第12話 ノア
城外を出ると人々の活気に溢れ、忙しそうに行き交う。だがそこには笑顔があり皆嬉しそうに声を掛け合い働いていた。
それを見たタマ子は目を輝かせた。
「どうです?お城の中だけでは分からない事が沢山ありますでしょう。まず馬小屋に行きましょうか」
「うん!」
馬小屋でも皆が働いていた。馬に餌を与える者、馬の手入れをする者、水をくんでいる者、そのうちの1人がタマ子達に近ずいて来た。
年は50歳くらいの少し太った男性。タマ子を見るなり顔が輝いた。
「これはこれは神の申し子タマ子王女様でいらっしゃいますね!私は馬の世話係の長を務めておりますザイラと申します」
「今日はタマ子王女様の初めての城外です。少し見学はよろしいかな?」
「もちろんですとも!どうぞ中に」
そう言うとザイラは馬小屋の中に2人を誘導した。
「馬は全部で800等あまりおりまして、その世話をこうして皆で行っております」
3人で歩きながらザイラはそう言った。
タマ子は時折城内に入る馬車を見た事はあるが、こうして間近で見るのは初めての事だった。
と、1人の男の子に目がいき、立ち止まった。男の子は背がまだ低いため台に乗り馬の毛にブラシをかけていた。
アンドレアとザイラはそれに気付かず話しながら先へ進んでいる。
「あなたは幾つ?」
男の子はびっくりしてタマ子の方にやって来た。
「お前!こんな所に来んな!」
その声でアンドレア達は気付き慌ててタマ子の方に戻って来た。
「こらノア!こちらはタマ子王女様ですぞ!」
ザイラはノアの頭をコツンと叩きそう言った。
「いてっ…す、すいません」
「気にしないで。それより暴力はやめて」
「あ、これは失礼しました。つい……」
タマ子は前世暴力を受けていた。前世の記憶はもうないが、潜在意識がそうさせるのか、大層暴力を嫌った。
「ノアというの?」
「はい、10歳でまだまだ新米の馬の世話係です」
「10歳で働いて勉強はしないの?」
「タマ子王女様、仕事は皆10歳からしております。勉強は貴族のみでございます」
アンドレアが丁寧に説明した。
「ノア、私とお友達になって。わたしにはお友達がいないの」
「コホン!タマ子王女様、貴族と一般国民には隔たりがありまして…そのような事は……」
またノアの言葉を待たずしてアンドレアが言った。
「隔たり?そんなのは絶対におかしい!なんの為の見学なの?私は国王に言います。だからノアさえ良ければお友達になりたいの」
「俺は大丈夫ですよ」
「これこれノア!」
今度はザイラがノアを制した。
「また来るね!ノア!覚えておいてね」
それで馬小屋を離れたがタマ子王女に対して、アンドレアはいつまでも小言を言っていた。
だが友達が出来たことに有頂天になったいたタマ子王女の耳には届かなかった。
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