第4話 バツ

 大阪市内といっても、この時代まだまだ地道が多くあちこちに空き地が広がり雑草だらけ。

 逆を返せばタマ子の遊び場がどこまでも続いていた。


「ここに家を建てるんや。玄関がここで~」


 雑草を刈り取り枝を拾って図面を書く。そうするとタマ子の家が出来上がるのだ。台所にはママゴトセットを置き雑草達が野菜となる。

 独り言を言いながら遊びに夢中になってしまった。


 帰宅すると夕飯のいい匂いに、思わずお腹が鳴る。


「タマ子!5時過ぎてるやろ!夕飯抜きや!廊下で正座しとき」


 帰るなり母親佐和子の怒号。バツはいつも決まってご飯抜きの正座だった。


「お腹空いたわ…」


 正座をしながらボソッと洩らす。

 そこへ仕事を終えた父親や従業員が上がって来た。


「タマ子、またなんか悪さしたんか!」


 正座するタマ子は皆の笑い者となり、カシャカシャと夕飯を食べる皆の音が聞こえてくる。


「グゥ~~」

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