チートなウサギ

 むかしむかしのこと。


 ウサギが人間を殺し、食べていた時代がありました。


 人間はこのウサギにこまって、天の神様のところへそうだんに行きました。


 ところが……。




「うん? 人間ごときが、神様のいこうをあおごうだなんて、なまいきすぎるわい」




 と、ウサギの王さまが言って、天の神様のところへ行きました。






「さて、どうした? 人間よ」




「ウサギがドクのキバで、人間を殺して食べるのです。やめさせてください」




「ふむ。して、ウサギよ。どうしたのかい?」




「人間がウサギを食べるのです」




「まったく別のことを言っているな、おまえたち」




 しかたがないので、神様はこういいました。




「ウサギ、おまえはこれから一本のナツメやしを見張りなさい。人間よ、おまえたちも一本の木を見張りなさい。どちらも、この一年の間に、落ちた葉をみんなわたしにとどけなさい。そうしたら、願いをかなえてあげる」






 人間もウサギも、願いがかなうと聞いて、必死で見張りました。


 けれども、一枚の葉も落ちてこない。


 もうすぐ一年が経ってしまいます。


 そのとき、ひらり、と人間の見張る木から、一枚の葉が落ちました。


 人間は、いそいで、これを大事に神様にとどけました。


 ウサギは、これはまずいと思い、ナツメやしの木の葉の根元をかみました。


 そして落ちてきた葉を、神様にとどけました。




「うーむ」




 神様は少しかなしそうに言いました。




「ウサギ、これを見なさい。この二枚の葉を見て、どう思う?」




 ウサギの持ってきた葉には、かんだあとがありました。


 ウサギは、はじいるばかりでした。






 神様はきれいなワタで、ウサギの足をきよめると、こう言いました。




「これでおまえは、チート級の足の速さを手に入れた。このスピードで身を守りましょうね。そして、人間よ、おまえたちはウサギをつかまえたなら、なにもかもを食べてよいことにします」




 それで、人間はウサギを食べるときは、なにもかもをムダにせず、食べるのです。

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