ヒョウとカモシカ

 あるとき、ヒョウの子とカモシカの子がなかよくなりました。


 二頭はいっしょにあそんでから、家に帰りました。


 ところがお母さんたちはこう言うのです。






「まあ、おまえ。ヒョウのにおいがするよ」




「へっ? うん、だってなかよしだもん。いっしょにあそんだんだよ」




「まあ! ヒョウはカモシカを食べるのよ。おまえのおじいさんも、お父さんも、ヒョウに食い殺されてしまったの。もう、いっしょにあそんではいけません。さそわれても、ことわるのよ」




「はあい」






「へえ、おまえ、カモシカのにおいがするね」




「フッ、いっしょにあそんだからね」




「へえ、おまえ知らないの。カモシカはあそぶもんじゃなくて、食べるものだよ。あしたはカモシカを殺してもってきなさい。それがほんもののヒョウってものだよ」




「うん、わかった」






 次の日、カモシカの子はヒョウがあそびにさそっても、でて行きませんでした。




「どうしてことわるのさ」




「だって、きみとはあそぶんじゃないって、お母さんが言ってたよ。そういうこと、きみもお母さんに聞いただろう。だから、もう、きみとはあそばない」




「フッ、そういうことか」






 帰ってきたヒョウの子が、カモシカの子を持ってこなかったのを見て、ヒョウのお母さんは言いました。




「おまえ、どうしてカモシカの子を殺して持ってこなかったの。そんなの、ほんもののヒョウではないのよ」




「お母さん、そうじゃないんだ」




 ヒョウの子は言いました。




「あの子は、ボクがほんもののヒョウだって、わかったから、だからボクとはもうあそばないんだって」

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