第31話 ヴァンにて
夕闇が辺りを染める頃、農場の村ヴァンに到着した。村長と村民が連絡を受けコントラタック隊を待ちわびていた。
大人数に馬の数それにタマ子王女に歓喜する村人達の歓声が鳴り響く。
ハリーとタマ子、それにハリー隊は村長に挨拶をした。
「貴方様がハリー様!なんと若き勇者!それに愛くるしいタマ子王女様!お目にかかれ光栄でございます」
そう言って村長は深々と頭を下げた。
「私達コントラタック隊は王国をくまなく廻り、魔界へと向かいます。その準備の為に少しばかり食料を分けて頂きたいのです」
「もちろん!準備してございます!今日のうちに荷馬車に積みましょう!」
「こちらは農場で生計を立てているのですね。素晴らしい畑。どこまでも広がっているわ」
「左様でございます。周りは荒れ果てておりますが、この地は豊かな土壌に恵まれております。美味しい新鮮な野菜が沢山収穫出来るのですよ」
「素晴らしいですね」
タマ子は初めて見る優大な土地に感心した。
「コントラタック隊は野営のテントがありますが、タマ子王女様にはどこか部屋がありますか?」
「あら、私も野営で十分ですよ」
「いえいえ、ちゃんと部屋をご用意しておきました。時々遠方から来られる客人用にタマ子王女様セオ王子様それにハリー様とハリー隊にもくつろいで頂きたい」
「それはありがとうございます!助かります」
村長に案内された一行は宿に着いた。
「タマ子疲れただろう。ゆっくり休んで明日に備えてくれ」
「わかったわ。ハリーもね」
タマ子は侍女のカヤと部屋に入った。思いの外キレイな部屋だった。
そこにセオがやって来た。
「僕もコントラタック隊の戦士なのに部屋を用意して頂きました…いいのでしょうか。できれば仲間と野営をしたかったのに…」
「しょうがないわ、王子ですもの。でもこれからはそうは行かないわ。今のうちにゆっくりするといいわ」
「お姉様は凄いです…女性でありながらここまで来られて…」
「まだ始まったばかりよ。私は大丈夫です。こんなに素敵な農場に来られただけで嬉しいです」
「お姉様はやはり女王になる方ですね。僕も見習ってお姉様の助けになるように頑張ります」
「ありがとう…もう休みなさい。明日も早いわよ」
「わかりました」
セオが去ってから着替えの用意をしていたカヤが話し出した。
「こんな事…申し上げていいのかどうか……」
「何?どうしたの?」
「ハリー様はフローレンス様よりタマ子王女様がお好きなんだと思います……」
「カヤはそんな事がわかるのですね?わたしには分かりません。でもフローレンスの為に私はハリーを忘れる事にしたのです。だからその事はもう言わないで…」
「タマ子王女様……」
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