第2話 お母ちゃんにはかなわない

 タマ子はスクスク育ち、やがて3歳を迎えるまでとなっていた。


「お母ちゃん!今日はあたしの誕生日やねんで?知ってるんか?」


「知ってるからケーキこうて買って来たがな」


「ケーキだけか?!プレゼントとかご馳走無いんか?こんな粗末なおかず…あたしイヤやわ」


「あのな、よう聞きや。お母ちゃん達の老後はお姉ちゃんにみてもらうんや。だからな、お姉ちゃんにはお金かけるけど、アンタにはお金使わへん。分かったか!分かったら黙ってはよ食べ」


 母親の佐和子は、あろう事か3歳になったばかりのタマ子にそう言った。

 もちろんそれに反発する能力はまだ無い。意味も分からず黙って食べ出すタマ子。


 しかしその日からタマ子に異変が起きた。


「あたしは百貨店で拾われたんやー!」


 そう言ってはタマ子は、毎日家から逃げ出すようになった。タマ子なりの解釈だったのかも知れない。

 しかし誰も追いかけて来ないので、ちゃんと自分で帰って来る。当たり前だが3歳の行動範囲は狭かった。


「あたしは橋の下で拾われたんやー!」


 今日も大声で逃げようとするタマ子。


「百貨店違うかったんかいな…」


 佐和子は動じずにツッコミをいれる。

 母親にはかなわないと悟ったタマ子であった。

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