チートなウサギ
むかしむかしのこと。
ウサギが人間を殺し、食べていた時代がありました。
人間はこのウサギにこまって、天の神様のところへそうだんに行きました。
ところが……。
「うん? 人間ごときが、神様のいこうをあおごうだなんて、なまいきすぎるわい」
と、ウサギの王さまが言って、天の神様のところへ行きました。
「さて、どうした? 人間よ」
「ウサギがドクのキバで、人間を殺して食べるのです。やめさせてください」
「ふむ。して、ウサギよ。どうしたのかい?」
「人間がウサギを食べるのです」
「まったく別のことを言っているな、おまえたち」
しかたがないので、神様はこういいました。
「ウサギ、おまえはこれから一本のナツメやしを見張りなさい。人間よ、おまえたちも一本の木を見張りなさい。どちらも、この一年の間に、落ちた葉をみんなわたしにとどけなさい。そうしたら、願いをかなえてあげる」
人間もウサギも、願いがかなうと聞いて、必死で見張りました。
けれども、一枚の葉も落ちてこない。
もうすぐ一年が経ってしまいます。
そのとき、ひらり、と人間の見張る木から、一枚の葉が落ちました。
人間は、いそいで、これを大事に神様にとどけました。
ウサギは、これはまずいと思い、ナツメやしの木の葉の根元をかみました。
そして落ちてきた葉を、神様にとどけました。
「うーむ」
神様は少しかなしそうに言いました。
「ウサギ、これを見なさい。この二枚の葉を見て、どう思う?」
ウサギの持ってきた葉には、かんだあとがありました。
ウサギは、はじいるばかりでした。
神様はきれいなワタで、ウサギの足をきよめると、こう言いました。
「これでおまえは、チート級の足の速さを手に入れた。このスピードで身を守りましょうね。そして、人間よ、おまえたちはウサギをつかまえたなら、なにもかもを食べてよいことにします」
それで、人間はウサギを食べるときは、なにもかもをムダにせず、食べるのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます