たいそうなおもてなし




 むかしむかし。


 とある南国の一族に、たいへんけちんぼうな家がありました。




 あるとき、とても清らかな聖人が、巡礼の途中でその家にたちよりました。


 巡礼者はもてなされるのが、しきたりです。


 南国のりょうりといえば、かぐわしい油をたっぷりとそそいで、食欲をそそります。


 バナナの葉にもられた、ごはんが運ばれてきましたので、聖者は油がそそがれるのを、今か今かと待っていました。


 しかし、そこへ現れた若いよめは、たいそう小さな器を持ってきて、はらりとすばやく油をかけました。


 聖者には、油をかけたのか、かけなかったのか、わかりませんでした。






 一夜が明け、聖者は家のものに、そっきょうに詩をよんで言いました。




 なんと小さな器であること


 そのひらめきは 北斗のとなり星をみるがごとく


 若よめのはやわざは いなずまのごとく


 かかるものとは 行者にしか見ぬけぬものよ




「いやはや、たいそうなもてなしじゃった」




 聖者は言って、その家をあとにしました。

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