第9話 天界

 場所は天界。そう、タマ子が召されたのだ。

 ワカメちゃんカットのタマ子は、よいしょとばかりに立ち上がり辺りを見廻す。


「ここどこなん…?」


 その言葉に反応したかのように、白いドレスを着た女神様がタマ子の目の前に現れた。


「タマ子さん、今世は大変でしたね。私は子どもの神シルエルです」


「神様なん?あたしずっと神様おるって信じててん。だからな、おトイレとかお風呂場とか1人しかおらん場所でもちゃんとしててん。神様はどこでも見てはるやろ?だからな、賢こうしててん」


 女神様を見て興奮したのか、よく喋る。


「そうでしたか。それは良い行いをしていましたね。もちろん私は天からいつも見ておりましたよ」


「天?ここお空なん?ほんだらあたし死んだん?」


「そうです。タマ子さんは不慮の事故で亡くなりました。でもそれはタマ子さんの宿命でした」


 タマ子は分からないという表情で女神様を見つめた。


「難しい話でしたね。あなたはとても大変な試練を今世で全うされたのですよ。とても辛かったと思います」


「……うん」


「でも大丈夫です。もうその辛かった日々は終わりました。あなたは来世で素晴らしい生活を送れるのです」


「終わったん…か。死んだらおしまいなんやな……」


「何か未練がお有りですか?」


「未練?なにそれ」


「もう1度前の世界に戻りたいとか、誰かに会いたいとか」


「……うん。頑張って生きたから大きくなりたかっただけ」


「それなら大丈夫ですよ。来世では長生きが出来ますからね。来世の運命は家族から大切にされ、王女から女王様になるのです」


「女王様!あたしが?!」


「そうです。それでお話があります。今世頑張ったタマ子さんに、来世では希望を叶えましょう。タマ子さんの叶えて欲しい事…ん~たとえば愛する人と一緒にいたいだとか、美人に生まれたいとか…」


「名前はタマ子がいい。あたし気にいってんの」


「名前ですか……分かりました!後2つ叶えてあげますよ」


「そんなん言われてもわからんわ。1個でいいよ」


「綺麗なお顔はいりませんか?」


「ん~じゃあそれでええわ。あっ、美人より可愛い方がええな~。でも…」


「でも?」


「あたしは王女…んで大きくなったら女王様……」


「そうですよ。素晴らしいでしょ」


「生まれる前から決まってて、何が楽しいんかな~なんも楽しないわ」


 タマ子はつまらなそうに言って俯いてしまった。


「そうでしたか…ご褒美のつもりでしたが…。ただでもコレから向かう世界は少し厳しいのです。同じ地球のような星ですが、神が魔界組織に負け人間は片隅に追いやられました。今は魔法陣で守られていますが、この先はどうなるか…」


「なんや、ややこしいなぁ。ちっともご褒美じゃないやん」


「いえいえ!人間達は頑張って生きています。それに戦う準備もしています。そのリーダーとなるのがタマ子さんの女王様です。皆から慕われ守られる存在なのですよ」


「神様おらんねやろ…」


「新しい神がそのうち降臨し人間達に加勢するでしょう。安心ではないですか?」


「あたし、魔界と戦う勇者の方がええわ」


「そうなんですか…ではまずはその世界で暮してみてください。あなたが求める後1つの願いは私が預かっておきますからね。そこで見つかるかも知れません。但し運命は変えれません。産まれた時よりあなたは女王様になる定めですからね」


 タマ子は不服そうに頷いた。


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