サルとカメ




 あるところに、大きなみずうみがありました。


 そのみずうみは、しゅういをジャングルがかこんでおり、水の中にカメの家族がすんでいました。






 あるとき、カメは岸辺にあがり、ジャングルを見てさんぽをしていました。


 おなかがすいて、のどもかわいたので、ヤシの実をとろうとしましたが、できませんでした。


 それというのも、ヤシの木はまっすぐで、ツルツルしていたからです。


 ところで、このヤシの木のエダにはサルがいて、りっぱなこうらをもった、このカメがしっぱいするのを、きのどくに思って見ていました。




「カメさん、ぶきっちょだな。それ!」




 そうして、ヤシの実を二、三ことってなげてやりました。




「おお、うまい。うまいのう」




 カメはよろこんで、それらを食べました。


 サルとカメはなかよしになり、ジャングルの中を、いっしょにあそびまわりました。






 そんなある日、子ガメが父親カメをさがして、おかへあがってきました。




「パパ。ママがね、パパどうしたんだって、言ってるよ」




「ほう、そうかね。パパはあそぶのにいそがしいから、数日したら帰るよ。気にするなとママにいっといで」




 これを聞いた、母親カメはいかりました。




「家族をほうったらかして、あそぶのにいそがしいとは、まあゆるせない! 子ガメや、パパにこう言いなさい。ママが病気で死にそうですって、とっこうやくはサルの心ぞうしかありません、って」




 子ガメは、言われた通り、サルのすみかまでいって、その大きなどうくつの前で、父親ガメをよびました。




「なんだって!」




 父親ガメは、びっくりぎょうてん。




「おお、わたしが家族をほうっておいたばかりに、かわいそうに。すぐ帰るからね」




 そして、カメはサルに言いました。




「ずいぶんあまえて、ながいをしてしまった。これで帰るから、きみもこいよ。わがやにしょうたいするよ」




 サルは、よろこんで、カメといっしょにみずうみにいきました。


 しかし、カメの家が水の中だと知ると、サルはおじけづきました。


 カメは言いました。




「なに、水の中ならどこへなりと、およいでゆける。だいじょうぶだから、わたしのせなかにのっていきましょう」




 サルはえんりょなく、カメのこうらにまたがりました。




「水の中ははじめてかい」




 カメは、のんびりと話しかけます。


 サルはまだきんちょうしていましたから、少し、気持ちをときほぐしてあげなくてはいけません。




「水の中では妻がびょうきでな。サルの心ぞうしか、とっこうやくはないっていうんだ」




 それを聞いたサルは、だまされたと思って、こう言いました。




「ふうん。それじゃあ、サルの二、三匹はひつようだな。おれが岸辺でよべば、すぐにそれくらい集まるぜ」




「おお、そうかい?」




 おろかなカメは、サルをのせて岸辺に戻りました。


 岸にあがるやいなや、サルは一番高いヤシの木にのぼると、ありったけのあくたいをつきました。




「おまえはいい友達だったぜ。ジャングルの中をあんないしてやれば、よろこんで、おれの心ぞうをねらってきやがって、恩知らずめ。やくそくのサルは、自分でさがしな。あばよ」




 これを聞いたカメは、カンカンになっておこりました。


 どうしてもヤシの木にのぼれないと知ると、サルのどうくつに入ってまちぶせしました。


 そんなことは、とっくによそうずみのサルは、どうくつの中へむかってほえました。




「ほう! ほう! 大きなどうくつやーい!」




 そして、はんのうがないのを見てとると、わざとまわりに聞こえるように言いました。




「ん? いつもはこだまが、かえってくるんだがなあ。もしかして、これはよくないことがおこるのかな?」




 カメは、こだまのフリをすれば、サルが中へ入ってくるだろうと思い、ほえました。




「ほう! ほう! 大きなどうくつやーい!」




 これを聞いて、サルは大わらいして、べつのばしょでねむりました。

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