま、ツボつくりの王さま。こちとらトリの王さまでえ。ちょっくらツボをつくってくんねえかよ。水をくんで、口をあらって、ヒナを食うのよ」
「今、ねんどがねえんだ。ねんどさえありゃあなあ……」
「おう、そうかい」
とフクロウは言いました。
そして、ねんどのところへとんでいきました。
「ねんどの王さま、ねんどの王さま。こちとらトリの王さまでえ。ちょっくらねんどをわけてくんねえか。ツボをつくって、水くんでよ、口をすすいで、ヒナを食うのよ」
「べらぼうめ! いくらでももっていきやがれ! すまんなあ。シャベルがねえようだ」
「シャベル? シャベルがないとどうなる」
「どうもこうもねえや。シャベルがないことには、はじまらねえ」
「おう、そうかい」
そこで、フクロウは、かじやのところへとんでいって言いました。
「かじやの王さま、かじやの王さま。こちとらトリの王さまでえ。ちょっくらシャベルをつくってくんねえか。ねんどをほじって、ツボをつくって、水をくんでから、口をすすいで、ヒナドリを食らうのよ」
かしこいかじやはこう言いました。
「おう! で? 黒いシャベルと赤いシャベル、どっちがいりようでえ?」
「赤いシャベルがいいねえ」
「そうかい」
かじやは、フイゴでシャベルをカアッともやし、赤くなったシャベルをフクロウの羽にのせました。
すると、ジューッと音を立てて、フクロウは死んでしまいました。
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